【特集】2024年 選挙は世界を変えるのか:岐路に立つ民主主義

【特集】2024年 選挙は世界を変えるのか:岐路に立つ民主主義

2024年は台湾、欧州連合(EU)や米国を始めとして各国で選挙が実施される「選挙イヤー」となります。選挙による国内政治のダイナミクスの変化は世界政治に影響を与え、地政学・地経学上のリスクを生じさせる可能性があります。また、報道の自由の侵害や偽情報の急増など、公正な選挙の実施に対する懸念が高まっているなか、今後の民主主義の行方が注目されています。本特集では、2024年に実施される各国の選挙の動向を分析するとともに、国内政治の変化が国際秩序に与える影響についても考察していきます。

【特集】2024年 選挙は世界を変えるのか:岐路に立つ民主主義

2024年は台湾、欧州連合(EU)や米国を始めとして各国で選挙が実施される「選挙イヤー」となります。選挙による国内政治のダイナミクスの変化は世界政治に影響を与え、地政学・地経学上のリスクを生じさせる可能性があります。また、報道の自由の侵害や偽情報の急増など、公正な選挙の実施に対する懸念が高まっているなか、今後の民主主義の行方が注目されています。本特集では、2024年に実施される各国の選挙の動向を分析するとともに、国内政治の変化が国際秩序に与える影響についても考察していきます。

SCHEDULE
2024年の主な選挙日程一覧

<2024年に大型選挙の実施が予定される国・地域>

<PICKUP:直近の選挙と解説>

2024年4月17日 クロアチア総選挙
結果はこちら(Politico)

【解説】2024年、クロアチアは総選挙、欧州議会選、大統領選という3つの大型選挙を控えており、その初戦が4月17日に実施された。この総選挙は、現職で親EU派のプレンコヴィッチ首相率いるクロアチア民主同盟(HDZ)に対して、大統領として儀礼的な役割を担っていたミラノヴィッチ大統領・元首相率いる野党・社会民主党(SDP)のがウクライナ支援に反対の方針を掲げて、その差を縮めていたことから、選挙の行方が注目されていた。暫定結果によれば、HDZが61議席(定数151・一院制)と5つ議席を減らした一方で、SDPの議席は1議席増の42に留まり、第3党の新興右派政党の祖国連合も2議席減の14議席となったことから、全体の構図は大きく変わることはなかった。しかし、2020年の総選挙で過半数を取れなかったプレンコヴィッチのHDZが少数政党の支持を集めて辛うじて政権を維持してきたことを踏まえると、失った5議席を他党との連立で補うのは容易ではない。また、総選挙では対EU・ウクライナ政策より国内経済の停滞や与党の度重なる汚職疑惑が主な焦点となったとされ、現職のプレンコヴィッチ政権に対する風当たりの強さが表れた。今後政権がどのような連立を組み、国内対策を取るかが、6月の欧州議会選、12月の大統領選に影響してくるであろう。(石川雄介)

2024年4月21日 モルディブ総選挙
結果はこちら(ロイター通信)

【解説】4月21日に行われたモルディブの総選挙は、昨年10月の大統領選で勝利したムイズ大統領の政党である人民国家議会党(PNC)が93議席中、71議席を獲得するという大勝の見込みである。他方、野党のモルディブ民主党(MDP)は12議席に留まる見込み。投票率は72.9%で、前回の2019年選挙の82%から大きく低下した。ムイズ大統領は、モルディブの大統領として初めてインドより先に中国を訪問するなど、親中派の立場を前面に出し、モルディブに駐在するインド軍兵士を追い出す(なお、インドとの調整の結果、救難ヘリのメンテナンスなどの技術者と入れ替わる形で決着)など、インドとの関係を断絶する政策を進めているが、今回の選挙はその路線をさらに強化する結果となった。MDPから分派した、親インド派のナシード元大統領率いる民主党は議席を獲得できなかったが、ムイズ大統領の師匠筋に当たるヤミーン元大統領が創設した新党も議席を得ることは出来なかった。これでムイズ大統領に権力が集中し、中国への依存が高まり、インドとの対立がさらに激化する可能性が高くなった。(鈴木一人)

<主な選挙と解説>

注)選挙の詳細・結果は公式サイトがある場合は公式サイトに、公式サイトがない場合もしくは英語以外のページの場合は主要な情報サイトにリンクしています。

2024年1月7日 バングラデシュ総選挙
結果はこちら(Al Jazeera)

