CPTPPプロジェクト

CPTPP

プロジェクト概要

環太平洋パートナーシップ(TPP)協定は、署名後の2017年に米国が離脱した後、日本を含む残された11ヵ国の間で、2018年3月に「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」として締結され、同年12月に発効しました。CPTPPには、2021年2月に英国、9月には中国と台湾が新規加入申請を行い、12月には韓国も新規加入に向けた手続きを開始する等、各国の関心が高まっています。

米国の復帰が見込まれない一方で、様々な国が新規加入を望んでいるCPTPPに、日本はどう臨むのか。その判断を行うためには、日本が、米中対立の中で危機に瀕する「インド太平洋地域における自由で開かれた経済アーキテクチャ」をどのように護り、強化するのかという、大きな戦略を描くことが求められます。日米同盟に次ぐ日本外交の大きな資産とも言えるCPTPPを、どのように活用していけばよいのでしょうか。

宗像直子東京大学公共政策大学院教授を座長とした本プロジェクトは、2022年1月から4月にかけて研究会を開催し、米国と中国の内政・外交、国際経済法、国際政治経済、安全保障、日本の対中外交・対中ビジネスといった多角的な視点から議論を行ったうえで、通商秩序の再構築に向けて日本が今後採るべき戦略の5つの要素と、その実施を支える国内政策の課題を、戦略ペーパーの形で整理しました。

日本は何のためにCPTPPを実現させたのか。通商秩序の再構築に向けて日本はどう行動するべきなのか。本戦略ペーパーでは、TPPの二つの戦略的意義を再確認した上で、①法の支配を広げる仲間を増やす、②CPTPPへの新規加入については、英国の加入を契機に示された基準を先例として確立・維持する、③同志国と連携し経済的威圧に対抗する枠組みを作る、③CPTPPとEUの連携を強化する、⑤米国のアジアにおける経済的な関与の維持強化に粘り強く創造的に取り組むこと、を提言しています。

プロジェクトのアプローチ

下記の6つの観点から整理を行いました。

  • 国際経済法から見る日本の通商戦略
  • TPP/CPTPPと日本の通商戦略はどのようなものか
  • 中国の論理とゲームプラン
  • 米国とバイデン政権
  • インド太平洋における日本の対外経済政策の課題
  • 日本の経済安全保障から見る日本の通商戦略

報告書 戦略ペーパー『通商戦略の再構築 – CPTPPとその先へ』

本戦略ペーパー『通商戦略の再構築 – CPTPPとその先へ』では、TPPの二つの戦略的意義を再確認した上で、①法の支配を広げる仲間を増やす、②CPTPPへの新規加入については、英国の加入を契機に示された基準を先例として確立・維持する、③同志国と連携し経済的威圧に対抗する枠組みを作る、③CPTPPとEUの連携を強化する、⑤米国のアジアにおける経済的な関与の維持強化に粘り強く創造的に取り組むこと、を提言しています。
(著者:宗像直子、発行者:一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ、初版:2022年6月13日)

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画像提供: Shutterstock (エクゼクティブ・サマリー)、Aflo(はじめに、第1章、第2章)、Getty Images(第3章)、首相官邸ホームページ(第4章)

プロジェクトメンバー

座長

宗像 直子 (むなかた なおこ)
東京大学公共政策大学院教授

東京大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。ハーバードMBA。長く通商政策に関わり、日本初の自由貿易協定の交渉立ち上げや環太平洋パートナーシップ協定交渉への日本の参加に寄与。繊維課長、グローバル経済室長、通商機構部長、貿易経済協力局長、内閣総理大臣秘書官、特許庁長官等を経験。特許庁では、行政運営にデザインを導入し、スタートアップ支援、意匠保護の大幅拡充、知財訴訟手続の強化、標準必須特許に係る政策の国際調和等に注力。


メンバー

江藤 名保子 (えとう なおこ)
学習院大学法学部政治学科教授

学習院大学法学部教授。専門は現代中国政治、日中関係、東アジア国際情勢。スタンフォード大学国際政治研究科修士課程および慶應義塾大学法学研究科後期博士課程修了。博士(法学)。人間文化研究機構地域研究推進センター研究員、日本貿易振興機構アジア経済研究所副主任研究員、シンガポール国立大学東アジア研究所客員研究員、北京大学国際関係学院客員研究員などを経て現職。著書に『中国ナショナリズムのなかの日本‐「愛国主義」の変容と歴史認識問題』(勁草書房、2014年)、“Japan-China Strategic Communications Dynamics under the Belt and Road Initiative: The Case of ‘Third Country Business Cooperation’” (Asian Perspective, Vol. 45, no.3, Summer 2021)ほか。


片田 さおり (かただ さおり)
南カリフォルニア大学国際関係学部教授

南カリフォルニア大学(USC)国際関係学部教授・国際研究センター長。一橋大学社会学部卒業。ノースカロライナ大学チャペル・ヒル校政治学博士号(PhD)。国連開発計画メキシコ駐在事務所(UNDP),世界銀行国際経済部国際金融課研究員を経て,1995年よりUSCにて教鞭をとる。専門は国際政治経済学。最近の著書にJapan’s New Regional Reality: Geoeconomic Strategy in the Asia Pacific (単著、Columbia University Press, 2020年)、Taming Japan’s Deflation; The Debate over Unconventional Monetary Policy (共著、Cornell University Press, 2018年)、The BRICS and Collective Financial Statecraft (共著、Oxford University Press, 2017年)。


