【特集】2024年 選挙は世界を変えるのか:岐路に立つ民主主義

【特集】2024年 選挙は世界を変えるのか:岐路に立つ民主主義

2024年は台湾、欧州連合(EU)や米国を始めとして各国で選挙が実施される「選挙イヤー」となります。選挙による国内政治のダイナミクスの変化は世界政治に影響を与え、地政学・地経学上のリスクを生じさせる可能性があります。また、報道の自由の侵害や偽情報の急増など、公正な選挙の実施に対する懸念が高まっているなか、今後の民主主義の行方が注目されています。本特集では、2024年に実施される各国の選挙の動向を分析するとともに、国内政治の変化が国際秩序に与える影響についても考察していきます。

【特集】2024年 選挙は世界を変えるのか:岐路に立つ民主主義

2024年は台湾、欧州連合(EU)や米国を始めとして各国で選挙が実施される「選挙イヤー」となります。選挙による国内政治のダイナミクスの変化は世界政治に影響を与え、地政学・地経学上のリスクを生じさせる可能性があります。また、報道の自由の侵害や偽情報の急増など、公正な選挙の実施に対する懸念が高まっているなか、今後の民主主義の行方が注目されています。本特集では、2024年に実施される各国の選挙の動向を分析するとともに、国内政治の変化が国際秩序に与える影響についても考察していきます。

SCHEDULE
2024年の主な選挙日程一覧

<2024年に大型選挙の実施が予定される国・地域>

<主な選挙と解説>

注)選挙の詳細・結果は公式サイトがある場合は公式サイトに、公式サイトがない場合もしくは英語以外のページの場合は主要な情報サイトにリンクしています。

2024年1月7日 バングラデシュ総選挙
結果はこちら(Al Jazeera)

【解説】バングラデシュの総選挙は野党のバングラデシュ国民党(BNP)が棄権したことで、与党のアワミ連盟(AL)が勝利し、現職のハシナ政権が継続することとなった。BNPは政権による政治的抑圧、野党活動家の逮捕などに反発して選挙前には暴動や破壊行動も起こしていた。選挙当日は暴動などなかったが、野党の棄権によって今回の選挙の正当性に疑問符をつけることを目的としていた。実際、前回の選挙では80%近くあった投票率が、選挙管理当局の発表では40%ほどにしかならなかった(実際にそれより低い可能性はある)。経済成長著しいバングラデシュだが、ロシアとウクライナの戦争以降、食料品の値上げなどインフレが国民生活に影響しており、不満がたまっている。今後のハシナ政権のかじ取りは一層難しくなる可能性がある。(鈴木一人)

2024年1月13日 台湾総統選

【解説】総統選挙では与党民進党の頼清徳氏が、最大野党国民党・侯友宜氏と第三勢力民衆党・柯文哲氏を退け当選した。頼氏は蔡英文政権の路線を継承することを訴え、現状維持を望む幅広い層に支持を広げた。侯氏と柯氏は立候補届出前に候補者一本化を目指したが実現せず、それぞれの支持層の統合ができなかった。他方で総統選と同時に実施された立法院(定数113)選挙は、国民党が52議席(改選前37議席)を獲得して第1党になり、民進党は51議席(同62議席)と大きく議席を減らし第2党に転落した。立法院選挙では住宅価格を含む物価高騰や長期政権への牽制などが、台湾有権者の心理に影響を与えたとみられる。この結果、総統選で勝利した民進党は立法院では少数与党となり、予算案や法律案で野党に妥協を迫られる政権運営となる。(神保謙)

<地経学インサイト>
台湾総統選・立法院選の結果を振り返る
台湾総統選挙まで1週間

<特集サイト>
特集「台湾有事を考える」
2024年2月4日 エルサルバドル大統領選
結果はこちら(ロイター通信)

