API国際政治論壇レビュー(2022年3月・4月合併号)


米中対立が熾烈化するなか、ポストコロナの世界秩序はどう展開していくのか。アメリカは何を考えているのか。中国は、どう動くのか。大きく変化する国際情勢の動向、なかでも刻々と変化する大国のパワーバランスについて、世界の論壇をフォローするAPIの研究員がブリーフィングします(編集長:細谷雄一 研究主幹、慶應義塾大学法学部教授、ケンブリッジ大学ダウニング・カレッジ訪問研究員)

本稿は、新潮社Foresight(フォーサイト)にも掲載されています。

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API国際政治論壇レビュー(2022年3月・4月合併号)

2022年4月30日

API 研究主幹、慶應義塾大学法学部教授、ケンブリッジ大学ダウニング・カレッジ訪問研究員 細谷雄一

画像提供:Ukrainian presidential press service/AFP/アフロ

1.ウクライナ戦争をめぐる中国の動き

ウクライナの戦争は長期化の兆候を示しており、ロシアの侵攻開始直後に想定されていたような短期でのロシアの勝利、そして占領は実現しなかった。ウラジーミル・プーチン大統領は、第二次世界大戦の対独戦勝記念日の「5月9日」を、自らが勝利を宣言する日として設定している。それへ向けてマリウポリなど東部の主要都市への攻撃が激しさを増している。

すでにロシア政府はこの戦争により、厳しい経済制裁の中で膨大な額の戦費と、想定外のロシア側戦死者という巨大な負債を背負っている。戦争継続は、中国がどの程度ロシアを支援するか、あるいはどの程度ロシアから距離を置くかによって大きく左右されるだろう。そのため、最近の論壇では中ロ関係やウクライナ戦争をめぐる中国政府の動向に注目が集まっている。

■「友情」がレアルポリティークの領域に適用されるとは限らない
例えば、著名な冷戦史家でイエール大学歴史学部教授のO・A・ウェスタッドは、歴史的に回顧しても中ロが一枚岩となる可能性は低いと論じ、戦争初期の協力にも拘わらずいずれ亀裂が走るシナリオを示している(1-①)。何よりも、中ロ両国とも、国内政治の力学によって外交が規定されている。歴史家のウェスタッドは、現在の中ロ関係が20世紀初頭の独墺関係に似ていると論じる。すなわち、衰退するオーストリア帝国(現在のロシア)が、台頭国のドイツ帝国(現在の中国)を意図せぬかたちで戦争へと巻き込んだというパターンと同様の動きが見られ、それを中国は回避するべきだと論じている。西側諸国に可能なことは、中ロ間の亀裂を深めることぐらいだ。冷戦期の中ロ関係を専門としてきたウェスタッドだけあり、鋭い指摘である。

モスクワ国際関係研究所上席研究フェローで、中ロ関係が専門のイゴール・デニソフも同様に、中ロがつねに一体となって行動するわけではなく、ウクライナ問題に対する両国の姿勢の違いが浮き彫りになっていると指摘する(1-②)。2月4日のプーチン大統領による北京訪問の際に発表された中ロ首脳会談の共同声明は、両国間の「友情に限界はない」と述べた。だが、共同声明で記されているような、両国が緊密な提携をする対象としての「共同隣接地域」は中央アジアを指しており、ウクライナはその地域に含まれない。また「限界がない」のはあくまで友情の領域であり、必ずしもそれがレアルポリティークの領域で常に適用されるわけではない。アメリカとの戦略的対立にまでこの「友情」が発展すれば両国の提携は強まるだろうが、地域紛争での提携にとどまる限りでは必ずしも両国が思考や行動を一致させるとは限らない、とする。

■「ロシアと一体」視されることへの躊躇
それでは中国政府は、ウクライナ戦争をめぐるロシアとの関係をどのように位置づけているのか。ワシントンに駐在する秦剛駐米大使は、中国政府が事前にこの戦争について知っていたということも、水面下でロシアの軍事攻撃を支援しているというのも、いずれも「デマ」であると退ける(1-③)。もしも実際に戦争が勃発する危機にあると認識していれば、中国政府は開戦を阻止するために全力を尽くしたであろう。中国の姿勢は客観的かつ公平であり、国連憲章の目的と原則は徹底して遵守されるべきだと考えており、ウクライナを含むすべての国家の主権と領土の一体性は尊重されるべきだと論陣を張った。中国もまた台湾問題を抱えており、その独立を阻止するためにも、「主権と領土の一体性」を強調することで、台湾の独立に向けた動きやそれを支援するアメリカの動きを牽制する意向なのだろう。

同様に、复旦大学国際問題研究院研究員の赵明昊は、ロシアによるウクライナへの侵攻は「戦略的意外(strategic surprise)」であったと論じる(1-④)。中国は平和を求めていて、戦争には反対していた。そのような戦争の勃発は、中国が意図したものでもなければ、中国により制御可能なものでもなかった。平和が深刻な挑戦に直面している今こそ、中国とアメリカが平和を回復するために重大な責任を負っていると述べている。

このような主張は必ずしも額面通りに受け止めることはできず、戦争回避の努力をしなかったという中国に対する国際社会からの批判を回避する目的での発信とも理解できる。ただし、いずれにせよ、ロシアの侵略的行動と完全に一体として見られることに対して中国政府内で躊躇が見られることは明らかである。プーチン大統領が当初望んでいた、数日でキーウを陥落できるという楽観的な見通しの通りに事が進行しなかったことも、おそらくは中国共産党首脳にとって意外な展開であったのであろう。

他方で、中国の『環球時報』の英字紙でもある、『グローバル・タイムズ』のコメンテーターの胡錫進によれば、中国国民はこのウクライナ戦争の推移や、経済制裁の影響を慎重に注視しているという(1-⑤)。まさにこのロシアによる戦争を「試金石」として、そのインプリケーションが今後の国際情勢にも大きな影響を与えると認識している。中国から見ても、この戦争の推移によって中国の台湾に対する政策や対米関係における基本的な態度に大きな影響が及ぶと見ているのだろう。だとすれば、ロシアによるウクライナへの侵攻に関して、最初から中国政府の基本的立場が固定されていたわけではなく、戦局の推移に応じて柔軟に中国の態度が変わっていくことが推察できる。

中国社会科学院ロシア東欧中央アジア研究所研究員の肖斌も同様に、ウクライナ戦争で中国がロシアにあまりにも近い立場に立つことを牽制する論考を発表している(1-⑥)。そこでは、中国独自の平和外交を進めていく必要性が説かれており、ロシアとの友好関係を維持することでそのような中国の平和外交を損なうべきではないと論じている。また、ウクライナ戦争後の国際秩序についても言及しており、これからの世界は「冷たい平和」、あるいは元の「不穏な平和」に回帰することになると論じる。ウクライナ戦争が中国の対外関係、とりわけ中ロ関係に巨大な影響を及ぼすことを想定するとともに、依然としてアメリカとの関係については抜本的改善の可能性は低いとみていることが分かる。

ウクライナ戦争でロシアがその軍事力と経済力を疲弊させ、さらに国際社会での孤立を深めるなかで、よりいっそう中国への依存が強まることは自明といえる。ロンドン大学キングス・カレッジのアレッシオ・パタラーノ教授は、この戦争を通じて両国の紐帯がよりいっそう強靱なものになることに注目した(1-⑦)。そのことは、2月4日の中ロ両国の共同声明に示されている通りだ。ロシアがよりいっそう中国への依存を高めるということは、中国が自国にとって好ましい国際秩序を打ち立てていく上で、ロシアを利用することが可能となることを意味する。中国には、その長期的な戦略目標を実現する上で、ロシアを都合の良いパートナーとして利用できるというような発想も垣間見られる。

それでは戦争終結へと進む上で、中国自らはどのような役割を担うべきだと考えているのだろうか。中国の研究機関の全球化智庫理事長で、国務院顧問も務めた経歴を持つ王輝耀は、ロシアのみではなくウクライナや西側諸国との結びつきも強い中国にとって戦争の継続は望ましくなく、むしろ停戦へ向けて仲介できる地位にあると論じた(1-⑧)。中国はロシアとウクライナの両国にとっての最大の貿易相手国だ。王は、そのような立場を活用して戦争終結への「出口戦略」を提示できるはずであり、世界の中で中国ほど停戦へ向けて重要な位置にある大国はないと論じる。今後の中国の行動が注目される。

2.アメリカはどのような戦略を選択するべきか

ウクライナ戦争では、はたしてどのような戦略を選択することが最適であるのか。このような難しい問題が、アメリカ政府には突きつけられている。それをめぐって、さまざまな議論が展開されている。