【解説】バングラデシュの総選挙は野党のバングラデシュ国民党(BNP)が棄権したことで、与党のアワミ連盟(AL)が勝利し、現職のハシナ政権が継続することとなった。BNPは政権による政治的抑圧、野党活動家の逮捕などに反発して選挙前には暴動や破壊行動も起こしていた。選挙当日は暴動などなかったが、野党の棄権によって今回の選挙の正当性に疑問符をつけることを目的としていた。実際、前回の選挙では80%近くあった投票率が、選挙管理当局の発表では40%ほどにしかならなかった(実際にそれより低い可能性はある)。経済成長著しいバングラデシュだが、ロシアとウクライナの戦争以降、食料品の値上げなどインフレが国民生活に影響しており、不満がたまっている。今後のハシナ政権のかじ取りは一層難しくなる可能性がある。(鈴木一人)

2024年1月13日 台湾総統選

【解説】総統選挙では与党民進党の頼清徳氏が、最大野党国民党・侯友宜氏と第三勢力民衆党・柯文哲氏を退け当選した。頼氏は蔡英文政権の路線を継承することを訴え、現状維持を望む幅広い層に支持を広げた。侯氏と柯氏は立候補届出前に候補者一本化を目指したが実現せず、それぞれの支持層の統合ができなかった。他方で総統選と同時に実施された立法院(定数113)選挙は、国民党が52議席(改選前37議席)を獲得して第1党になり、民進党は51議席(同62議席)と大きく議席を減らし第2党に転落した。立法院選挙では住宅価格を含む物価高騰や長期政権への牽制などが、台湾有権者の心理に影響を与えたとみられる。この結果、総統選で勝利した民進党は立法院では少数与党となり、予算案や法律案で野党に妥協を迫られる政権運営となる。(神保謙)

<地経学インサイト>
台湾総統選・立法院選の結果を振り返る
台湾総統選挙まで1週間

<特集サイト>
特集「台湾有事を考える」
2024年2月4日 エルサルバドル大統領選
結果はこちら(ロイター通信)

【解説】2月4日に行われたエルサルバドル大統領選は、憲法で1期5年と定められている大統領職の任期を、憲法裁判所の判事を更迭してまで憲法解釈を変更し、再選を可能とした現職のブケレ大統領が圧倒的な支持を受けて再選された。ブケレ大統領は、自ら「世界一クールな独裁者」を名乗り、逮捕状を請求しなくてもギャングのメンバーを逮捕するなど強権的な手法で治安回復を果たしたことで、国民の人気も高い。しかし、その治安政策の裏で多くの無実の人が冤罪で逮捕されるなどの問題もあり、その手法には疑問が付されている。世界で初めてビットコインを法定通貨にするなど、対米従属からの脱却と、エルサルバドル経済にとって重要である出稼ぎ労働者からの送金を容易にする政策などは国民に浸透しなかった。かつてフィリピンのドゥテルテ大統領が行った強権的な治安回復措置を範とし、習近平主席やプーチン大統領のように憲法の規定を超えて権力を維持する仕組みを導入するなど、民主主義と法の支配に対する挑戦が続いていることを印象付ける選挙となった。(鈴木一人)

2024年2月7日 アゼルバイジャン大統領選
結果はこちら(ロイター通信)

【解説】昨年のナゴルノ=カラバフ紛争で勝利し、1月1日から同地域をアゼルバイジャンに編入することで永年にわたる領土問題を解決したアリエフ大統領が92%の得票を得て勝利した。形式的には7人の候補が出ていたが、実質的にアリエフ大統領の信任投票の色彩の濃い選挙であった。アリエフ大統領は2003年に就任して以来5度の大統領選に勝利、2016年の憲法改正で大統領任期は7年となり、2031年までの長期政権となる。アゼルバイジャンは豊富な石油と天然ガスから得られた富を軍事費に費やし、緊密な関係にあるトルコから輸入したドローン(バイラクタルTB2)を軸に戦い、アルメニアに対して勝利した。これによりコーカサス地方におけるアゼルバイジャンの影響力が増大し、アルメニアを見捨てる形となったロシアの影響力が低下する結果となった。こうした地政学的な変化と、対ロシア制裁によって欧州への天然ガスの輸出を強化したアリエフ大統領の支持は盤石であった。(鈴木一人)

2024年2月8日 パキスタン総選挙
結果はこちら(公式サイト)

