プロジェクト概要
国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学の時代」には、国家安全保障政策において、軍事的手段のみならず経済的手段も重要な政策ツールとなっています。我が国の経済活動に不可欠な基盤をどう確保したらよいのか。我が国の存在が国際社会にとって不可欠な分野をどう拡大すればよいのか。経済的なパワー・抑止力と国際的な秩序で、我が国の経済安全保障を確保するためには、日本のとるべき政策は何か。同盟国・同志国とどう協力すべきなのか。政府と企業はどう連携したらよいのか。
2021年10月に成立した岸田内閣は、「経済安全保障」を政権の正面に据え、経済安全保障担当大臣を設けるとともに、2013年に策定された国家安全保障戦略についても経済安全保障を織り込む形で改定する方針を表明しています。当時、「民間版国家安全保障戦略」として「静かな抑止力」の強化を提言したAPIは、今般の政府による国家安全保障戦略の見直しに合わせ、日本の経済安全保障戦略はどうあるべきかについて検討します。また、経済安全保障にとってきわめて重要な官民の協力を推進するために、国家としての「全体最適解」を探求するべく、政・官・民・学の集う経済安全保障政策コミュニティの構築を目指します。
API地経学ブリーフィング(経済安全保障特集)
APIでは、日本の経済安全保障戦略を検討するにあたり、各研究員の論考をAPI地経学ブリーフィングにて順次公開していきます。公開済みの論考については、以下をご参照ください。
2021.11.22
日本の「経済安全保障」絶対押さえておきたい論点 ― 国家安全保障戦略と目的は同じでも手段は異なる(鈴木一人 API上席研究員)
2021.11.29
日本の経済安全保障に多層的視点が欠かせない訳 ― 国家安全保障の中核としての国際戦略を推進せよ(細谷雄一 API常務理事・研究主幹)
2021.12.06
日本の経済安全保障「軍事領域」で押さえたい要点 ― 新興技術との繋がりに不可欠な保全・育成・連携 (神保謙 API MSFエグゼクティブ・ディレクター)
2021.12.13
日本のエネルギー安全保障に絶対欠かせない論点 ― 脱炭素と安定供給を軸に多様な選択肢が必要だ(柴田なるみ API研究員)
2021.12.20
日本人の健康を守り切る為に求めたい6つの提言 ― 健康危機領域の経済安全保障に必要なことは何か (相良祥之 API主任研究員)
2021.12.24
日本の主要100社が答えた「経済安全保障」の本音 ― アンケートで見えた政府に求められる2つの均衡 (富樫真理子 API松本佐俣フェロー)
2021.12.27
日本のサイバー防衛が心もとなさすぎる3つの訳 ― 経済安全保障の核となる領域の体制整備を急げ (村井純 APIシニアフェロー・API地経学研究所所長)
2022.01.10
日本の経済安全保障「金融」巡る重要な3つの観点 ― インフラ金融、通貨、金融制裁をめぐる攻防(大矢伸 API上席研究員)
2022.01.17
日本の経済安全保障「防衛産業」の議論が欠ける訳 ― 新興分野と一体で強い安全保障生産・技術基盤を(尾上定正 APIシニアフェロー)
経済安全保障日本企業100社アンケート
APIは、2021年11~12月にかけ、日本の経済安全保障を考えるうえで重要な位置を占め、またその影響を敏感に受けているとAPIが考える日本の企業100社(研究機関等を含む)に対し、経済安全保障に関する課題やリスク、さらには政府への期待や要望などのテーマを中心に、アンケート形式での調査を行いました。調査結果(2021年12月24日発表)は、こちらをご覧ください。
2022年3月、国際商事研究学会主催・国際取引法学会国際契約法制部会共催の会合にて、経済安全保障日本企業100社アンケートを題材とした講演を行いました。概要はこちらをご覧ください。
プロジェクトメンバー
API理事長
元朝日新聞社 主筆
東京大学教養学部卒。1968 年、朝日新聞社入社。米ハーバード大学ニーメンフェロー、朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長を経て2007 年から10 年12 月まで朝日新聞社主筆。2011年9月に日本再建イニシアティブ(現アジア・パシフィック・イニシアティブ)を設立。2016年ショレンスタイン・ジャーナリズム賞受賞。
API常務理事・研究主幹
慶應義塾大学法学部教授
ケンブリッジ大学ダウニング・カレッジ訪問研究員
慶應義塾大学法学部教授。専門は、国際政治学、国際政治史、イギリス外交史、日本の安全保障政策。