■朝鮮戦争のアナロジーとして捉える視線
オバマ政権下で2009年から4年間、NATO(北大西洋条約機構)大使を務めたアイヴォ・ダールダーは、冷戦時代にソ連に対して成功を収めた「封じ込め戦略」を現在のロシアに対して実施するべきだと主張する(2-①)。21世紀版の「封じ込め戦略」は、次のような3つの要素から成り立つ。第一にはロシアに対して十分な抑止力を構築することであり、第二には国際社会が結束してより多くの諸国が対ロシアの経済制裁を行うことであり、第三にはロシア経済を世界経済から切り離してデカップリングを進めることである。このようにしてロシアを封じ込めて、さらにグローバルなレベルでは中国との競争に勝利することが、アメリカに求められていることであると言う。

アメリカの戦略として現在、繰り返し問われているのが、国力に制約があるアメリカが欧州とアジアという2つの地域のいずれを優先するべきか、である。

これまでアメリカの戦略について積極的に発信してきたジョンズ・ホプキンス大学のハル・ブランズは、ロシアがもたらす脅威は中国がもたらすより大きな脅威の一部となっており、その両者が不可分に結びついていると論じる(2-②)。したがってブランズは、現在アメリカが中国と対立関係にあるのであれば、中国と一体となったロシアを打倒して勝利を収めることが必要だという。そのような中ロを一体とみなす議論は、戦争勃発当初から見られた。例えば、ジョージタウン大学教授のマシュー・クローニグは、アメリカがヨーロッパとアジアとのいずれを戦略的に優先するべきかという問いに対して、その双方との戦争を想定する必要があると論じている(2-③)。この両者を切り離すことができないからだ。

またハル・ブランズは、マイケル・ベックリーとの共同執筆論文の中で今回のウクライナ戦争を朝鮮戦争のアナロジーとして捉えており、民主主義諸国が結束して対応するべきだと論じる(2-④)。朝鮮戦争の際には、北朝鮮の侵略を韓国に対する侵略と限定するのではなく、自由世界全体に対する攻撃として捉えた。それゆえその対応も、西側世界全体として行った。同様にして今回も、ロシアによるウクライナ侵略に対し国際社会全体として対応することが重要だ。また、経済制裁やサプライチェーンの再編などを通じて、戦略的枠組みを再構築することの重要性を指摘する。そして最後に、アメリカは直接的な軍事介入を避けて、あくまでもアメリカが軍事力行使をする優先順位を考慮する必要がある。これらに見られるように、ブランズはあくまでもグローバルな視野からロシアや中国の軍事行動に対抗する民主主義勢力の結集の重要性を強調する。

■グローバルな「新冷戦」を戦う国力はあるのか
他方で、アメリカがどの程度の実質的、実効的にウクライナ戦争への対応ができているのかという問題もまた、冷静に論じられるべきであろう。

共和党下院議員で下院軍事委員会に所属するマイク・ギャラハーは、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙に寄せたコラムの中で、バイデン政権下で起草され、最近発表された国家防衛戦略(NDS)でも中核に位置づけられた「統合抑止」について、批判している(2-⑤)。ギャラハーによれば、抑止が成功するかどうかはアメリカが十分な軍事力を整備し、それを使用する意思があると相手国が評価したときに決まる。ところが、バイデン政権における統合抑止は、軍事力を強化せずにその行使を回避することを正当化するために用いられている理論であって、従来の拒否的抑止の放棄ともいえる。ギャラハーは、そのような統合抑止が機能しなかった実際の帰結が、ロシアのウクライナ侵略であると批判する。

実際に昨年夏の米軍のカブール撤退に際しての混乱に見られたように、ジョー・バイデン大統領は軍事力の行使に強い抵抗感を示し、また軍事力以外の手段を用いて安全保障問題を解決することを好む傾向がある。ギャラハーが示すこのような懸念と批判は、共和党内の安全保障や軍事問題に精通した多くの議員や専門家に共有されているものといえるだろう。

そのような共和党内のリアリストたちからの批判に加えて、軍事介入を嫌い、不介入主義を好む傾向が見られる論者からも、バイデン政権の外交に対する要望が示されている。

クインジー研究所の共同創設者であり、現在はカーネギー国際平和財団に所属するスティーブン・ワーサイムは、ウクライナ戦争からアメリカは距離を置くこと、そしてロシアや中国との「新冷戦」を戦わないことを要求する(2-⑥)。ウクライナで見られるロシア軍によって引き起こされた人道危機と、アメリカに対する安全保障上の脅威とは、異なる性質のものである。そしてワーサイムは、ハル・ブランズやマイク・ベックリーが、ロシアと中国の双方を封じ込めるべきだと論じていることを批判する。ロシアが本当にヨーロッパにとっての脅威かどうかは断定できず、またこの2つの大国を封じ込めるための十分な国力がアメリカにあるわけでもないし、そのための国民の支持があるわけでもない。グローバルな「新冷戦」は、アメリカにとってあまりにハイ・コストであり、ハイ・リスクである。アメリカの国力をそのために浪費するべきではないと論じ、むしろアメリカはより優先順位の高い課題に取り組むべきだと述べる。

ワーサイムと同様の主張をして、アメリカがウクライナ戦争へと深く関与することへの警鐘を鳴らすのが、ハーバード大学教授で著名な国際政治学者であるスティーブン・ウォルトである(2-⑦)。ウォルトは、「ヨーロッパの安全保障をヨーロッパ人に委ねよ」と題する論考の中で、ヨーロッパが自らの手で、ロシアの脅威に対応できるようにすることが重要だと述べる。人口や防衛費などの面でも、NATOの欧州加盟諸国には自らでロシアに対抗する潜在的な力が十分備わっている。ウォルトは、アメリカが今後も中国との競争に勝利するために、アジアに目を向けることが重要だと論じる。

中山俊宏慶應義塾大学教授は、ウォルトも論考を寄せている上記の『フォーリン・ポリシー』誌のウクライナ戦争特集の中で、アメリカが中国へと戦略的な焦点を定めることが重要だと述べ、アメリカの国力を考えるとウクライナ戦争への関与が可能な範囲は限定的であると述べる(2-⑧)。確かにアメリカは、ヨーロッパとインド太平洋との双方で深く関与するための十分な国力を有してはいない。それゆえ、ロシアによる現状変更の試みに対して、これからはよりいっそう欧州諸国が自らの力で対応することが重要であり、インド太平洋でもアメリカの同盟国やパートナー諸国の自助努力が重要となるだろう。ただしウォルトよりも中山の方が、アメリカが国際的な責任を果たす必要性については前向きな姿勢がうかがえる。

このように、アメリカ国内ではバイデン政権のウクライナ戦争に対する政策についてさまざまな見解が見られるが、中国のメディアはアメリカの政策を厳しく批判し、戦争勃発に対して、そして戦争がなかなか終結に至らない上でのアメリカの責任を強調するような論考を数多く掲載している。『環球時報』紙の社説では、アメリカが武器売却により利益を得るためにあえて戦争を引き延ばしているとして、その責任をアメリカに押しつけている(2-⑨)。同社説は、ワシントンが戦争を最大限に利用して、そこから地政学的な利益を得ようと戦争終結を阻害していると批判した。「民主主義同盟」といった美辞麗句を用いて、国際社会の「特権階級クラブ」の「会員証」を与えようとするアメリカの手口はヤクザのそれと同じである。アメリカは、武器売却のような自国利益を最優先することで、戦争終結を妨げている、とする。それはいわば、戦争終結のため、ロシア政府へ十分な働きかけをしようとしない中国に向けられた批判をかわそうという試みともいえる。

3.拡大するロシアの軍事行動への不安

■「中国とともに世界を先導する」との意識
そもそもなぜロシアは、自らの国際的孤立を招くことになるようなウクライナへの軍事侵攻を決断したのであろうか。カーネギー国際平和財団のモスクワセンター上席研究員のアレクサンドル・ガブエフは、2014年のクリミア危機が大きな転換点であったと、以下のように説明する(3-①)。

ロシアは、2014年にウクライナ領であったクリミアを併合した。それによって国際的な非難を受け、孤立を招く結果となった。だが、そのような孤立に耐え忍んできたことで、皮肉にもむしろ国際社会から切り離されてもある程度機能する自立的な経済が確立された。また、現在のクレムリンを動かしているのが、プーチン大統領の長年の側近である諜報部門出身者たちであり、彼らは対外強硬路線に傾斜する傾向が見られる。彼らの多くが、アメリカが主導する西側民主主義諸国は、様々な失敗や挫折を続け、多文化主義や少数民族保護によって国内社会の混乱が極まっていると認識している。むしろ、伝統的な価値を重視する権威主義体制へとパワー・シフトが続き、世界は多極化に向かっていると確信する。そのような多極的な世界秩序の中で、活力があるロシアこそが中国とともに世界を先導するはずだと確信しているである。

ガブエフは、すでに8年間続いてきた経済制裁によって、ロシアの政治指導部は自国が経済制裁に耐えうる強靱な体制を確立したと認識しており、皮肉にもそのことが今回のような冒険主義的な決断を促し、国際的孤立を怖れぬ態度に帰結したと論じる。ちなみに、ロシア政府はウクライナ戦争の勃発後にカーネギー・モスクワセンターの閉鎖を決定し、ガブエフもそこを離れることになった。これによって、西側世界とロシアの国際政治の専門家を繋ぐ重要な橋渡しの場が失われることになるだろう。