【解説】2月8日に行われたパキスタンの総選挙はカーン元首相が率いていたPTIに所属していた無所属候補が97議席を獲得し、シャリーフ元首相のPMLNが76議席、ブット元首相の息子が率いるパキスタン人民党(PPP)が54議席を獲得することとなった(総議席数は265)。いずれも過半数を得ることが出来なかったが、おそらくPMLNとPPPが連立を組んでシャリーフが首相に返り咲くことになるとみられる。パキスタンでは軍の政治における影響力が大きく、軍に支持されたPMLNに有利になるよう、カーン元首相を裁判で有罪にし、牢獄の中からの選挙活動にさせただけでなく、PTIの名前で選挙に参加することが禁じられた。またクリケットの国民的選手であったカーンを象徴する、クリケットのバットまで選挙活動で使えなくするという徹底ぶりだったが、それにも関わらずPTI系の候補集団が第一党となった。パキスタンの社会的分断や軍の介入への反発などがこうした結果をもたらしたと言えるが、国土全域に広がった洪水からの立て直しなど課題山積の中で、不安定な政権運営を強いられる状況となっている。(鈴木一人)

2024年2月11日 フィンランド大統領選
結果はこちら(Yle News)

【解説】2月11日に行われたNATO加盟後初の国政選挙であるフィンランドの大統領選挙の決選投票では、中道右派の国民連合党のアレクサンデル・ストゥブ元首相が、左派のフィンランド社会民主党のペッカ・ハービスト前外相を破って、新たに大統領に選出された。フィンランドは、国家元首である大統領の下での議院内閣制をとっており、大統領の任期は6年で、2期まで再選可能。12年間大統領を務めた現職であったニーニスト大統領に代わって、ストゥブ元首相が第13代大統領となる。フィンランドは、ロシアと1300キロの国境線で接しており、伝統的反ロシア感情が強い。前大統領の下でそれまでの中立路線の外交を転換したが、決選投票では右派のストゥブ元首相も左派のハービスト前外相も、基本的にはNATO加盟を実現した「ニーニスト路線」を継承する親NATOの立場を共有していた。NATOでの核共有などで、ストゥブ元首相の方がよりロシアへの強硬路線を示していた。ストゥブ氏はロンドン大学(LSE)で博士号取得した政治学者でもあり、欧州議会議員や外相なども務めた国際派、欧州大学大学院(EUI)教授も務めている。(細谷雄一)

2024年2月14日 インドネシア大統領選
詳細はこちら(ジャカルタ・ポスト)

【解説】インドネシア大統領選は2/14に投開票され、現時点で選挙結果は確定していないものの、プラボウォ国防相が6割弱の得票(主要な民間調査期間の集計)を集めて他の2候補を引き離し、当選が確実視される。プラボウォ国防相は高い支持率を保ったジョコ現政権の路線を継承することを訴え、成長路線、雇用創出、高度な産業政策の推進が広く支持を集めた。当日投開票の国会議員選挙では、プラボウォ陣営のゴルカル党が第1党を逃し、少数与党となる可能性がある。かつてスハルト政権期に人権侵害疑惑も取り沙汰された強面のプラボウォ氏だが、選挙ではソフト路線を打ち出しジョコ氏の人気にすがるように長男を副大統領候補に起用するなど、なりふり構わぬ権力固めだった。国会議員選で第1党となった闘争民主党と大統領候補擁立をめぐる遺恨もあり、プラボウォが目指すであろう連立工作も容易に進まない可能性が高い。1997年のアジア通貨危機をきっかけに民主主義が定着したインドネシアだが、そのあり方も徐々に不安定なものになりつつある。(神保謙)

2024年2月25日
→2024年3月24日
セネガル大統領選
結果はこちら(Al Jazeera)

【解説】2月25日に実施される予定であったセネガルの大統領選は、現職大統領だったサルが突如として選挙の無期限延期を発表し、混乱した状況であった。しかし憲法裁判所が延期措置を違憲と判断したため、3月24日に選挙が行われ、54.28%の得票を得た野党のバシル・ジョマイ・ファイが当選した。サルの後継者であるアマドゥ・バは35.79%しか票を獲得することが出来ず完敗した。ファイは4月2日に大統領に就任し、混乱は収まりつつある。西アフリカで最も安定した民主主義とみられていたセネガルでも大統領の横暴から権威主義的な体制に移行していくのかどうかが問われていたが、司法の介入が機能し、選挙でサルの与党連合が敗北した際も、その敗北を受け入れたことで、セネガルの民主主義の強靭性が示された結果となった。(鈴木一人)