立教大学法学部卒業、英国バーミンガム大学大学院国際学研究科修了(MIS)、慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程および博士課程修了。博士(法学)。北海道大学法学部専任講師、敬愛大学国際学部専任講師、プリンストン大学客員研究員(フルブライト・フェロー)、パリ政治学院客員教授(ジャパン・チェア)などを経て現職。安倍晋三政権において、「安全保障と防衛力に関する懇談会」委員(2013年)、および「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」委員(2013年-14年)、国家安全保障局顧問会議顧問(2014年-16年)を歴任。自民党「歴史を学び、未来を考える本部」顧問(2015年-18)。
主要著作に、『戦後国際秩序とイギリス外交 ―戦後ヨーロッパの形成、1945~51年』(創文社、サントリー学芸賞、2001年)、『外交による平和 ―アンソニー・イーデンと二十世紀の国際政治』(有斐閣、櫻田会政治研究奨励賞、2005年)、『外交 ―多文明時代の対話と交渉』(有斐閣、2007年)、『倫理的な戦争 -トニー・ブレアの栄光と挫折』(慶應義塾大学出版会、読売・吉野作造賞、2009年)、『国際秩序 ―18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ』(中公新書、2012年)、『〔戦後史の解放Ⅰ〕歴史認識とは何か ―日露戦争からアジア太平洋戦争へ』(新潮選書、2015年)、『安保論争』(ちくま新書、2016年)、『迷走するイギリス』(慶應義塾大学出版会、2016年)、『〔戦後史の解放Ⅱ〕自主独立とは何か』(新潮選書、2018年)、『軍事と政治 日本の選択-歴史と世界の視座から』(編著、文春新書、2019年)など。
尾上 定正 (おうえ さだまさ)
APIシニアフェロー
第24代航空自衛隊補給本部長;空将(退役)
奈良県出身、1982年防衛大学校卒業(管理学専攻)。1997年米国ハーバード大学ケネディ大学院修士課程修了、2002年米国防総合大学戦略修士課程修了。統合幕僚監部報道官、第2航空団司令兼千歳基地司令、統合幕僚監部防衛計画部長(2013年空将昇任)、航空自衛隊幹部学校長、北部航空方面隊司令官を経て、2017年航空自衛隊補給本部長を最後に退官。2019年7月~2021年6月、ハーバード大学アジアセンター上席研究員。現在、企業アドバイザー及び安全保障研究フェロー。
API地経学研究所所長兼APIシニアフェロー
慶應義塾大学教授
慶應義塾大学サイバー文明研究センター共同センター長
内閣官房参与
1984年慶應義塾大学大学院工学研究科後期博士課程修了。東京工業大学総合情報処理センター助手、東京大学大型計算機センター助手、慶應義塾大学環境情報学部助教授を経て1997年より同教授。1999年慶應義塾大学SFC研究所所長、2005年学校法人慶應義塾常任理事、2009年慶應義塾大学環境情報学部長、2017年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科委員長。
1984年日本初のネットワーク間接続「JUNET」を設立。1988年インターネット研究コンソーシアムWIDEプロジェクトを発足させ、インターネット網の整備、普及に尽力。初期インターネットを、日本語をはじめとする多言語対応へと導く。内閣高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)有識者本部員、内閣サイバーセキュリティセンターサイバーセキュリティ戦略本部本部員、IoT推進コンソーシアム会長他、各省庁委員会の主査や委員などを多数務め、国際学会等でも活動。2013年「インターネットの殿堂(パイオニア部門)」入りを果たす。2019年フランス共和国レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受章。「日本のインターネットの父」として知られる。
神保 謙 (じんぼ けん)
API MSFエグゼクティブ・ディレクター
慶應義塾大学総合政策学部教授
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了(政策・メディア博士)。専門は国際政治学、安全保障論、アジア太平洋の安全保障、日本の外交・防衛政策。
タマサート大学(タイ)で客員教授、国立政治大学、国立台湾大学(台湾)で客員准教授、南洋工科大学(シンガポール)客員研究員を歴任。政府関係の役職として、防衛省参与、国家安全保障局顧問、外務省政策評価アドバイザリーグループ委員などを歴任。