【解説】2月4日に行われたエルサルバドル大統領選は、憲法で1期5年と定められている大統領職の任期を、憲法裁判所の判事を更迭してまで憲法解釈を変更し、再選を可能とした現職のブケレ大統領が圧倒的な支持を受けて再選された。ブケレ大統領は、自ら「世界一クールな独裁者」を名乗り、逮捕状を請求しなくてもギャングのメンバーを逮捕するなど強権的な手法で治安回復を果たしたことで、国民の人気も高い。しかし、その治安政策の裏で多くの無実の人が冤罪で逮捕されるなどの問題もあり、その手法には疑問が付されている。世界で初めてビットコインを法定通貨にするなど、対米従属からの脱却と、エルサルバドル経済にとって重要である出稼ぎ労働者からの送金を容易にする政策などは国民に浸透しなかった。かつてフィリピンのドゥテルテ大統領が行った強権的な治安回復措置を範とし、習近平主席やプーチン大統領のように憲法の規定を超えて権力を維持する仕組みを導入するなど、民主主義と法の支配に対する挑戦が続いていることを印象付ける選挙となった。(鈴木一人)

2024年2月7日 アゼルバイジャン大統領選
結果はこちら(ロイター通信)

【解説】昨年のナゴルノ=カラバフ紛争で勝利し、1月1日から同地域をアゼルバイジャンに編入することで永年にわたる領土問題を解決したアリエフ大統領が92%の得票を得て勝利した。形式的には7人の候補が出ていたが、実質的にアリエフ大統領の信任投票の色彩の濃い選挙であった。アリエフ大統領は2003年に就任して以来5度の大統領選に勝利、2016年の憲法改正で大統領任期は7年となり、2031年までの長期政権となる。アゼルバイジャンは豊富な石油と天然ガスから得られた富を軍事費に費やし、緊密な関係にあるトルコから輸入したドローン(バイラクタルTB2)を軸に戦い、アルメニアに対して勝利した。これによりコーカサス地方におけるアゼルバイジャンの影響力が増大し、アルメニアを見捨てる形となったロシアの影響力が低下する結果となった。こうした地政学的な変化と、対ロシア制裁によって欧州への天然ガスの輸出を強化したアリエフ大統領の支持は盤石であった。(鈴木一人)

2024年2月8日 パキスタン総選挙
結果はこちら(公式サイト)

【解説】2月8日に行われたパキスタンの総選挙はカーン元首相が率いていたPTIに所属していた無所属候補が97議席を獲得し、シャリーフ元首相のPMLNが76議席、ブット元首相の息子が率いるパキスタン人民党(PPP)が54議席を獲得することとなった(総議席数は265)。いずれも過半数を得ることが出来なかったが、おそらくPMLNとPPPが連立を組んでシャリーフが首相に返り咲くことになるとみられる。パキスタンでは軍の政治における影響力が大きく、軍に支持されたPMLNに有利になるよう、カーン元首相を裁判で有罪にし、牢獄の中からの選挙活動にさせただけでなく、PTIの名前で選挙に参加することが禁じられた。またクリケットの国民的選手であったカーンを象徴する、クリケットのバットまで選挙活動で使えなくするという徹底ぶりだったが、それにも関わらずPTI系の候補集団が第一党となった。パキスタンの社会的分断や軍の介入への反発などがこうした結果をもたらしたと言えるが、国土全域に広がった洪水からの立て直しなど課題山積の中で、不安定な政権運営を強いられる状況となっている。(鈴木一人)

2024年2月11日 フィンランド大統領選
結果はこちら(Yle News)

【解説】2月11日に行われたNATO加盟後初の国政選挙であるフィンランドの大統領選挙の決選投票では、中道右派の国民連合党のアレクサンデル・ストゥブ元首相が、左派のフィンランド社会民主党のペッカ・ハービスト前外相を破って、新たに大統領に選出された。フィンランドは、国家元首である大統領の下での議院内閣制をとっており、大統領の任期は6年で、2期まで再選可能。12年間大統領を務めた現職であったニーニスト大統領に代わって、ストゥブ元首相が第13代大統領となる。フィンランドは、ロシアと1300キロの国境線で接しており、伝統的反ロシア感情が強い。前大統領の下でそれまでの中立路線の外交を転換したが、決選投票では右派のストゥブ元首相も左派のハービスト前外相も、基本的にはNATO加盟を実現した「ニーニスト路線」を継承する親NATOの立場を共有していた。NATOでの核共有などで、ストゥブ元首相の方がよりロシアへの強硬路線を示していた。ストゥブ氏はロンドン大学(LSE)で博士号取得した政治学者でもあり、欧州議会議員や外相なども務めた国際派、欧州大学大学院(EUI)教授も務めている。(細谷雄一)