2024年3月1日 イラン国会議員選挙
詳細はこちら(Al Jazeera)

3月1日に行われたイランの国会(Majilis)の議員選挙は、現時点で490議席のうち、投票率が20%を切った選挙区の45議席が再投票となっているため、確定はしていないが、保守派が圧倒的多数の議席を獲得した。イラン国民が保守派を選択したというよりは、選挙の前に候補者の適格審査を行う護憲評議会(保守派の聖職者が中心)が改革派・穏健派の候補を軒並み失格にした結果である。2021年の大統領選挙も同様に護憲評議会による選別によりライーシが大統領となったが、それが繰り返されたため、国民の間にはしらけムードが漂った選挙となった。注目された投票率は史上最低の41%であり、テヘランでは投票された票の中で白票が25%にのぼり、他の都市部も同様だったとのこと。これまでイスラム聖職者による統治と共和主義的な統治の複合体制として機能してきたイランを支えてきた「選挙による体制の正統性」が失われつつある。(鈴木一人)

2024年3月10日 ポルトガル総選挙
詳細はこちら(公式サイト)

【解説】汚職スキャンダルをめぐる首相の辞任と議会解散を受けて、3月10日にポルトガル総選挙が実施された。与党の社会党(PS、中道左派)が120議席から77議席へと議席数を減らした一方で、元スポーツコメンテーターのアンドレ・ベントゥーラ党首が率いる極右政党シェーガ(ポルトガル語で「もうたくさんだ」を意味する)は12議席から48議席へと議席数を選挙前の4倍に議席を増やし、第3党に躍進した。最大野党である社会民主党(PSD)を中心とする中道右派連合も79議席を獲得するに留まり、2大政党であるPSとPSDのいずれも過半数を得ることはできなかったことから(総議席数は230)、汚職や住宅価格の高騰、経済政策などへの不満を吸収したシェーガの躍進が目立つ結果となった。僅差で第一党の座を獲得したPSDのルイス・モンテネグロ党首はシェーガとの連立を否定しており、新たに発足する政権は少数与党政権となる可能性がある。2大政党間での政策の差が小さく、1974年の民主化以来比較的安定した政治を維持してきたポルトガルであるが、今後も安定した政治を継続できるかどうかが注目される。(石川雄介)

2024年3月17日 ロシア大統領選
詳細はこちら(ロイター通信)

【解説】ロシアでは、2024年3月15日から17日まで三日間にわたって大統領選挙の投票が行われた。17日に開票された最終結果は、ロシア中央選挙管理委員会によれば、現職のウラジミール・プーチン大統領が7627万票を獲得して勝利が確定した。得票率は87.28%で、投票率は77.49%とされ、いずれも過去最高である。
 1993年憲法では、大統領の任期は4年で、連続2期までと規定されていたが、2008年の憲法修正で任期6年、さらに2020年の憲法修正で大統領経験者は3期まで就任できるようになり、プーチン現大統領はこれにより最長で2036年まで大統領の地位にある可能性がある。今回の大統領選挙では、投票期間を通常より延期して三日間とするとともに、電子投票も導入して投票率向上を図った。だが、政権を明確に批判するような候補は立候補が認められず、結局4人の立候補者(過去最低)しか認められなかった。プーチンの得票率は87.28%で、それ以外の候補の得票率は4%前後であり、予想通りのプーチン現大統領の「圧勝」となった。
 今回、ロシアが占領するウクライナ東部及び南部の4州でも投票を実行し、「9割前後」がプーチン大統領に投票したと公表している。だが、武装した人に投票を強制されたという報道もあり、日本の林芳正官房長官も、「明らかな国際法違反で決して認められない」と厳しく批判した。
 確かにロシア経済は、2023年に3.6%のプラス成長を見せるなど、軍事支出の増大や住宅バブル、天然資源の輸出拡大などによって、良好な数値を示しており、このことにロシア国民が一定の好感をもったことも事実であろう。他方で、戦争により従来以上に言論の自由などの制約が伴う中で、この得票率や投票率の数値がどの程度実情を示しているのかは、判断が難しい。(細谷雄一)

2024年4月6日 スロバキア大統領選
詳細はこちら(公式サイト)

