第8回API地経学オンラインサロンを開催~「バイデン政権の1年で見えてきた地経学的課題」


当日の録画動画は こちら

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(所在地:東京都港区、理事長:船橋洋一、以下API)は、2022年1月8日(土)午前10時~11時に、第8回「API地経学オンラインサロン」を開催いたします。詳細については、下記 をご参照ください。
[本イベントは終了しました]
img

開催報告

APIは、2022年1月8日(土)午前10時~11時に第8回目となる地経学オンラインサロンを開催しました。
今回はゲストに中山俊宏慶應義塾大学総合政策学部教授をお招きし、「バイデン政権の1年で見えてきた地経学的課題」と題して、API地経学研究所所長代行・上席研究員である鈴木一人東京大学公共政策大学院教授との対談をお送りいたしました。当日の主な議論を以下にご紹介します。事務局作成のサマリーですので、正確な内容についてはぜひ動画をご視聴ください。

(本サマリー及び動画の内容はイベント実施時点での情報に基づいています)


第8回目のAPI地経学オンラインサロンでは、アメリカ政治外交の専門家である中山俊宏慶應義塾大学総合政策学部教授をゲストに迎え、アメリカ国内の政治的な分断、バイデン政権の外交姿勢、そしてそれらがもたらす国際的な影響について、議論を交わしました。

1年を経ても消えない「トランプ主義」
まず中山氏は、「アメリカでは、普通は負けた大統領は消えていくものだが、トランプ大統領が去って1年を経てもトランプ主義が全然消えず、むしろ強まっている。2024年も、民主的な選挙が転覆される脅威が残るすごい状況」と指摘します。そして、その背景にあるものとして、長い間アメリカ社会の主流にいた中産階級が、周縁に押し込められステータスが落ちていく不安を感じており、その不安を押し返す物語に身を委ねることがマスの規模で起きていると説明します。あたかも、今のアメリカの状況は、「IRAが設立された1960年代の北アイルランドと似通っている」と。そして、アメリカ国内の対立も、以前のような単純な保守・リベラルの二項対立では解釈できず、「Free America」「Real America」「Smart America」「Just America」など、対立軸が複雑化しており、単純には解けなくなってきていると解説します。

「外交通」の大統領が突進する「ミドルクラス外交」
続いて話題は、そういう中でバイデン政権が進める「中間層のための外交」に移ります。中山氏は、バイデン政権の外交について、アメリカの国際主義が退潮し、内向きに向かう中で、「外交通の大統領」が自分の意思を貫徹する布陣とした結果、対中政策を除けば空回りしている、と評します。世界的に評判の悪い人権外交も、トランプと違う旗を揚げたいバイデン大統領の個人的なアジェンダであり、外交通の大統領に意見具申する人が政権内にいない点を指摘します。また、アメリカの対中政策については、特に「政府の対中対抗意識とビジネスの対中関与とのねじれが向かう方向性」について、「ビジネスロビーも関与一枚岩でなくなってきているが、アメリカ全体で体制間競争と認識し、中国に厳しい方向に向かっているのは間違いない。但し、米ソ冷戦と異なり米中関係は複合的であり、どれが支配的かは読み解く必要がある」と解説します。

国際秩序・日本への影響は?
そのうえで、米国のこうした内政が国際秩序に与える影響について、中山氏は、こう予言します。「先を見通すと、共和党が上下両院で多数派になる可能性が相当ある。バイデン大統領は2024年には出馬するとは信じられておらず、中間選挙後の2年間はレイムダックに陥る。すると、中国やロシアなどアメリカのadversariesが揺さぶりをかける可能性が高い」。また、そういう中での日本の対応策としては、「アメリカのインド太平洋への関与は日本にとって悪くないが、欧州や中東などからの撤退で生じる空白で、世界のアメリカに対する不安が増している。日本にとって大切なのは、自前の能力を高めつつ、孤立主義を強めるアメリカに対し、この地域に居続けることが重要と説得すること」と強調します。一方で、「中国も国内に問題を抱えている。米中共に縮小均衡した場合」については、「安定した“Gゼロ”は日本として許容できるかもしれないが、国際秩序は、ロシアやイランなど、別のファクターで混乱する恐れもある。米中が衰退して安定するというシナリオは、あまり現実味はないかもしれない。」との見解が示されました。

当日の模様は以下よりご覧になれます。

<お問い合せ先>
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)
API地経学研究所

API地経学オンラインサロン

1.日時
2022年1月8日(土)10:00 ‒ 11:00(JST)(9:50開場)

2.開催方式
オンライン視聴(ZOOMウェビナー)

3.主催
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)

4.テーマ
「バイデン政権の1年で見えてきた地経学的課題」

5.登壇者
ゲスト:中山俊宏 慶應義塾大学総合政策学部教授

ホスト:鈴木一人 API地経学研究所所長代行・上席研究員 / 東京大学公共政策大学院教授

6.ゲスト(中山俊宏氏)の略歴
慶応義塾大学総合政策学部・教授/日本国際問題研究所・上席客員研究員
一九六七年生まれ、東京都出身。青山学院大学国際政治経済学部国際政治学科卒。青山学院大学大学院国際政治経済学研究科国際政治学専攻博士課程修了。博士(国際政治学)。ワシントン・ポスト紙極東総局記者、日本政府国連代表部専門調査員、日本国際問題研究所主任研究員、ブルッキングス研究所招聘客員研究員、津田塾大学国際関係学科准教授、青山学院大学国際政治経済学部教授等を経て、二〇一四年四月より現職。二〇一七年にはサー・ハワード・キッペンバーガー・チェア客員教授(ビクトリア大学ウェリントン戦略研究センター)、二〇一八~一九年にはウッドロウ・ウィルソン・センター・ジャパン・スカラー、二〇一九~二〇年には防衛省参与。専門はアメリカ政治・外交、国際政治、日米関係。主な著書に『アメリカ政治の地殻変動』(共編著、東大出版会)『アメリカン・イデオロギー』(単著、勁草書房)、『介入するアメリカ』(単著、勁草書房)、『アメリカにとって同盟とはなにか』(共著、中央公論)、『オバマ・アメリカ・世界』(共著、NTT出版)、『世界政治を読み解く』(共編著、ミネルヴァ書房)などがある。第10回中曽根康弘奨励賞受賞。

(おことわり)
API地経学オンラインサロンで表明された内容や意見は、講演者やパネリストの個人的見解であり、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)やAPI地経学研究所等、スピーカーの所属する組織の公式見解を必ずしも示すものではないことをご留意ください。