第三国における日米経済協力

プロジェクト概要

日本と米国の同盟関係は60年以上にわたり、世界の平和と繁栄の原動力となってきました。日米安全保障条約・第2条が「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する」としているように、経済は最初から日米関係の中心的な課題になってきました。

インド太平洋地域は、日米両国が戦略的利益をいちばん共有している地域です。両国とも地域の安全保障と安定を確保し、貿易をはじめとした経済的関係を拡大し、そして普遍的な民主主義の価値を維持し広めようと努めてきました。両国は、アジア開発銀行やアジア太平洋経済協力会議(APEC)などの機関を通じて、この地域の経済ルールや規範を形成すべく、数十年間にわたって協力しています。

しかし、米国の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱を受け、中国が代わってインド太平洋地域における経済的な主導権を獲得しようと乗り出してきました。中国は経済的な影響力を外交交渉の道具として広く使うようになっており、また中国の挑戦は、インフラや先端技術の分野でとくに顕著になっています。

日米両国がインド太平洋地域において、望ましいルールや規範を確立し強化するよう協力していくことは、両国の利益になるだけでなく、この地域の国々にとってもより良い経済環境を提供し、さらなる経済発展を促す。この点は、将来にわたって何ら変化するものではありません。米国のTPP離脱が、日米両国の経済協力強化への道を閉ざすものであってはなりません。

こうした視点にたって、日米両国がどの国のどのような分野で経済協力を進めたら、もっとも効果があがるか。それを調査するために、わたしたちアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)とワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)は、2017年春に共同研究プロジェクトに着手しました。

本プロジェクトは大きく3つの段階に分かれています。第1段階では、効果的な経済協力の方法や分野をさぐるため、専門家の会合を開催し、各国の経済規模・経済成長率や地政学的な重要性、日米の関与の度合いなどを点検して、事例研究の対象とする国や組織を選びました。

第2段階では、事例研究の対象とした国・組織について調べるため、インターネットも活用してCSISと複数回の会議を開催し、現地をよく知るビジネスマンや国際組織の職員を招いて、多角的に検討しました。また、ミャンマーやベトナムへ現地調査に行き、大使や現地の政府、ジャーナリスト、銀行などに対してヒアリングを行いました。

そして第3段階では、東京とワシントンで専門家の会合を開催して、横断的な政策提言を取りまとめ、2018年11月29日に東京・六本木で最終報告書「The Article Ⅱ Mandate」を発表しました。

報告書

2018年11月29日に発表した報告書(英語・pdf約100ページ)と、日本語による縮小版(pdf約30ページ)は下記にあります。

報告書(英語)

報告書(日本語縮小版)

* 報告書の概要(日本語・pdfで3ページ)は こちらにあります。

Photos

調査の方向性を議論したCSISとのスカイプ会議
(2017年8月)

ベトナム調査についての会議
(2017年12月)

ヤンゴン商工会議所との会合

ミャンマーのティラワ工業団地を調査するメンバー

報告書発表会でのパネルディスカッション
(2018年11月29日、東京・六本木で)

ディスカッションを聞くグッドマン氏(右)

プロジェクトメンバー

船橋 洋一
プロジェクトリーダー
船橋 洋一(ふなばし よういち)
一般財団法人 アジア・パシフィック・イニシアティブ 理事長

 

マシュー・グッドマン
マシュー・グッドマン(Matthew Goodman)
Center for Strategic and International Studies (CSIS)
上級副所長兼政治経済部長兼アジア経済担当上級アドバイザー

 

大矢 伸
ワシントン・コーディネーター
大矢 伸(おおや しん)
一般財団法人 アジア・パシフィック・イニシアティブ 上席研究員

 

中島 裕行
中島 裕行(なかしま ひろゆき)
株式会社国際協力銀行 エクイティファイナンス部門エクイティ・インベストメント部長(前 API主任研究員(在ワシントンD.C.))

 

寺田 貴
アドバイザー
寺田 貴(てらだ たかし)
同志社大学法学部教授

 

ハリー・デンプシー
リサーチリーダー
ハリー・デンプシー(Harry Dempsey)
一般財団法人 アジア・パシフィック・イニシアティブ 研究員

 

ダニエル・レムラー
ダニエル・レムラー(Daniel Remler)
ペンシルヴァニア大学ウォートン・スクール Master candidate
ハーバード大学ジョン・ケネディ行政学院 Master candidate

 

アン・リステラッド
アン・リステラッド(Ann Listerud)
CSIS 研究員(リサーチ・アソシエイト)