【解説】4月6日、スロバキアにて大統領選挙の決選投票が実施された。先立って3月23日に行われた初回投票ではいずれの候補も過半数の支持を獲得できなかったものの、親欧米派のイヴァン・コルチョク元外務・欧州問題相がフィツォ首相に近いペテル・ペレグリニ元首相を上回り、上位2人で争う決選投票での接戦を予測する声も少なからずあった。しかし蓋を開けてみれば、ペレグリニ氏が約53%を獲得し勝利、対立候補のコルチョク氏は約47%に留まる結果となった。ペレグリニ氏は、コルチョク氏を「戦争屋」「スロバキアをウクライナ戦争に巻き込もうと考えている」と述べるなど、ハンガリーのオルバーン政権にも似た「戦争か平和か」というレトリックを好んで使用してきた。「平和」を主張するペレグリニ氏の勝利は、ウクライナへの軍事支援停止を訴えるフィツォ政権にお墨付きを与えることとなった。決選投票における投票率は61%と初回投票(56%)よりも高い投票率となり、ペレグリニ氏は戦争の恐怖をあおることにより極右の支持を新たに取り込んだものとみられる。また、スロバキアの大統領は法案への拒否権や閣僚および裁判官の任命権を持っており、限られた権限ではあるものの政府に一定の歯止めをかける役割を担っていた。民主主義の観点からは、フィツォ政権が今後司法やメディアへの介入を今後強めるかどうかが懸念される。(石川雄介)

2024年4月10日 韓国総選挙
詳細はこちら(公式サイト)

【解説】4月10日に投開票された韓国総選挙(定数300)は、革新系最大野党「共に民主党」が系列政党を含め圧勝し、政権与党と国会多数派のねじれが拡大した。共に民主党は175議席(改選前156議席)を獲得し単独過半数を維持、少数与党だった「国民の力」は108議席(改選前114議席)にとどまり大敗した。進歩系の政党としてチョグク氏が率いた祖国革新党も12議席を得て第3勢力として存在感を誇示した。選挙戦では急激な物価高対策や、韓国の医学部定員増、政権の不祥事など与党側に逆風が吹いた。野党は大統領を弾劾できる定数の2/3には届かないが、与野党対決法案の迅速な処理を可能とした。与党は選挙前から過半数割れだったが、狙いとしていた野党の法案単独上程を阻止することはできなくなった。選挙結果如何で尹政権の外交・安全保障政策に急速な変化が起こる兆しはない。ただ、尹大統領の求心力が低下し、与党の法案や予算が可決できない状況となれば、多くの局面で革新系への妥協を余儀なくされ、結果として外交・安全保障政策が推進力を失う可能性は高い。(神保謙)

2024年4月17日 クロアチア総選挙
結果はこちら(Politico)

【解説】2024年、クロアチアは総選挙、欧州議会選、大統領選という3つの大型選挙を控えており、その初戦が4月17日に実施された。この総選挙は、現職で親EU派のプレンコヴィッチ首相率いるクロアチア民主同盟(HDZ)に対して、大統領として儀礼的な役割を担っていたミラノヴィッチ大統領・元首相率いる野党・社会民主党(SDP)のがウクライナ支援に反対の方針を掲げて、その差を縮めていたことから、選挙の行方が注目されていた。暫定結果によれば、HDZが61議席(定数151・一院制)と5つ議席を減らした一方で、SDPの議席は1議席増の42に留まり、第3党の新興右派政党の祖国連合も2議席減の14議席となったことから、全体の構図は大きく変わることはなかった。しかし、2020年の総選挙で過半数を取れなかったプレンコヴィッチのHDZが少数政党の支持を集めて辛うじて政権を維持してきたことを踏まえると、失った5議席を他党との連立で補うのは容易ではない。また、総選挙では対EU・ウクライナ政策より国内経済の停滞や与党の度重なる汚職疑惑が主な焦点となったとされ、現職のプレンコヴィッチ政権に対する風当たりの強さが表れた。今後政権がどのような連立を組み、国内対策を取るかが、6月の欧州議会選、12月の大統領選に影響してくるであろう。(石川雄介)

2024年4月21日 モルディブ総選挙
詳細はこちら(ロイター通信)