冷戦終結後の米ロ関係についての優れた著書を刊行したメアリー・イリース・サロッティ・ハーバード大学歴史学部教授は『ニューヨーク・タイムズ』紙への寄稿文の中で、冷戦終結後の比較的調和的な時代が終わりを告げ、これからは恐ろしい時代に突入すると論じている(3-②)。

サロッティは、ロシアのウクライナ侵略によって幕を開けたこの「新しい冷戦」の時代は、かつての冷戦よりもひどい時代になるであろうと予想する。現在の米ロ関係では、依然として膨大な核弾頭を両国が保持しながら、かつての冷戦時代とは異なり両国間でのコミュニケーションや、相互の暗黙の了解が成立していない。また冷戦時代とは異なり、核戦争に対する恐怖感も薄れている。それゆえサロッティは歴史家として、冷戦終結からコロナ禍に至るまでの時代が比較的幸福な時代であり、またかつての冷戦時代を懐かしむような恐怖の時代に入りつつあると、これからの世界を悲観する。

■「バルト三国への侵攻」の脅威
かつて米ブッシュ政権において影響力を有していたネオコンの理論的支柱の一人であったロバート・ケーガンもまた、これからの世界の趨勢についてきわめて悲観的なシナリオを描いている(3-③)。

ケーガンは、ロシアがウクライナ侵攻の作戦を完遂すれば、ポーランドやスロバキア、ハンガリーにおいて新たな緊張が生まれると論じる。そこでは、東欧諸国での防衛態勢を強化するNATOと、ウクライナを自らの軍事的支配下に収めたロシアが直接対峙する構図が誕生し、さらにはバルト三国が次の最も差し迫った脅威を感じることになる。また中国はそのような新しい国際情勢の下で、南シナ海や台湾で既存の秩序を破壊して、新たな挑発を行うことが可能になるであろう。ロシアは東欧でより広範に支配地域を広げ、中国は東アジアと西太平洋を実質的に支配する世界を思い描く必要がある。ケーガンによれば、戦争がウクライナの国境の内側にとどまると考えるのは、あまりにも希望的な憶測である。これからの時代の世界地図では、ヨーロッパにおけるロシアの軍事力の再興と、アメリカの影響力の後退を前提とせねばならない。『ワシントン・ポスト』紙のコラムニストのマイケル・ガーソンもまた、プーチン大統領の戦争目的がヨーロッパを分断して、自らの勢力圏を確立することにあると論じている(3-④)。そして次の段階では、ロシアによるバルト三国侵攻を考慮に入れねばならないと警鐘を鳴らす。

ガーソンはこのエッセイの中で、アメリカの元駐ロ大使のアレキサンダー・バーシュボウによる、プーチンの目的とは「西側に圧力をかけ、ロシア以外の諸国の主権が制限されたロシアの勢力圏により分断されるヨーロッパの誕生、すなわち第二のヤルタ協定のようなものを受け入れさせること」だとのコメントを紹介した。ガーソンは、NATOがウクライナに対してより積極的な支援を提供することにより、ロシアを打倒しなければならないと論じる。そうしなければ、次にはバルト三国が標的になり、アメリカが本当にリトアニアのためにロシアと戦争をする覚悟があるのか、という同様の問いが繰り返されることになる。

同じように、エストニア大統領のアラー・カリスもまた『フィナンシャル・タイムズ』紙に寄稿して、NATOがよりいっそう東欧諸国でのプレゼンスを強化するべきだと、以下のように提言する(3-⑤)。

かつて1997年5月のNATO・ロシア基本文書では、NATOは東欧の新規加盟国にはNATO軍を常駐させないことを合意していた。しかしながら、ロシアが今回のウクライナ侵攻でNATOとの合意を一方的に破棄した以上、NATOもまたロシアに配慮をする必要がなくなった。西側諸国の抑止は、ウクライナで機能しなかった。それゆえ、NATOは将来の脅威に備えて、より強化された同盟を示さなければならない。そして、バルト三国やポーランドに対して「1センチ」でもロシア軍が侵攻した際には、それはドイツに対して、イギリスに対して、イタリアに対しての侵攻と同様のものとみなし、NATOによる強力な軍事的対応を示さなければならないとカリスは言う。

今回のロシアによるウクライナ侵攻がもたらした1つの明確な、そしてプーチン大統領が阻止しようとしたことでもある帰結は、NATO体制の強化、そしてロシアの近隣に位置する諸国の新規加盟となるであろう。ブルッキングス研究所の著名な安全保障政策の専門家であるマイケル・オハンロンは、NATOは東欧の前線での防衛態勢を強化する必要があると提唱する(3―⑥)。そして、ロシアによる次なる侵略を抑止し、阻止するためにも、バルト三国に米軍を常駐させる必要を説く。とりわけロシア語を母語とするロシア系少数民族が多く住むエストニアとラトビア東部では、NATOの軍事的介入に対する不安が広がっている。それゆえオハンロンは、NATOの防衛態勢を東欧諸国で強化なれればならないと主張する。

4.国際秩序は再編されるのか

■この戦争はどのような形で終わるのか
現在進行するこの戦争はどのように終結されるべきなのか。これは現在、繰り返し問われているもっとも切迫した問題でもある。

それに対して、オクスフォード大学歴史学部教授のティモシー・ガートン・アッシュは、しばらくは苦しい戦闘が続き厳しい妥協を強いられるだろうが、最終的には自由を守りウクライナがヨーロッパとの関係を強めて勝利を収めることが可能だと論じる(4-①)。確かに、「ウクライナのチャーチル」といえるウォロディミル・ゼレンスキー大統領がロシア軍を撤退させるという奇跡が起これば良いが、実際には「痛ましい膠着状態」が続くであろう。

ロシアとの戦争を戦ったフィンランドのように、主権を守ることができても領土の一部を失うという苦しい妥協が強いられるかもしれない。他方、復興計画が成功してヨーロッパと結びつくという展望が具体的に描ければ、ウクライナの人々は自らの犠牲が無駄ではなかったと感じられるはずだ。ウクライナ国民は、戦闘(battles)には負けても、最終的に戦争(war)には勝利したという歴史的な使命を感じられるかも知れないと、ガートン・アッシュは論じている。

アメリカのトランプ前政権で欧州・ユーラシア担当の国務次官補を務めたウェス・ミッチェルもまた、ガートン・アッシュと同様に、一定の妥協を伴う停戦が可能だとする提案を行っている(4-②)。

ミッチェルは、「ウクライナ中立化の場合について」と題する『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄せた論考の中で、激しさを増すウクライナ戦争の早期停戦を実現させるためには、ロシア軍の撤退と引き換えに、ウクライナの「要塞中立化(fortified neutrality)」という妥協案へと前進しなければならないという。この場合の「要塞中立化」とは、軍事的にはウクライナが自国で防衛態勢を確立するとともに、経済的および政治的には西側世界の一員としての展望を抱くことを意味する。それは1955年のオーストリア国家条約のように、ロシア軍の撤退を条件として、ウクライナが西側の集団防衛組織に参加しないことを約束するものである。

さらに重要なこととして、ミッチェルは領土の大部分をウクライナが保持することが不可欠だと指摘する。ロシアが獲得できるのは、戦前から支配していたクリミアと、東部のルハンスクおよびドネツクといった地域に限定される。クリミアをロシア領として認め、ルハンスクとドネツクでは自治権を与え、国連が実施する住民投票によって居住する人々の意向を確認することが必要となる。そのためには欧米からのウクライナに対する持続的な経済支援も不可欠だ。仮にプーチンが停戦合意を破ったとしても、ウクライナを軍事的に制圧するために必要な軍事力を有しない限り、最終的にはこのような「要塞中立化」を受け入れざるを得ないであろうと言うのである。

■パーソンとマクフォールの共同論文が提示した重要な分析
そもそも、プーチンはなぜ戦争を開始したのか。プーチンは何を恐れ、何を求めていたのだろうか。米陸軍士官学校准教授のロバート・パーソンと元駐ロ大使のマイケル・マクフォールは、プーチンがウクライナに軍事侵攻を行った目的はNATO拡大を阻止することではなく、同国への民主主義の拡大を防ぐことであったと論じる(4-③)。

この共同執筆論文は、広く注目されることになった。国際政治学者のジョン・ミアシャイマーは2014年に、「ウクライナ危機は西側の責任だ」と題する論文を発表して注目を集めたが、ロシアを熟知するこの2人はそのような議論に反論し、NATO拡大がロシアに脅威をもたらしたわけでも、西側諸国とロシアとの間に緊張をもたらしたわけでもないと論じる。仮に、NATOが拡大を停止すると宣言しても、それによってロシアの脅威が自動的に消滅するわけではない。実際に、1997年のロシア・NATO基本文書では、ボリス・エリツィン元大統領はNATOとの協力のメカニズムを賞賛して、2000年にはプーチン大統領自らがロシアのNATO加盟に言及していた。その後、9・11テロの後には「対テロ戦争」で、イスラム過激主義という共通の敵を前にして、ロシアはNATOとの協力を惜しまなかった。2014年のロシアによるクリミア半島併合までNATO諸国は軍事費を削減し続けていたのに、ロシアが軍事的増強を続けていたのはNATO拡大という理由だけでは説明できない。

