プロジェクト概要
7年8ヵ月にわたった第2次安倍晋三政権は、日本の憲政史上、最長の政権でもあり、安定政権でもありました。一体なぜ、それは可能だったのか。この長期安定政権は、何を成し遂げ、何を残したのか。
「検証 安倍政権」プロジェクトは、第2次安倍政権が進めた政策と統治の両面を検証することを目的としました。アベノミクス、外交・安全保障、働き方改革や貿易の自由化、歴史問題まで、同政権が取り組んだ政策課題はじつに多岐にわたりました。またそれを可能にしたのは、強い官邸主導や安定的な政党政治、国政選挙の圧勝など、安倍政権の特徴的な政権運営(統治)のありようでした。他方で、憲法改正や女性活躍など、安倍政権が積み残した課題も多く、また数々のスキャンダルは、民主主義の正統性にかかわる重い課題をも照らし出しました。
安倍政権が進めた政策と統治のありように関連する9つの主要なテーマを取り上げ、それぞれが、なぜそのように展開したのか(あるいはしなかったのか)について、キーパーソン50名以上へのヒアリングを軸に検証することを試みました。そこから得られる学びは、熟議と妥協による中道の政治を再構築し、政党民主主義の競争的環境を醸成するためにも重要なテーマと考えています。
プロジェクトのアプローチ
「検証 安倍政権」プロジェクトでは、第2次安倍政権の論点を大きく9つに整理しました。
各分野の第一人者がそれぞれの章で問いを設定し、問いに対してアプローチすることを心掛けました。研究会は2020年12月から計14回開催し、分野横断的な議論を行いました。座長は、中北浩爾一橋大学大学院教授が務めました。
(※ 各メンバーのプロフィールは、本ページ末尾をご覧ください。)
ヒアリングについて
安倍政権を様々な視点から検証するため、2021年7月から11月にかけて、第2次安倍政権のキーパーソンとなった50名以上を対象に、ヒアリングを実施しました。新型コロナウイルス感染症対策の観点から、ヒアリングの多くはオンラインで行いました。
◎ヒアリング協力者(一部のみ記載。敬称略)
安倍晋三/菅義偉/岸田文雄/甘利明/加藤勝信/石破茂/谷垣禎一/山口那津男/菅野志桜里/辻元清美 ほか
刊行物
2022年1月20日に「検証 安倍政権 – 保守とリアリズムの政治」を文藝春秋から刊行しました。
序論 長期安定政権になったのはなぜか 中北浩爾
第1章 アベノミクス 首相に支配された財務省と日本銀行 上川龍之進
第2章 選挙・世論対策 若年層を取り込んだ「静かなる革命」 境家史郎
第3章 官邸主導 強力で安定したリーダーシップの条件 中北浩爾
第4章 外交・安全保障 戦略性の追求 神保謙
第5章 TPP・通商 世界でも有数のFTA国家に 寺田貴
第6章 歴史問題 貫徹されたリアリズム 熊谷奈緒子
第7章 与党統制 「首相支配」の浸透 竹中治堅
第8章 女性政策 巧みなアジェンダ設定 辻由希
第9章 憲法改正 なぜ実現できなかったのか ケネス・盛・マッケルウェイン
おわりに
ヒアリング協力者一覧
安倍政権閣僚一覧
自民党役員一覧
安倍政権関連年表
発売日:2022年1月20日
出版社:文藝春秋
ISBN:978-4166613465
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プロジェクト・メンバー
座長
中北 浩爾 (なかきた こうじ)
一橋大学大学院社会学研究科 教授(政治学)
専門は日本政治史、現代日本政治論。東京大学法学部卒業後、同大学大学院法学政治学研究科博士課程中途退学。博士(法学)。立教大学法学部教授などを経て現職。主な著書に、『自民党政治の変容』(NHKブックス、2014年)、『自民党―「一強」の実像』(中公新書、2017年)、『自公政権とは何か』(ちくま新書、2019年)ほか。
メンバー
上川 龍之進(かみかわ りゅうのしん)
大阪大学大学院法学研究科 教授
専門は政治過程論、現代日本政治論、比較政治経済学、行政学。京都大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。主な著書に、『経済政策の政治学』(東洋経済新報社、2005年)、『小泉改革の政治学』(東洋経済新報社、2010年)、『日本銀行と政治』(中公新書、2014年)、『電力と政治』(勁草書房、2018年)。