2024年2月14日 インドネシア大統領選
詳細はこちら(ジャカルタ・ポスト)
2024年2月25日(予定)
→無期限延期
セネガル大統領選
詳細はこちら(Al Jazeera)
2024年3月17日 ロシア大統領選
詳細はこちら(ロイター通信)
2024年4月10日 韓国総選挙
詳細はこちら(AS/COA)
2024年4-5月 インド総選挙
詳細はこちら(カーネギー国際平和基金)
2024年6月2日 メキシコ大統領・議会選挙選挙
詳細はこちら(AS/COA)
2024年6月6-9日 欧州議会選挙
詳細はこちら(公式サイト)
2024年6月9日 ベルギー総選挙
詳細はこちら (Politico)
2024年5-8月に実施予定 南アフリカ議会選挙
詳細はこちら(公式サイト)
2024年11月5日 米大統領・連邦議会選挙

特集「2024米国大統領選挙」
2024年12月7日 ガーナ大統領・議会選挙
詳細はこちら (公式サイト)
2024年後半に実施予定 モルドバ大統領選挙
詳細はこちら (公式サイト)
2024年後半に実施予定 ベネズエラ大統領選挙
詳細はこちら (El País)
2025年1月までに実施
(解散の時期による)
英国総選挙
詳細はこちら (BBC)
参考:2025年10月までに
実施(解散の時期による)
衆議院総選挙(日本)

LATEST CONTENTS
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REVIEW
過去に実施された選挙及び各国政治(外交)についての論考・動画コンテンツ

EXPERTS
研究員

国際情勢の変化に応じたより広い社会貢献を果たすため、国際関係、地政学、地域研究、経済安全保障、国際安全保障秩序、サイバー・宇宙などの分野を中心に、研究調査・提言、国内外の有識者との知的対話、人材育成を促進する専門家が研究員として所属しています。研究員の氏名をクリックすると詳細をご覧いただけます。

研究グループ・グループ長

鈴木一人
地経学研究所長
経済安全保障グループ・グループ長

細谷雄一
API研究主幹
欧米グループ・グループ長

江藤名保子
上席研究員
中国グループ・グループ長

尾上定正
シニアフェロー
国際安全保障秩序グループ・グループ長

塩野誠
経営主幹
新興技術グループ・グループ長

神保謙
常務理事
APIプレジデント




鈴木一人
地経学研究所長
 

細谷雄一
理事
API研究主幹
 

江藤名保子
上席研究員
中国グループ・グループ長
 

尾上定正
シニアフェロー
国際安全保障秩序グループ グループ長
 

塩野誠
経営主幹
新興技術グループ・グループ長
 


神保謙
常務理事
APIプレジデント
 

研究員(50音順)

<欧米>
石川雄介
研究員補

<新興技術>
梅田耕太
客員研究員

<国際安全保障秩序>
小木洋人
主任研究員

<新興技術>
齊藤孝祐
主任客員研究員

<経済安全保障>
相良祥之
主任研究員

<経済安全保障>
鈴木均
主任客員研究員

<欧米>
ディクソン藤田茉里奈
研究員補

<経済安全保障>
富樫真理子
松本佐俣フェロー

<中国>
徳地立人
シニアフェロー

<経済安全保障>
ポール・ネドー
客員研究員

<中国>
町田穂高
主任客員研究員

<経済安全保障>
山田哲司
主任客員研究員


<欧米>
石川雄介
研究員補
 

<新興技術>
梅田耕太
客員研究員
 


<国際安全保障秩序>
小木洋人
主任研究員
 


<新興技術>
齊藤孝祐
主任客員研究員
 


<経済安全保障>
相良祥之
主任研究員
 


<経済安全保障>
鈴木 均
主任客員研究員
 


<欧米>
ディクソン
藤田茉里奈

研究員補
 


<経済安全保障>
富樫真理子
松本佐俣フェロー
 


<中国>
徳地立人
シニアフェロー
 


<経済安全保障>
ポール・ネドー
客員研究員
 


<中国>
町田穂高
客員研究員
 


<経済安全保障>
山田哲司
客員研究員
 

地経学研究所

Institute of Geoeconomics (IOG)

民間・独立のシンクタンクという立場から、アジア・太平洋地域を代表する知の交流の拠点となり、グローバルでより高いインパクトを発することを目指してまいります。

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