ロシアにとって最も脅威となったのは、「アメリカの支援を受けていた」とロシア側が説明する一連の「カラー革命」であり、とりわけ2004年のオレンジ革命によってかつての旧ソ連圏に民主主義の波が襲ってきたことであった。それは、旧ソ連圏でロシアの勢力圏を再確立しようとするプーチンの構想の足元を揺るがすものであった。また、ロシアと文化的および宗教的に近いウクライナ人が自由のために立ち上がるのであれば、どうしてロシアでも同じような民主化が起きないと言えようか。プーチンは民主化されたウクライナを何よりも怖れており、これこそが今回のロシアによるウクライナ侵攻のプーチンの本当の理由である。プーチンの長期的な戦略目標が、ウクライナや旧ソ連圏地域での民主化の拡大阻止にあることは明白だ、とパーソンとマクフォールは論じる。傾聴に値する鋭い分析である。

■ロシアが勝った場合の国際秩序/負けた場合の国際秩序
それでは、はたしてこの戦争は、これからの国際秩序にどのような影響を及ぼすのであろうか。それによって、ヨーロッパの安全保障秩序はどのように再編されるのであろうか。それについても、多様な論考が見られた。

コラムニストのデイヴィッド・イグネイシャスは、戦争勃発の直後に『ワシントン・ポスト』紙に寄せた論考の中で、この侵攻作戦をロシアが成功させるかどうかで、ポスト冷戦時代後の新秩序がどのように構築されるかが決定すると論じる(4-④)。

プーチン大統領によるウクライナ侵攻は、ポスト冷戦時代という1つの時代の終わりを告げることになった。ロシアによって引き起こされた軍事行動の帰結によって、新秩序の在り方は大きく規定される。今回の戦争は、第一次世界大戦勃発のように偶然や漂流によって各国の意図に反して起こってしまったものではなく、第二次世界大戦勃発のようにある特定の指導者の計画と、偏執的な構想によって進められたものであった。だとすればその指導者、すなわちプーチンの計画に基づいて戦争は進行するはずだ。プーチンは、「ウクライナは真の国家ではない」という自らのレトリックを信奉している。そのような自己陶酔は往々にして、挫折に帰結するであろう。ただし、もしもプーチンが勝利を収めれば、新秩序は極めて危険なものになるとイグネイシャスはいう。

アメリカのシンクタンク、ジャーマン・マーシャル基金の研究者、リアナ・フィックスとマイケル・キメージは、『フォーリン・アフェアーズ』誌に連続して ウクライナ戦争の今後を展望する論考を寄せている。

まず、「もしロシアが勝ったら?―ロシアが支配するウクライナはヨーロッパを大きく変化させる」と題する論考では、ロシアが勝利するシナリオを以下のように想定する(4-⑤)。

すなわち、今後長期にわたりロシアと米欧諸国が経済戦争に突入することになり、またEU(欧州連合)とNATOは劣勢に立たされ防御的な立場に追いやられるであろう。NATOは加盟国の東欧諸国にNATO軍を常駐させることになり、軍事的にはロシアと西側諸国の間で冷戦となり経済的には熱戦となる。ロシアが勝利すれば、侵略戦争により利益が得られることが明らかとなり、「力こそ正義」という価値が広がることになるだろう。仮にウクライナが占領されたとしても、その戦後の秩序に欧米諸国が影響力を浸透させることも可能だ。この論考は戦争勃発後の長期的なシナリオを想定したものとして、この期間に同誌で最も注目され閲覧された論考となった。

これに続けて2人が寄せた「もしロシアが負けたら?―モスクワの敗北は西側の明確な勝利にはならない」と題する論考もまた同様に、広く注目された(4-⑥)。そのシナリオは次のようなものになる。

仮にプーチンが戦闘で勝利を収め傀儡政権を成立させても、それ対してロシアは大きな代償を支払わねばならない。また、それを長期間にわたって維持することも困難で、西側諸国による経済制裁は長期的にロシアを弱体化させてロシア国内での国民の反発も強まるであろう。仮にロシアがウクライナから撤退した場合、西側諸国はウクライナに巨大な復興支援を行う必要がある。仮にプーチンが失脚しても、ロシアが直ちに民主化することは考えがたく、またロシアはよりいっそう中国に依存して中ロが一体となるブロックが誕生するであろう。フォックスとキメージは、ロシアが負けることは勝つことよりも望ましいとは言え、それは必ずしも西側にとって好ましい結果になることを意味しないと警鐘を鳴らす。バランスのとれた見通しと言えるであろう。

5. ヨーロッパの役割の拡大

■ヨーロッパの「地政学的な覚醒」を左右するドイツ
ウクライナ戦争によって、ヨーロッパの安全保障秩序も巨大な影響を受けることになる。具体的にどのような変化が見られるようになるのだろうか。

ドイツのシンクタンク、独外交政策協会(DGAP)の複数の研究員によりまとめられた論考では、今回のウクライナ戦争が欧州安全保障秩序の「転換点」になり、巨大な地殻変動をもたらすと論じる(5-①)。その場合にこれからヨーロッパがロシアに対して、「対立」、「共存」、「協力」という3つの選択肢が考えられると論じる。

他方で、今後のヨーロッパの安全保障政策を考える上で、「強いヨーロッパ」を前提に考えていかなければならなくなるだろう。またそれを実現するためには、アメリカ、カナダ、日本、オーストラリアなど、民主主義や自由、法の支配というような価値を共有するパートナーが不可欠となる。欧州の安全保障秩序や、ドイツの安全保障政策が本当に「転換」していくのかどうかは、今後数年間でどの程度、ヨーロッパが自己決定権を確立できるかによる、と論じる。

ジャーマン・マーシャル基金のフェローであるアレクサンドラ・デ・ホープスケファーとゲシーヌ・ウェバーの2人は、「平和プロジェクト」としてのEUの将来像にとって、今回のウクライナ戦争が「地政学的な覚醒」の契機になるとして、以下のように論じている(5-②)。

EUはいまや、地政学上のチェスボードの重要な安全保障アクターとなった。EU加盟各国は防衛費を増額し、EUは通常型およびハイブリッド型の脅威に対応できるよう強化しつつある。また同時に、アメリカは自国が直接ヨーロッパの安全保障問題に関与するよりも、むしろヨーロッパのパートナー諸国自らの責任を持った対応を求めている。こうしたことが、ウクライナ戦争によって明らかになったと言うのである。

またアレクサンドラ・デ・ホープスケファーは、フランスの『ルモンド』紙に寄せた論考では、今回のウクライナ戦争でNATOは「集団防衛」へ原点回帰し、近年EUが目指していたような「戦略的自律」の志向性は遠のくだろうとも述べている。EUが独自の防衛産業を育成することも、優先順位が低下するだろう。この戦争でヨーロッパが「バランシング」を実行するのは難しく、その役割はトルコやイスラエル、中国が担うことになるとする(5-③)。

ヨーロッパの安全保障秩序が「転換」して、より自律的なアクターとして「地政学的な覚醒」を起こす中で、最も重要な役割を担うのはドイツであろう。

そのドイツの元駐米大使および駐英大使を務め、現在はミュンヘン安全保障会議の議長を務めるウォルフガング・イッシンガーは、2月27日にオラフ・ショルツ首相が行った新しい政策の発表が、戦後ドイツで「神聖視」されてきたこれまでの考え方を覆す歴史的な決断であったと高く評価する(5-④)。

実際、ドイツ統一が達成されてからは「これ以上の変化は望まない」というのがドイツ国民の一般的な考え方であった。そのような長い間固定されてきたドイツにおける基本的な対外態度が、ウクライナ戦争という危機に直面する中で鮮やかに転換しつつある。

同様に、欧州外交評議会(ECFR)のフェローであるジョナサン・ハッケンブロイクとマーク・レナードは、これまでパワー・ポリティクスを正面から取り入れた歴史を持たないドイツが、新しい政策を展開している様子を説明している(5-⑤)。

これまでは経済利益を優先し、安全保障面ではフリーライダーであったドイツは、そのような平和の追求、そして規範とルールの維持を求める従来の立場を転換する。おそらく、これまでとは異なるアプローチでその目標を実現しようとするであろう。ドイツが歴史的な桎梏から解放され、これまでの戦後外交の歩みに忠実であろうとすれば、逆説的に新たな変化を続けるしかない。その結果、われわれは「地政学的なドイツの誕生」を目撃することになるであろうと言うのである。