主な著書に『現代日本の地政学』(共著、中央公論新社、2017)、『民主党政権:失敗の研究』(共著、中央公論新社、2013)、『アジア太平洋の安全保障アーキテクチャ:地域安全保障の三層構造』(編著、日本評論社、2011年)、『学としての国際政治』(共著、有斐閣、2009年)、The New US Strategy towards Asia: Adapting to the American Pivot (共著、London: Routledge, 2015)、China’s Power and Asian Security (共著、London: Routledge, 2014)など多数。
API上席研究員
東京大学公共政策大学院教授
東京大学公共政策大学院教授。研究分野は、国際政治経済学、科学技術政策論、宇宙政策、安全保障貿易管理、経済制裁、エコノミック・ステイトクラフト、原子力安全、欧州統合、中東問題。
立命館大学国際関係学部卒、英国サセックス大学大学院ヨーロッパ研究所博士課程修了(現代ヨーロッパ研究)。筑波大学大学院人文社会科学研究科専任講師・准教授、北海道大学公共政策大学院准教授・教授などを経て現職。国連安保理イラン制裁専門家パネル委員(2013-15年)。
主要著作に、『技術・環境・エネルギーの連動リスク』(岩波書店、2015年)、『EUの規制力』(遠藤乾氏と共編、日本経済評論社、2012年)、『宇宙開発と国際政治』(岩波書店サントリー学芸賞、2011年)、『Policy Logics and Institutions of European Space Collaboration』(Ashgate Publishers, 2003)、『グローバリゼーションと国民国家』(田口富久治氏と共著、青木書店、1997年)など。
相良 祥之(さがら よしゆき)
API主任研究員
研究分野は国際公共政策、国際紛争、新型コロナ対策やワクチン外交など健康安全保障、経済安全保障、制裁、サイバー、新興技術。慶應義塾大学法学部卒、東京大学公共政策大学院修了。
これまで国連・外務省・IT企業において国際政治や危機管理の実務に携わってきた。国連ではニューヨークとスーダンで勤務しアフガニスタンやコソヴォでも短期勤務。
2005年から2011年まで株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)にて事業開発を担当。2012年から2013年まで国際協力機構(JICA)農村開発部にて中南米カリブ地域の農村・水産開発案件を担当。2013年から2015年まで国際移住機関(IOM)スーダンにて選挙支援担当官を務めたのち、事務所長室にて新規プロジェクト開発やドナーリレーションを担当。ダルフールなど紛争影響地域における平和構築・人道支援案件の立ち上げや実施に携わる。2015年から2018年まで国連事務局(NY本部)政務局 政策・調停部。ナイジェリア、イラク、アフガニスタン等における国連平和活動のベストプラクティス及び教訓の分析・検証・部内広報を担当。2018年から2020年まで外務省アジア大洋州局北東アジア第二課で北朝鮮に関する外交政策に携わる。佐藤栄作記念国連大学協賛財団第27回「佐藤栄作賞」優秀賞受賞。
著作に「危機管理としての日本のコロナ対応」『アステイオン』第94号(2021年5月)、『新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調)調査・検証報告書』(共著、2020年10月)など。
柴田 なるみ(しばた なるみ)
API研究員
青山学院大学国際政治経済学部国際政治学科卒業、スウェーデン王国・ストックホルム大学政治学部修士課程。専門は、紛争解決理論、中東政治(特にイスラエル周辺地域)。紛争下の民衆のナラティブを研究。IT企業やNPO法人での勤務経験から、社会問題や政治へのテクノロジーを使ったアプローチや、女性の政治参画支援にも関心を持つ。2019年、在イスラエル日本大使館政務班でインターンとして勤務後、2019年10月よりAPIに参加。
事務局
API客員研究員 兼 CPTPPプロジェクト・スタッフディレクター
合同会社未来モビリT研究 代表
慶應義塾大学大学院法学研究科修士、European University Institute歴史文明学博士。新潟県立大学国際地域学部および大学院国際地域学研究科准教授、モナシュ大学訪問研究員、LSE訪問研究員、外務省経済局経済連携課を経て、2021年に合同会社未来モビリT研究を設立。現在、日本経済団体連合会21世紀政策研究所欧州研究会研究委員、東京大学先端科学技術研究センター牧原研究室客員研究員、フェリス女学院大学非常勤講師。2021年12月にAPI客員研究員兼CPTPPプロジェクト・スタッフディレクター就任。