【解説】4月21日に行われたモルディブの総選挙は、昨年10月の大統領選で勝利したムイズ大統領の政党である人民国家議会党(PNC)が93議席中、71議席を獲得するという大勝の見込みである。他方、野党のモルディブ民主党(MDP)は12議席に留まる見込み。投票率は72.9%で、前回の2019年選挙の82%から大きく低下した。ムイズ大統領は、モルディブの大統領として初めてインドより先に中国を訪問するなど、親中派の立場を前面に出し、モルディブに駐在するインド軍兵士を追い出す(なお、インドとの調整の結果、救難ヘリのメンテナンスなどの技術者と入れ替わる形で決着)など、インドとの関係を断絶する政策を進めているが、今回の選挙はその路線をさらに強化する結果となった。MDPから分派した、親インド派のナシード元大統領率いる民主党は議席を獲得できなかったが、ムイズ大統領の師匠筋に当たるヤミーン元大統領が創設した新党も議席を得ることは出来なかった。これでムイズ大統領に権力が集中し、中国への依存が高まり、インドとの対立がさらに激化する可能性が高くなった。(鈴木一人)

2024年4月19日-6月1日 インド総選挙
詳細はこちら(カーネギー国際平和基金)
2024年6月2日 メキシコ大統領・議会選挙選挙
詳細はこちら(AS/COA)
2024年6月6-9日 欧州議会選挙
詳細はこちら(公式サイト)
2024年6月9日 ベルギー総選挙
詳細はこちら (Politico)
2024年5-8月に実施予定 南アフリカ議会選挙
詳細はこちら(公式サイト)
2024年11月5日 米大統領・連邦議会選挙

特集「2024米国大統領選挙」
2024年12月7日 ガーナ大統領・議会選挙
詳細はこちら (公式サイト)
2024年後半に実施予定 モルドバ大統領選挙
詳細はこちら (公式サイト)
2024年後半に実施予定 ベネズエラ大統領選挙
詳細はこちら (El País)
2025年1月までに実施
(解散の時期による)
英国総選挙
詳細はこちら (BBC)
参考:2025年10月までに
実施(解散の時期による)
衆議院総選挙(日本)

LATEST CONTENTS
最新コンテンツ

REVIEW
過去に実施された選挙及び各国政治(外交)についての論考・動画コンテンツ

EXPERTS
研究員

国際情勢の変化に応じたより広い社会貢献を果たすため、国際関係、地政学、地域研究、経済安全保障、国際安全保障秩序、サイバー・宇宙などの分野を中心に、研究調査・提言、国内外の有識者との知的対話、人材育成を促進する専門家が研究員として所属しています。研究員の氏名をクリックすると詳細をご覧いただけます。

研究グループ・グループ長

鈴木一人
地経学研究所長
経済安全保障グループ・グループ長

細谷雄一
API研究主幹
欧米グループ・グループ長

江藤名保子
上席研究員
中国グループ・グループ長

尾上定正
シニアフェロー
国際安全保障秩序グループ・グループ長

塩野誠
経営主幹
新興技術グループ・グループ長

神保謙
常務理事
APIプレジデント




鈴木一人
地経学研究所長
 

細谷雄一
理事
API研究主幹
 

江藤名保子
上席研究員
中国グループ・グループ長
 

尾上定正
シニアフェロー
国際安全保障秩序グループ グループ長
 

塩野誠
経営主幹
新興技術グループ・グループ長
 


神保謙
常務理事
APIプレジデント
 

研究員(50音順)

<欧米>
石川雄介
研究員補

<新興技術>
梅田耕太
客員研究員

<国際安全保障秩序>
小木洋人
主任研究員

<新興技術>
齊藤孝祐
主任客員研究員

<経済安全保障>
相良祥之
主任研究員

<経済安全保障>
鈴木均
主任客員研究員

<欧米>
ディクソン藤田茉里奈
研究員補

<経済安全保障>
富樫真理子
松本佐俣フェロー

<中国>
徳地立人
シニアフェロー

<経済安全保障>
ポール・ネドー
客員研究員

<中国>
町田穂高
主任客員研究員

<経済安全保障>
山田哲司
主任客員研究員


<欧米>
石川雄介
研究員補
 

<新興技術>
梅田耕太
客員研究員
 


<国際安全保障秩序>
小木洋人
主任研究員
 


<新興技術>
齊藤孝祐
主任客員研究員
 


<経済安全保障>
相良祥之
主任研究員
 


<経済安全保障>
鈴木 均
主任客員研究員
 


<欧米>
ディクソン
藤田茉里奈

研究員補
 


<経済安全保障>
富樫真理子
松本佐俣フェロー
 


<中国>
徳地立人
シニアフェロー
 


<経済安全保障>
ポール・ネドー
客員研究員
 


<中国>
町田穂高
客員研究員
 


<経済安全保障>
山田哲司
客員研究員
 

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地経学研究所

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