■仏大統領選で戦争に論点集中は「民主主義に負の影響」とも
他方でフランスでは今年は大統領選挙が行われる年にあたり、4月10日に第1回投票が行われた。現職で中道左派のエマニュエル・マクロン大統領と、極右政党国民連合の党首マリーヌ・ルペンが上位の2人となり、決選投票に進むことになった。ルペン候補は、父親で国民戦線の創始者ジャン=マリー・ルペンとの差別化を図り、中道路線を志向してより幅広い国民からの支持を得て大統領を目指している。

『フィガロ』紙とのインタビューにおいて、ルペン候補はウクライナ戦争についての意見を訊かれ、「非武装の民間人の虐殺は戦争犯罪だ」と述べ、「ウクライナの人々との連帯と難民を迎え入れたいという気持ち」を伝えている(5-⑥)。

もともとプーチン大統領との近い関係を批判されてきたルペン候補だが、可能な限り大統領選挙の過程ではロシアを批判して、そのようなイメージを払拭しようと努めている。

このフランス大統領選について、『ルモンド』紙におけるアントワーヌ・ブリスティエールとトリスタン・ゲラというグルノーブル政治学院で教鞭を執る2人の政治学者の論考は、戦争によって5年に一度の大統領選挙が低調となり、現職のマクロン大統領の下に支持が結集することが長期的にフランスの民主主義に負の影響を及ぼすと警鐘を鳴らす(5-⑦)。その理由は、本来であれば国民的な討議や活発な論争が行われなければならない大統領選挙で、人々の関心がウクライナ戦争の帰趨に向かい、成熟したディベートが行われなくなったからだと言う。その結果、マクロン大統領は決選投票で勝利を収めて再選を実現した。ウクライナ戦争の停戦やその後のヨーロッパの戦略的自律を考える上で、再選を経たマクロンはさらに重要な役割を担うかもしれない。

『ルモンド』紙では、ヨーロッパにおけるエネルギー政策の観点からも、ウクライナ戦争によって「新しい時代」がもたらされると論じている(5-⑧)。たとえば欧州委員会も、2022年中にロシアからの天然ガス輸入の3分の2を 減らし、2027年までには依存を完全に脱するという方向を示している。エネルギー面でのロシアへの過度な依存こそが、これまでのロシアへの宥和政策に帰結したという反省がヨーロッパでは広く見られる。そして、原子力エネルギーの割合が大きく、ドイツほどエネルギーでのロシア依存が大きくはないフランスから、ロシアの天然資源に過度に依存した従来の政策を転換する必要が説かれているのは興味深い。

■エネルギー「脱ロシア」の必要性について広がる認識
ロシアに対する経済制裁をより実効的なものとするためには、欧州諸国がエネルギー面でのロシア依存を脱却しなければならない。このことは、ようやく欧州諸国内で広く認識されるようになった。たとえば、フランスの元首相のフランソワ・オランドは、「プーチンを止めるには、プーチンからガスを買うのをやめるべきだ」と題する論考を『ルモンド』紙に掲載している(5-⑨)。

オランドは、プーチンが欧州諸国に圧力をかけ脅し続ける現状のなかで、化石燃料への依存を減らして原子力発電を活用することが、ロシアからの影響を被る領域の縮小につながる。ロシアの天然ガスへの依存度が低いフランスこそが、ロシアへの政策で主導権を握ることができると論じている。

欧州諸国のエネルギー面でのロシアへの依存を減らしていくことは、国際経済の構造を大きく転換することへと繋がるであろう。アメリカのピーターソン国際研究所の所長であるアダム・ポーゼンは、「グローバリゼーションの終焉?」と題する『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄せた論考の中で、ウクライナ侵攻の影響から国際経済は大きく転換し従来のグローバル経済が弱体化していくと予測する(5-⑩)。その結果として世界経済は、中国中心のブロック、アメリカ中心のブロック、そしてそれと半分は重なっている欧州のブロックという3つのブロックへと分裂していくであろう。経済のグローバル化を完全に止めることはできないとはいえ、民主主義諸国間での連携を強めていくことで死活的に重要な利益を守ることができるであろうと見ているのだ。

このように、ロシアによるウクライナの侵略は、ヨーロッパの秩序を経済面、軍事面、政治面で大きく変容させていくだろう。そして、冷戦時代にヨーロッパが米ソ対立の舞台になったときとは異なり、ヨーロッパはより大きな役割を担い、より自律的な決定を行うことが重要となっていく。

6.ウクライナ戦争と米中関係

■注意深く見つめる中国
ロシアによるウクライナ侵攻の開始によって、中国が台湾へと侵攻するのではないかという懸念が広がっている。アトランティック・カウンシルの中国専門家であるマイケル・シューマンは、「次は台湾か?」と題する論考のなかで、中国が台湾を武力で統一する可能性を示唆している(6-①)。そこでは、民主主義諸国の影響力が後退する一方、権威主義諸国の主張が強まり、そのような有利な情勢の中で中国による台湾侵攻の可能性が高まっているとみるべきだと論じられる。

とはいえ、世界的に著名な中国専門家の多くは、そのような中国による台湾の武力統一の可能性はそれほど大きくはないと見積もっている。たとえば、ジャーマン・マーシャル基金のボニー・グレイザーと東吳大学助教の陳方隅は、インタビュー記事の中で、「台湾の状況は全く違うであろう。中国が台湾に侵攻した場合は、アメリカは軍事介入を行う可能性が高い」と述べ、短期的には台湾海峡で危機が勃発する可能性は高くないことを示唆している(6-②)。

また、昨年台湾問題について論じた論考が注目されたオリアナ・スカイラ-・マストロも、ウクライナ侵攻は中国による台湾侵攻の可能性を大きく高めることはないと論じている(6-③)。

同時に、中国はウクライナ戦争の推移を注意深く見つめており、戦争の帰趨が中国の将来の行動を大きく左右するのも事実であろう。

トマス・コーベットとマ・シュー、ピーター・シンガーは、アメリカの防衛・安全保障関連メディア『ディフェンス・ワン』に寄せた共同執筆論文で、軍事力の近代化を進めた中国の人民解放軍が、「特別軍事作戦」がうまく機能してないロシアの軍事行動や、ロシアが情報空間での優位性を確保できていないこと、SWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシアの排除を含めた経済制裁の効果などを、自らの問題として観察していると分析する(6-④)。そのようなウクライナ戦争の現実は、台湾侵攻をオプションの1つとする中国政府にとって、心理的および戦略的に重くのしかかっているであろう。

他方で、アメリカのランド研究所のジェフリー・ホーナンは、「ウクライナから台湾への教訓」と題する論考の中で、台湾有事の備えを進める上でのいくつかの示唆を述べている(6-⑤)。

ホーナンはまず、今回のロシアのウクライナ侵攻を事前にアメリカのインテリジェンスが把握し情報を開示していたように、中国の軍事行動の可能性についても十分にインテリジェンス能力を高めることが重要だと指摘する。また、台湾が効果的に抗戦するためには、残存性が高く比較的安価で入手しやすい兵器を大量に台湾に集積させておくことも求められる。さらに、今回ロシアに対して迅速な経済制裁を行ったように、中国に対しても同様に迅速な制裁が可能となるような準備が必要だ。中国が、ウクライナ戦争の推移から多くを学んでいるように、われわれもまた台湾防衛のためにウクライナ戦争から多くを学ぶ必要があると論じている。

■「台湾をめぐる米国の戦略的曖昧性」転換論を発表した安倍元首相
そのような危機感は、台湾の中でも共有されている。台湾の与党民進党系の『上報』紙では、大国による侵略行動を抑止するための戦争準備こそが、台湾の人々がウクライナ戦争から学ぶべきことだと論じられる(6-⑥)。台湾の中でも、ウクライナ戦争をめぐってのさまざまな主張が見られる。だが、侵略者と非侵略者の境界線を曖昧にして、侵略者の行動を正当化するような言論は、台湾にとって大きな問題である。

チェコ共和国のプラハに拠点を置く国際言論NPO『プロジェクト・シンジケート』に向けた安倍晋三元首相による論考、「台湾をめぐるアメリカの戦略的曖昧性は解消されなければならない」は、大きな反響を呼んだ(6-⑦)。

この論文で安倍元首相は、ウクライナ危機をふまえて、従来の戦略を転換して、アメリカは台湾防衛に対してより明確なコミットを示すときが来ていると主張する。アメリカの台湾関係法は「台湾を防衛する」と明言しない一方で、これまで保障 を行ってきた。この仕組みを変えなければならない。ウクライナとは異なり、中国が台湾に侵攻しても、中国はそれを自国領土の一部で起きた反政府活動の鎮圧に必要な行動であるとして、国際法には違反していないと主張することも可能である。

戦略的曖昧性はアメリカがそれを維持できるだけの圧倒的な力を持ち、中国が保持する軍事力と大きな格差がある場合にうまく機能してきた。だが、そのような時代は終わったのだ。アメリカの台湾に対する戦略的曖昧性は、アメリカの決意を中国に過小評価させ、台湾を不必要に不安定化させる。いまこそアメリカは、中国による侵略に対してアメリカが台湾を防衛することを明確に示すときである。安倍はこのように論じている。