境家 史郎 (さかいや しろう)
東京大学法学部・大学院法学政治学研究科 教授
2002年東京大学法学部卒業。2008年東京大学より博士(法学)取得。東京大学准教授、首都大学東京教授などを経て、20年11月より現職。専門は日本政治。著書に『憲法と世論』、共著に『政治参加論』など。
神保 謙 (じんぼ けん)
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ MSFエグゼクティブ・ディレクター
慶應義塾大学総合政策学部 教授
プロフィール
寺田 貴 (てらだ たかし)
同志社大学法学部政治学科 教授
同志社大学法学部教授。オーストラリア国立大学大学院にてPh.Dを取得後、シンガポール国立大学助教授、早稲田大学准教授・同教授を経て2012年より現職。その間ウォーリック大学客員教授、ウッドロー・ウィルソン国際学術センター研究員も務める。専攻は国際政治経済 学、地域主義・地域統合論。おもな著作に『東アジアとアジア太平洋:競合する地域統合』(東京大学出版会 2013)があり、2005年度ジョン・クロフォード賞を受賞。
青山学院大学地球社会共生学部 教授
青山学院大学地球社会共生学部教授。研究分野は、国際関係理論、人道主義、紛争解決論。ニューヨーク市立大学大学院にて博士号取得(政治学)。2021年1月より国連平和大学ジャパンチェア。著書に『慰安婦問題』(ちくま新書)、『和解のために「帝国の慰安婦」という問いをひらく』(共著、クレイン)、『新しい地政学』(共著、東洋経済新報社)など。
竹中 治堅 (たけなか はるかた)
政策研究大学院大学 教授
東京大学法学部を卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。1998年スタンフォード大政治学部博士課程を修了。99年に政策研究大学院大学助教授に就任し、准教授を経て、10年より同大学教授。この間、2003年から04年まではスタンフォード大学客員研究員を務める。専門は比較政治、日本政治。著書に『首相支配―日本政治の変貌』(中央公論新社、2006年)、『参議院とは何か―1947~2010』(中央公論新社、2010年、大佛次郎論壇賞受賞)Failed Democratizatoin in Prewar Japan: Breakdown of a Hybrid Regime (Stanford: Stanford University Press, 2014). “Expansion of the Japanese prime minister’s power in the Japanese parliamentary system: Transformation of Japanese politics and the institutional reforms” Asian Survey 59:5 (September/October 2019), 844-865.など。
東海大学政治経済学部政治学科 教授
2011年京都大学法学研究科、博士後期課程修了(博士(法学))。専門分野はジェンダー政治論。著書に『家族主義福祉レジームの再編とジェンダー政治』(2012年、ミネルヴァ書房)、「自民党の女性たちのサブカルチャー-月刊女性誌『りぶる』を手がかりに-」(田村哲樹編『日常生活と政治-国家中心的政治像の再検討』岩波書店、第6章)など。
東京大学社会科学研究所 教授
プリンストン大学卒。スタンフォード大学大学院政治学博士。ミシガン大学政治学部助教授を経て、現在東京大学社会科学研究所教授。専門は比較政治制度と世論分析。最近では憲法の条文をデータ化し、憲法典の歴史的な沿革、地域・グローバルレベルの規範化、日本国憲法の世界的な位置づけなどを考察。平成28年度東京大学卓越研究員。
事務局
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ 研究員
青山学院大学国際政治経済学部国際政治学科卒業、スウェーデン王国・ストックホルム大学政治学部修士課程。専門は、紛争解決理論、中東政治など。紛争下の民衆のナラティブを研究。民間企業、非営利団体で勤務後、在イスラエル日本大使館政務班でのインターンを経て、APIに参画。