第9回API地経学オンラインサロンを開催~「ASEANと東南アジア諸国の地経学」


当日の録画動画は こちら

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(所在地:東京都港区、理事長:船橋洋一、以下API)は、2022年2月12日(土)午前10時~11時に、第9回「API地経学オンラインサロン」を開催いたします。詳細については、下記をご参照ください。

[本イベントは終了しました]
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開催報告

APIは、2022年2月12日(土)に第9回目となる地経学オンラインサロンを開催しました。今回はゲストに、アジア太平洋・東アジアの国際政治やASEANを含むアジア全般の地域主義を専門とする大庭三枝神奈川大学法学部・法学研究科教授をお迎えし、「ASEANと東南アジア諸国の地経学」と題して、API地経学研究所所長代行・上席研究員である鈴木一人東京大学公共政策大学院教授との対談をお送りいたしました。当日の主な議論を以下にご紹介します。事務局作成のサマリーですので、正確な内容についてはぜひ動画をご視聴ください。

(本サマリー及び動画の内容はイベント実施時点での情報に基づいています)


米中の間でバランスをとるASEAN
冒頭鈴木氏から「米中の板挟みにあっているASEANの米中間の立ち位置」について問われた大庭氏は、こう答えます。「ASEAN各国のプライオリティは、独立の維持、国内の安定、経済発展であり、その上で米中にどう関わるかということ。中国の存在感が拡大しているのは明らかだが、米国、中国、そして日本・EU・ロシアなど、色々な国とバランスを取ろうとしている。例えば、米国が重視しているとみられるシンガポールも、北京五輪に大統領と外相の両方が訪れ、中国との関係を重視しているというメッセージを出した。米中どちらかという色分けはできない。」

ミャンマー問題で露呈したASEANの矛盾
続いて話題は、ミャンマー問題で揺れるASEANの結束に移ります。大庭氏は、「東南アジア各国にとってASEANは、近隣諸国との関係を安定化させる装置として、また、ASEAN外との関係における膜としても大事であり、ASEANが簡単に崩れたり、瓦解したりすることはない」としたうえで、「ミャンマー問題はASEANが元々内包していた矛盾が露呈したもの。元々不戦共同体・内政不干渉で設立したASEANだが、欧米からの投資を呼び込みたく、世界の潮流を踏まえて、2008年にASEAN憲章に人権・民主化を入れた。だが、それらは国内問題の話であり、かつ民主主義とは言えない国も多い。これまで曖昧にしてあまり突っ込まないでうまくやっていたのが、ミャンマー問題があまりにひどく何かせざるを得なくなり、矛盾が露呈したもの。」と説明します。

人権・民主化外交と経済安全保障の潮流にさらされるASEAN
とはいえ、ASEANは「人権・民主化に起因する米欧からの輸出投資の規制や、米中対立に起因して米中から繰り広げられる輸出投資規制にさらされるリスクが高まっている。例えば、米国は、中国と密な関係にあるカンボジアや、クーデタを起こしたミャンマーに対し、輸出管理・規制を強化している。」と警鐘を鳴らした上で、「そういう中で、米中対立とは別の極として動く日本に期待しているし、それが日本のパワーを大きくする。」と指摘します。

中国の影響力拡大に対する見方とバランスのとり方
最後に、中国の政治経済の影響力拡大に対する東南アジア諸国の見方について、大庭氏はこう説明します。「マイナスに見ているのは日本くらいで、東南アジアの人にとってはビジネスの視点で見ている。日米などの先進国では学歴の高い人こそ中国への見方が厳しくなるが、東南アジアでは学歴の高い人こそ中国のイメージが良い。中国を活用して自分たちがどう利益を得るのか。自分の国を乗っ取ろうというのであれば別だが、付き合って活用しないと、というのが基本的なスタンス。ラオスの高速鉄道も、中国に持ち掛けたのはラオス。ASEAN内の横の競争関係もあり、中国の投資をありがたがっている。」

当日の模様は以下よりご覧になれます。


<お問い合せ先>
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)
API地経学研究所

API地経学オンラインサロン

1.日時
2022年2月12日(土)10:00 ‒ 11:00(JST)(9:50開場)

2.開催方式
オンライン視聴(ZOOMウェビナー)

3.主催
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)

4.テーマ
「ASEANと東南アジア諸国の地経学」

5.登壇者
ゲスト:大庭三枝 神奈川大学法学部・法学研究科教授

ホスト:鈴木一人 API地経学研究所所長代行・上席研究員 / 東京大学公共政策大学院教授

6.ゲスト(大庭三枝氏)の略歴
1968年東京生まれ。国際基督教大学卒業。東京大学大学院総合文化研究科修士課程、博士課程終了。博士(学術)。東京大学大学院助手、東京理科大学准教授、東京理科大学教授、南洋工科大学(シンガポール)客員研究員、ハーバード大学日米関係プログラム研究員、参議院第一調査室客員研究員等を経て2020年4月より現職。専門は国際関係論、国際政治学、アジア太平洋/東アジアの国際政治、ASEANを含むアジア全般の地域主義、および地域秩序の変容を中心とした国際関係についての研究に従事。主な邦語主著として『アジア太平洋地域形成への道程:日豪のアイデンティティ模索と地域主義』ミネルヴァ書房、2004年(単著)、『重層的地域としてのアジア:対立と共存の構図』2014年、有斐閣(単著)、『東アジアのかたち:秩序形成と統合を巡る日米中ASEANの交差』2015年、千倉書房(共著)など。2005年に第21回大平正芳記念賞、第6回NIRA大来政策研究賞受賞。2015年に第11回中曽根康弘奨励賞受賞。

(おことわり)
API地経学オンラインサロンで表明された内容や意見は、講演者やパネリストの個人的見解であり、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)やAPI地経学研究所等、スピーカーの所属する組織の公式見解を必ずしも示すものではないことをご留意ください。