とはいえ、中国が一方的にアメリカとの衝突を望んでいるわけでも、台湾への侵攻を不可避と考えているわけでもないであろう。むしろ、台湾の人々はウクライナへの侵攻 によって、中国による武力統一の危機は遠のいたと考える傾向も見られる。

また、中国内部からも、米中協力の必要性を指摘する声も再び聞こえるようになった。3月15日付の『環球時報』紙の社説においては、前日の14日にローマでジェイク・サリバン大統領補佐官と楊潔篪中国共産党政治局委員の会談が行われ、ホワイトハウスは「米中間でのオープンなコミュニケーション・チャンネルを維持する」意向を表明したとの言及があった(6-⑧)。対話を望むならアメリカは誠意ある態度を示せとの言葉も並んでいるが、米中協力の必要性を示唆する内容だ。中国はロシアに接近しながらも、同時にアメリカとの協力の可能性も考慮に入れていることがうかがえる。

7.アジアから見たウクライナ戦争

■インドにおける民主主義への懐疑
ウクライナ戦争の衝撃は、アジア諸国にも大きな衝撃を与えている。そのなかでも、インドがどのような位置に立ち、どのような対応をするかは、停戦後の世界情勢にも大きな影響を及ぼすであろう。なぜインドはアメリカやヨーロッパと同じ側に立ってロシアの侵略を非難することがないのであろうか。そして今後どのような動きを見せるようになるのだろうか。

2010年から14年までインドのマンモハン・シン首相(当時)の国家安全保障担当補佐官をしていたシブシャンカール・メノンは、ウクライナ戦争がアジアに及ぼす影響は限定的だと『フォーリン・アフェアーズ』誌で論じ、多くの民主主義諸国が必ずしもロシアに制裁しているわけではなく、批判すらしていない国も多い点を指摘する(7-①)。

メノンによれば、今回の戦争は民主主義体制対権威主義体制という国際秩序の再編を招くわけではなく、今後の国際秩序はあくまでもアジアにおいて決定されていくであろう。そもそもロシアとのかかわりが深いインドが、米欧と同様に行動することを期待するのは非現実的だ。したがってウクライナ戦争の国際秩序全体への影響は限定的であって、それを通じて民主主義が結集することを期待するべきではない。

おそらくはこれは、インドにおける現実的な見方を代表するものであり、そのような議論も考慮するべきであろう。

同様にロシア極東連邦大学で地域・国際関係学部副部長のアルチョム・ルーキンとインドの独立系シンクタンクでリサーチ・アナリストを務めるアディティア・パリークが『イーストアジア・フォーラム』誌に発表した共同執筆論文によれば、インドとロシアの関係は「特別で特権的な戦略的パートナーシップ」として位置づけられている(7-②)。両国は、ユーラシア大陸で多極的な秩序を求め、勢力均衡という基本原理を共有する。さらにインドは、装備の多くをロシアから輸入している。ロシア製の装備は、インドが中国と軍事的に対抗する際には不可欠だ。さらには、アメリカが主導する自由民主主義なイデオロギーに対して、インドはやや懐疑的な立場である。
このようにインドとロシアが歴史的にも深い繋がりを持つことは、十分に考慮に入れるべき要素である。

他方でそれとは異なる意見も見られる。『ディプロマット』誌の南アジア担当エディターのスダ・ラーマチャンドランは、ロシアが抱く安全保障上の懸念を理解しながらも、ウクライナの主権と領土の一体性を支持するような、より慎重で微妙な立場に立つべきだとする(7-③)。

昨年来ウクライナ情勢 をめぐって、インドはアメリカとロシアとの対立の中では慎重なバランスをとった立場を維持してきた。だが、この先に同様のアプローチを続けることはより難しくなり、そのような立場が長期的にインドの利益を傷つけることになるかも知れない。長年の友人であり装備の調達元であるロシアとの関係と、中国に対抗する上で協力が必要となるアメリカとの関係と、この両者の狭間にインドは立たされていると、ラーマチャンドランは指摘する。

『環球時報』紙の社説は、インドが民主主義諸国による制裁網に加わっていないことを強調して紹介し、そのようなインドのスタンスが民主主義の結束を破綻させるだろうと論じている(7-④)。

その要旨は以下のようになる。4月11日の米印オンライン首脳会談で誇示するように、アメリカ政府はインドと価値観や民主主義的な制度を共有していると主張する。ところが今回のウクライナ戦争は、アメリカとインドが異なる立場にあることを明らかにしている。アメリカがどれだけ米印の戦略的パートナーシップを強調して演出しても、そのような両国間の「巨大な軋轢」を覆い隠せるわけではない。クアッドの一員でありながらも対ロシア制裁に参加しなかったインドは、アメリカの戦略の綻びを露呈させ、アメリカの野望と一体化しているわけではない現実を示した。アメリカによる「民主主義陣営」の結束による制裁に「世界最大の民主主義国」であるインドが参加しないことは、アメリカの大きな不安の原因となっている。

したがって、この社説によれば、「民主主義と権威主義の対決」とラベルをはるアメリカの戦略がますます不可能となるであろう。

■韓国は保守・左派メディアとも「対ロ制裁参加」を強く支持
東南アジア諸国も今回の戦争を通じて、必ずしもアメリカと常に同調しているわけではない。中国国際問題研究院アジア太平洋研究所 副所長の杜兰は、ASEAN(東南アジア諸国連合)はウクライナ戦争後に戦略的自律を高めており、より中立的な立場を取っている現実を指摘する(7-⑤)。杜兰の主張は次のような内容だ。

ASEAN諸国の多くは、「反ロシア陣営」に参加するようにというアメリカからの圧力を受けながらも、屈することはなかった。伝統的にASEANは大国間でのバランスをとっており、またロシアとも協力関係を維持しようとしている。また、いわゆる「新冷戦」がアジア太平洋に波及することを、ASEAN諸国は危惧している。インドが中立的外交を展開するなかで、ASEANも戦略的自律を高めており、ASEAN共同体としての結束を強化して、地域経済としての一体性強化を加速していくであろう。

韓国は比較的早い段階から、ロシアに対する制裁を発動して、アメリカの行動に同調した。韓国の保守系の『中央日報』紙の2月25日付の社説では、韓国が対ロシア政策を発動するという国際社会の結束に参加したことを高く評価している。韓国政府はそのような制裁網に参加することで、「韓国は実質的なG10に加わった」と自画自賛する(7-⑥)。

またそのような立場は、左派系の『京郷新聞』の社説でも共有されている(7-⑦)。ここでは、世界を核戦争の恐怖に落ち入れたロシアに対して、韓国も国際社会と歩調を合わせる必要が指摘された。韓国政府の独自制裁は、事実上の輸出中断にも匹敵する。同時に、韓国の対外輸出全体においてロシアの割合は1.5%と限られており、韓国にとっての12番目の輸出相手国である。むしろ韓国は、ウクライナ市民への支援を重視するべきだと論じている。

とはいえ、4月11日に韓国の国会でウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がオンラインでの演説を行った際には、国会議員300名のうちで参加したのは60名程度であった。国会のがらんとした空席が、カメラに写されていた。そこには朴炳錫(パク・ビョンソク)国会議長の姿も見当たらなかった。『中央日報』の社説では、武器支援問題とは切り離して、ゼレンスキー大統領の訴えに耳を傾けて、自らにできることがなにかを真剣に検討するべきであったと批判し、「恥ずかしい外交」であったと論じている(7-⑧)。

韓国大統領選挙の結果は、保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)候補の勝利に終わった。北朝鮮がミサイル実験を行い、中国がロシアのウクライナ侵略を擁護するかのような立場を取る中で、韓国の有権者は自らが自由民主主義陣営の一員であることを強く感じた結果であるかもしれない。その新政権は、大統領職引き継ぎ委員会の人事において、外交安保分科会には李明博(イ・ミョンバク)政権で外交部次官を務めた金聖翰(キム・ソンハン)と元大統領府対外戦略企画官の金泰孝(キム・テヒョ)、元国防部合同参謀本部次長の李鐘燮(イ・ジョンソプ)を任命した。金聖翰氏と金泰孝氏は李明博政権時の外交ブレーンであり、保守系の『東亜日報』紙は、李明博政権時の「実用主義外交」の復活が予想されると論じる(7-⑨)。

民主主義陣営が結束を強める上で、韓国がアメリカや日本との関係を強化することは望ましい。韓国は、自らがアジアにおけるアメリカの重要な同盟国であり、自由民主主義陣営の一員であることをあらためて示すことになるであろう。

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【主な論文・記事】
1.ウクライナ戦争をめぐる中国の動き

