経済安全保障に関する第2回日本企業100社アンケートの結果を発表
約半数の企業が高度技術情報管理・米中関連コンプライアンス体制を整備


地経学研究所(IOG)は、この度、日本企業100社に対し経済安全保障に関するアンケートを実施し、調査結果を公表しました。2021年に続き二回目の実施となります。

本調査は、日本の経済安全保障において重要な位置を占め、またその影響を敏感に受けているとIOGが考える日本の企業100社(研究機関等を含む。以下同じ)に対し、経済安全保障に関する課題やリスク、実際の取り組み、米中対立の影響、そして政府への期待や要望を中心に、アンケート形式で行ったものです。アンケートは、対象企業の経済安保担当部署へ2022年11月から電子メールで調査票をメールで送付、2023年1月にかけてご回答いただき、集計しました。

ブックレット「2022経済安全保障アンケート」

調査結果の要旨は以下のとおりです。調査結果に関する主要データはこちらをご覧ください。なお、調査結果に関する研究員の論考は、『API地経学ブリーフィング』東洋経済オンラインにも掲載)に掲載しています。

ポイント
・経済安全保障推進法律施行後の新たな対応として「専門部署設置」「先端技術への取り組み強化」を選んだ企業が多い。現時点で米中規制の域外適用に関するコンプライアンス体制について「整っている」企業は半数以上(昨年から15%増加)。
・従来からの技術管理、輸出管理に加え、技術漏洩防止のための新たな取り組みについては、「サイバーセキュリティ強化」が8割弱と最も多い。また高度技術情報に触れる人材について、「社内の人材を部署ごとに把握、管理している」企業は約半数を占める。
・経済安全保障の取り組みとして、昨年度調査から一番増加したのは、「生産拠点移管」、次いで「情報管理の強化」(それぞれ1割弱の増加)。

米中対立の影響は拡大

経済安全保障への取り組みにおける「一番の課題」を複数回答で尋ねたところ、1位は「米中関係の不透明性」(72.2%)で、半数以上の企業が「台湾有事を想定した対応」(50.6%)をあげた。「ウクライナ情勢を受けた対ロ制裁によるコスト増」は27.1%、「台湾有事を想定した対応によるコスト増」は18.6%となった。

ウクライナ侵攻の影響も

今回はロシアによるウクライナ侵攻とこれに伴う対ロ制裁の影響についても尋ねた。

経済安全保障についての意識は高まってきた

経済安全保障の取り組みも進んできた

具体的な取り組み内容についても、多くの項目で割合が増加した

従前から懸念であった米中対立に加え、ウクライナ情勢の長期化、台湾有事への危機認識など、不確実性の高まる世界。国内では経済安全保障推進法が成立。各企業が、経済合理性に基づいて事業展開を行うグローバリゼーションの時代は終わりを迎えつつある。日本企業は、安全保障と経済活動、リスクとコストのはざまで苦悩しながらも、一歩踏み出し、具体的な取り組みを始めている。

 

ブックレット「2022経済安全保障アンケート」はこちらから

アンケート結果概要(PDF)はこちら

特設サイトはこちら

第一回の調査結果(2021年12月24日発表)は、こちらをご覧ください。