Odd Arne Westad, “The Next Sino-Russian Split?(次なる中露の分裂?)”, Foreign Affairs, April 5, 2022, https://www.foreignaffairs.com/articles/east-asia/2022-04-05/next-sino-russian-split
Igor Denisov, “‘No Limits’? Understanding China’s Engagement With Russia on Ukraine(「限界はない」?ウクライナ問題での中国の対露関与を理解する)”, The Diplomat, March24, 2022, https://thediplomat.com/2022/03/no-limits-understanding-chinas-engagement-with-russia-on-ukraine/
Qin Gang, “Chinese ambassador: Where we stand on Ukraine(中国大使―ウクライナにおける我々の立ち位置)”, The Washington Post, March 15, 2022, https://www.washingtonpost.com/opinions/2022/03/15/china-ambassador-us-where-we-stand-in-ukraine/
赵明昊(Zhao Minghao)、「俄乌冲突与中美关系(ロシア・ウクライナ衝突と中米関係)」、『中美聚焦』、2022年3月22日、http://cn.chinausfocus.com/foreign-policy/20220322/42556.html
Hu Xijin “Chinese people keep ear to the ground during Russia-US showdown(中国人民は米露の対決を注視している)”, Global Times, March 4, 2022, https://www.globaltimes.cn/page/202203/1253893.shtml
肖斌(Xiao Bin)、「反思战争下的中俄关系(戦時下の中ロ関係を再考しよう)」、『中美聚焦』、2022年3月17日、http://cn.chinausfocus.com/peace-security/20220317/42555.html
Alessio Patalano, “China can use Russia to build a new international order(中国は新たな国際秩序建設のためにロシアを使うことができる)”, NIKKEI ASIA, March 19, 2022, https://asia.nikkei.com/Opinion/China-can-use-Russia-to-build-a-new-international-order
Wang Huiyao, “It’s Time to Offer Russia an Offramp. China Can Help With That.(ロシアに出口を提供する時だ。中国はそれを助けられる。)”, The New York Times, March 13, 2022, https://www.nytimes.com/2022/03/13/opinion/china-russia-ukraine.html

2.アメリカはどのような戦略を選択するべきか

Ivo H. Daalder, “The Return of Containment: How the West Can Prevail Against the Kremlin(封じ込め政策の再来―西側がクレムリンに勝つ方法)”, Foreign Affairs, March 1, 2022, https://www.foreignaffairs.com/articles/ukraine/2022-03-01/return-containment
Hal Brands, “Opposing China Means Defeating Russia(中国に抵抗するというのはロシアを打ち負かすということだ)”, Foreign Policy, April 5, 2022, https://foreignpolicy.com/2022/04/05/china-russia-war-ukraine/
Matthew Kroenig, “Washington Must Prepare for War With Both Russia and China(ワシントンは中国とロシアの両方との戦争に備えなくてはならない)”, Foreign Policy, February 18, 2022, https://foreignpolicy.com/2022/02/18/us-russia-china-war-nato-quadrilateral-security-dialogue/
Michael Beckley, Hal Brands, “The Return of Pax Americana?: Putin’s War Is Fortifying the Democratic Alliance(パックス・アメリカーナの再来?―プーチンの戦争は民主主義同盟を強化している)”, Foreign Affairs, March 14, 2022, https://www.foreignaffairs.com/articles/russia-fsu/2022-03-14/return-pax-americana
Mike Gallagher, “Biden’s ‘Integrated Deterrence’ Fails in Ukraine(バイデン氏の「統合的抑止」、ウクライナで失敗)”, The Wall Street Journal, March 29, 2022, https://www.wsj.com/articles/biden-integrated-deterrence-fails-ukraine-russia-invasion-taiwan-xi-china-diplomacy-sanctions-hard-power-defense-spending-budget-negotiations-11648569487
Stephen Wertheim, “The Ukraine Temptation: Biden Should Resist Calls to Fight a New Cold War(ウクライナによる誘惑 ―バイデンは新冷戦を戦うべきだという主張を退けなければならない)”, Foreign Affairs, April 12, 2022, https://www.foreignaffairs.com/articles/united-states/2022-04-12/ukraine-temptation
Stephen M. Walt, “Hand European Security Over to the Europeans(欧州の安全保障をヨーロッパ人に委ねよ)”, “U.S. Grand Strategy After Ukraine(ウクライナ後の米国のグランドストラテジー)” Foreign Policy, March 21, 2022, https://foreignpolicy.com/2022/03/21/us-geopolitics-security-strategy-war-russia-ukraine-china-indo-pacific-europe/
Toshihiro Nakayama, “Maintain the Strategic Focus on China(中国への戦略的フォーカスの維持)”, “U.S. Grand Strategy After Ukraine(ウクライナ後の米国のグランドストラテジー)”, Foreign Policy, March 21, 2022, https://foreignpolicy.com/2022/03/21/us-geopolitics-security-strategy-war-russia-ukraine-china-indo-pacific-europe/
「社评:对俄乌局势负有“特殊责任”的是华盛顿(社説 ーワシントンはウクライナ情勢に『特殊責任』を負う)」、『环球网』、2022年2月28日、https://opinion.huanqiu.com/article/470P5oXoqws

3.ロシアへの脅威認識の拡大

Alexander Gabuev, “Alexander Gabuev writes from Moscow on why Vladimir Putin and his entourage want war(プーチン大統領とその側近が戦争を望む理由について、モスクワからアレクサンドル・ガブエフが寄稿)”, The Economist, February 19, 2022, https://www.economist.com/by-invitation/2022/02/19/alexander-gabuev-writes-from-moscow-on-why-vladimir-putin-and-his-entourage-want-war?itm_source=parsely-api
Mary Elise Sarotte, “I’m a Cold War Historian. We’re in a Frightening New Era.(私は冷戦史家である。私たちは恐ろしき新時代にいる。)”, The New York Times, March 1, 2022, https://www.nytimes.com/2022/03/01/opinion/russia-ukraine-cold-war.html
Robert Kagan, “What we can expect after Putin’s conquest of Ukraine(プーチンのウクライナ征服後に我々が予期しうるもの)”, The Washington Post, February 21, 2022, https://www.washingtonpost.com/opinions/2022/02/21/ukraine-invasion-putin-goals-what-expect/
Michael Gerson, “If Putin isn’t stopped in Ukraine, the Baltics are likely next(もしプーチンをウクライナで止められなければ、次はバルト諸国だ)”, The Washington Post, April 12, 2022, https://www.washingtonpost.com/opinions/2022/04/12/putin-ukraine-aggression-nato-obligation-to-baltic-states/
Alar Karis, “Estonian president: Nato must bolster its eastern flank before it’s too late(エストニア大統領-NATOは手遅れになる前に東部地域を強化しなくてはならない)”, Financial Times, March 28, 2022, https://www.ft.com/content/30d0f1fa-593e-4254-9e4e-e9de9e280b73
Michael O’Hanlon, “NATO needs a Better Frontline Defense in Eastern Europe(NATOは東欧の前線防衛を強化する必要がある)”, The Wall Street Journal, April 13, 2022, https://www.wsj.com/articles/nato-forward-defense-baltic-states-eastern-flank-russia-troop-deployments-bases-ukraine-poland-nuclear-war-putin-escalation-escalate-11649860510

4.国際秩序は再編されるのか

Timothy Garton Ash, “How Ukraine can win(ウクライナはどのように勝利できるか)”, The Spectator, March 19, 2022, https://www.spectator.co.uk/article/how-tosave-ukraine-europe-must-lead-the-charge-against-putinhttps://www.washingtonpost.com/opinions/2021/09/20/bidens-australian-submarine-deal-is-big-win-strategic-competition-with-china/
A. Wess Mitchell, “The Case for Ukrainian Neutrality(ウクライナ中立の場合について)”, Foreign Affairs, March 17, 2022, https://www.foreignaffairs.com/articles/ukraine/2022-03-17/case-ukrainian-https://www.wsj.com/articles/aukus-indo-pacific-pact-china-australia-11632775481?mod=opinion_major_pos9
Robert Person and Michael McFaul, “What Putin Fears Most(プーチンが最も恐れるものとは)”, Journal of Democracy, February 22, 2022, https://www.journalofdemocracy.org/what-putin-fears-most/
David Ignatius, “Putin’s assault on Ukraine will shape a new world order (プーのウクライナへの攻撃は新たな世界秩序を形作る)”, The Washington Post, February 24, 2022, https://www.washingtonpost.com/opinions/2022/02/24/putin-invasion-ukraine-shape-new-world-order/
Liana Fix, Michael Kimmage, “What if Russia Wins? A Kremlin-Controlled Ukraine Would Transform Europe(もしロシアが勝ったら?ロシアが支配するウクライナはヨーロッパを大きく変化させる)”, Foreign Affairs, February 18, 2022, https://www.foreignaffairs.com/articles/ukraine/2022-02-18/what-if-russia-wins
Liana Fix, Michael Kimmage, “What If Russia Loses?: A Defeat for Moscow Won’t Be a Clear Victory for the West(もしロシアが負けたら?―モスクワの敗北は西側の明確な勝利にはならない)”, Foreign Affairs, March 4, 2022, https://www.foreignaffairs.com/articles/ukraine/2022-03-04/what-if-russia-loses

5.ヨーロッパの役割の拡大

DGAP Policy Brief, “Zeitenwende für Europas Sicherheitsordnung(欧州の安全保障秩序の転換点)”, DGAP, April 7, 2022, https://dgap.org/de/forschung/publikationen/zeitenwende-fuer-europas-sicherheitsordnung
Alexandra de Hoop Scheffer and Gesine Weber, “Russia’s War on Ukraine: the EU’s Geopolitical Awakening(ロシアの対ウクライナ戦争―EUの地政学的覚醒)”, The German Marshall Fund of the United States, March 8, 2022, https://www.gmfus.org/news/russias-war-ukraine-eus-geopolitical-awakening
Alexandra de Hoop Scheffer, “La défense collective est dorénavant au premier plan de l’OTAN(集団防衛は今やNATOの最重要課題である)”, Le Monde, March 29, 2022, https://www.lemonde.fr/idees/article/2022/03/29/la-defense-collective-est-dorenavant-au-premier-plan-de-l-otan_6119553_3232.html
Wolfgang Ischinger, “Wolfgang Ischinger argues that Germany has entered a new era(ドイツは新たな時代に突入した)”, The Economist, March 3, 2022, https://www.economist.com/by-invitation/2022/03/03/wolfgang-ischinger-argues-that-germany-has-entered-a-new-era
Jonathan Hackenbroich and Mark Leonard, “The birth of a geopolitical Germany(地政学的なドイツの誕生)”, European Council on Foreign Relations, February 28, 2022, https://ecfr.eu/article/the-birth-of-a-geopolitical-germany/
Charles Sapin, Vincent Tremolet de Villers, “Marine Le Pen: ≪Je suis prete a gouverner ≫(マリン・ルペンー政権を握る準備はできている)”, Le Figaro, April 5, 2022, https://www.lefigaro.fr/elections/presidentielles/marine-le-pen-je-suis-prete-a-gouverner-20220405
Antoine Bristielle, Tristan Guerra, “Election presidentielle 2022 : ≪ Une reelection a l’ombre d’un conflit pourrait saper la capacite du president a gouverner demain ≫(2022年大統領選挙―紛争の陰での再選は大統領の明日の統治力を損ねるかもしれない)”, Le Monde, March 21, 2022, https://www.lemonde.fr/idees/article/2022/03/21/election-presidentielle-2022-une-reelection-a-l-ombre-d-un-conflit-pourrait-saper-la-capacite-dupresident-a-gouverner-demain_6118393_3232.html
Editorial, “Guerre en Ukraine : l’Europe face a une ≪ nouvelle ere≫(ウクライナ戦争 ー欧州は「新しい時代」に直面している)”, Le Monde, March 12, 2022, https://www.lemonde.fr/idees/article/2022/03/12/guerre-en-ukraine-l-europeface-a-une-nouvelle-ere_6117224_3232.html
Francois Hollande, “Francois Hollande : ≪ Pour arreter Vladimir Poutine, arretons de lui acheter du gaz(プーチンを止めるには、プーチンからガスを買うのをやめるべきだ)”, Le Monde, March 7,2022, https://www.lemonde.fr/idees/article/2022/03/07/francois-hollande-pourarreter-vladimir-poutine-arretons-de-lui-acheter-du-gaz_6116515_3232.html
Adam Posen, “The End of Globalization? What Russia’s War in Ukraine Means for the World Economy(グローバリゼーションの終焉?―ロシアによるウクライナ侵攻が世界経済にもたらす影響)”, Foreign Affairs, March 17, 2022, https://www.foreignaffairs.com/articles/world/2022-03-17/end-globalization

6.ウクライナ戦争と米中関係

Michael Schuman, “Is Taiwan Next? (次は台湾か?)”, The Atlantic, February 24, 2022, https://www.theatlantic.com/international/archive/2022/02/vladimir-putin-ukraine-taiwan/622907/
Bonnie S. Glaser、陳方隅(Chen Fang-Yu)「專訪: 今日烏克蘭,明日台灣?(インタビュー今日のウクライナは明日の台湾?)」、『德國之聲』、2022年2月25日、https://www.dw.com/zh/%E5%B0%88%E8%A8%AA-%E4%BB%8A%E6%97%A5%E7%83%8F%E5%85%8B%E8%98%AD%E6%98%8E%E6%97%A5%E5%8F%B0%E7%81%A3/a-60909670
Oriana Skylar Mastro. “Invasions Are Not Contagious: Russia’s War in Ukraine Doesn’t Presage a Chinese Assault on Taiwan(侵略は伝染しない―ロシアのウクライナ戦争は、中国の台湾攻撃の前兆ではない)”, Foreign Affairs, March 3, 2022, https://www.foreignaffairs.com/articles/taiwan/2022-03-03/invasions-are-not-contagious
Thomas Corbett, Ma Xiu and Peter W. Singer, “What Is China Learning from the Ukraine War? (中国はウクライナ戦争から何を学んでいるか?)”, Defense One, April 3, 2022, https://www.defenseone.com/ideas/2022/04/what-lessons-china-taking-ukraine-war/363915/
Jeffrey W. Hornung, “Ukraine’s Lessons for Taiwan(ウクライナから台湾への教訓)”, War on the Rocks, March 17, 2022, https://warontherocks.com/2022/03/ukraines-lessons-for-taiwan/
「社評:想要得到和平 就要隨時準備戰爭(社説ー平和を得たいのであれば、つねに戦争の準備をせよ)」、『上報(UP MEDIA)』、2022年2月28日、https://www.upmedia.mg/news_info.php?Type=2&SerialNo=138679
Shinzo Abe, “US Strategic Ambiguity Over Taiwan Must End(台湾をめぐる米国の戦略的曖昧性は終焉させねばならない)”, Project Syndicate, April 12, 2022, https://www.project-syndicate.org/commentary/us-taiwan-strategic-ambiguity-must-end-by-abe-shinzo-2022-04
「社评:华盛顿不能边打压中国,边指望中国“配合“(社説―ワシントンは中国を抑圧しながら『協力』を求めることはできない)」、『环球网』、2022年3月15日、https://opinion.huanqiu.com/article/47CLWUTMWQN

7.アジアから見たウクライナ戦争

Shivshankar Menon, “The Fantasy of the Free World: Are Democracies Really United Against Russia? (自由世界の幻想ー民主主義国は本当にロシアに対して団結しているのか)”, Foreign Affairs, April 4, 2022, https://www.foreignaffairs.com/articles/united-states/2022-04-04/fantasy-free-world
Artyom Lukin, Aditya Pareek, “India’s aloof response to the Ukraine crisis(ウクライナ危機におけるインドの冷淡な反応)”, East Asia Forum, March 5, 2022, https://www.eastasiaforum.org/2022/03/05/indias-aloof-response-to-the-ukraine-crisis/
Sudha Ramachandran, “India’s ‘Neutrality’ on the Ukraine Conflict could Hurt It in the Long Run(ウクライナ対立におけるインドの「中立」は、長期的にそれを傷つける可能性がある)”,The Diplomat, February 25,2022, https://thediplomat.com/2022/02/indias-neutrality-on-the-ukraine-conflict-could-hurt-it-in-the-long-run/
「社 评 :印度,凸 显 了美国 乌 克 兰 叙事 的漏洞(社説―米国の『ウクライナ・ナラティブ』の抜け穴を浮き彫りにするインド)」、『環球時報』、 2022 年 4 月 12 日、https://opinion.huanqiu.com/article/47ZHUHfhbTj
杜兰(Du Lan)、「俄乌冲突令东南亚国家更加警惕美国居心(ロシア・ウクライナ衝突で東南アジア諸国は米国の下心に警戒を強めている)」、『新华国际』、2022年4月3日、https://new.qq.com/omn/20220403/20220403A072TW00.html
[사설] 우크라이나사태해결에한국정부도적극동참을(社説―ウクライナ事態解決に韓国政府も積極的に参加すべき)、『中央日報』、2022年2月25日、https://www.joongang.co.kr/article/25051026#home
[사설] 젤렌스키연설에냉담했던국회…국격을떨어뜨렸다(社説―ゼレンスキーの演説に冷たかった国会、国の品格を落とした)、『中央日報』、2022年4月13日、https://www.joongang.co.kr/article/25062943#home
[사설]정부의 대러 제재 동참, 국제사회 책임 다하는 계기 삼길(社説―韓国政府の対露制裁、国際社会の責任を負う機会に)、『京郷新聞』、2022年2月28日、https://www.khan.co.kr/opinion/editorial/article/202202282058005
ジョ・アラ記者、인수위외교라인에‘MB맨’ 김성한-김태효… 실용외교예고(外交安保担当に金聖翰や金泰孝など李明博政権高官起用、実用主義外交の予告)、『東亜日報』、2022年3月16日、https://www.donga.com/news/Politics/article/all/20220316/112350093/1