川瀬 剛志 (かわせ つよし)
上智大学法学部地球環境法学科教授
(独)経済産業研究所ファカルティフェロー
産業構造審議会通商・貿易分科会特殊関税措置小委員会委員長

1990年慶應義塾大学法学部卒、1994年ジョージタウン大学ローセンター修了(LL.M.)。専門は国際経済法。神戸商科大学(現・兵庫県立大学)助手・講師・助教授(1994–2001)、経済産業省通商政策局通商機構部参事官補佐(WTO紛争・交渉を担当、2001–03)、(独)経済産業研究所研究員(2003–04)、大阪大学大学院法学研究科准教授(2004–07)を経て、2007年より現職。

著書に、地球温暖化対策と国際貿易 -排出量取引と国境調整措置をめぐる経済学・法学的分析-(東京大学出版会、2012年、共編著)、“The Future of the Multilateral Trading System: East Asian Perspectives” (Cameron May、2009年、共編著)など。


Suzuki
鈴木 一人 (すずき かずと)
API上席研究員
東京大学公共政策大学院教授

東京大学公共政策大学院教授。研究分野は、国際政治経済学、科学技術政策論、宇宙政策、安全保障貿易管理、経済制裁、エコノミック・ステイトクラフト、原子力安全、欧州統合、中東問題。

立命館大学国際関係学部卒、英国サセックス大学大学院ヨーロッパ研究所博士課程修了(現代ヨーロッパ研究)。筑波大学大学院人文社会科学研究科専任講師・准教授、北海道大学公共政策大学院准教授・教授などを経て現職。国連安保理イラン制裁専門家パネル委員(2013-15年)。

主要著作に、『技術・環境・エネルギーの連動リスク』(岩波書店、2015年)、『EUの規制力』(遠藤乾氏と共編、日本経済評論社、2012年)、『宇宙開発と国際政治』(岩波書店サントリー学芸賞、2011年)、『Policy Logics and Institutions of European Space Collaboration』(Ashgate Publishers, 2003)、『グローバリゼーションと国民国家』(田口富久治氏と共著、青木書店、1997年)など。


寺田 貴 (てらだ たかし)
同志社大学法学部政治学科 教授

同志社大学法学部教授。オーストラリア国立大学大学院にてPh.Dを取得後、シンガポール国立大学助教授、早稲田大学准教授・同教授を経て2012年より現職。その間ウォーリック大学客員教授、ウッドロー・ウィルソン国際学術センター研究員も務める。専攻は国際政治経済 学、地域主義・地域統合論。おもな著作に『東アジアとアジア太平洋:競合する地域統合』(東京大学出版会 2013)があり、2005年度ジョン・クロフォード賞を受賞。


特別アドバイザー

横井 裕 (よこい ゆたか)
前駐中国大使

1955年生まれ。1979年東京大学教養学部教養学科卒業後、外務省入省。北京大学中文系進修科修了、ハーバード大学修士。米国大使館公使(経済部長)の後、上海総領事、外務報道官。トルコ大使、2016年から中国大使、2020年帰国、退官。現在 日本オリンピック委員会 常務理事。


徳地 立人 (とくち たつひと)
APIシニアフェロー
清華大学公共管理学院産業発展と環境ガバナンスセンター(CIDEG)
執行理事兼研究員
中国石油天然气股份有限公司 社外取締役

1952年生まれ(東京出身)。20数年大和証券に勤務、主に米国、香港、北京、シンガポールなどで国際投資銀行業務に従事した後、2002年、中信証券に入社。副総経理(執行委員)、マネージングディレクター兼投資銀行委員会主席、中信証券国際主席などを歴任し、2015年末、退任。中信証券では、中国大型国有企業の株式化、5大銀行の新規株式上場(IPO)、中国企業国内の外M&Aなどを手がける。その他、2013年より国家外国専門家局諮問委員会外国専門家顧問委員を5年間務め、目下、トヨタ自動車、東京海上グループ、星野リゾートなどの日本企業及び中国の独立系メディア、財新グループ、投資銀行、中金公司(CICC)などの中国企業に対するアドバイスも行っている。北京大学中国文学学科卒業、スタンフォード大学東アジア研究センターにて修士(中国経済)。著作(中国語):『国有企業到境外上市公司』(主編)、『企業重組導論』(編集委員)など。2009年、中国金融業界での功労が認められ、中国政府より“友誼賞”を受賞。


 

事務局

船橋 洋一 (ふなばし よういち)
API理事長
元朝日新聞社 主筆

東京大学教養学部卒。1968 年、朝日新聞社入社。米ハーバード大学ニーメンフェロー、朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長を経て2007 年から10 年12 月まで朝日新聞社主筆。2011年9月に日本再建イニシアティブ(現アジア・パシフィック・イニシアティブ)を設立。2016年ショレンスタイン・ジャーナリズム賞受賞。


スタッフディレクター
鈴木 均 (すずき ひとし)
API客員研究員 兼 CPTPPプロジェクト・スタッフディレクター
合同会社未来モビリT研究 代表

慶應義塾大学大学院法学研究科修士、European University Institute歴史文明学博士。新潟県立大学国際地域学部および大学院国際地域学研究科准教授、モナシュ大学訪問研究員、LSE訪問研究員、外務省経済局経済連携課を経て、2021年に合同会社未来モビリT研究を設立。現在、日本経済団体連合会21世紀政策研究所欧州研究会研究委員、東京大学先端科学技術研究センター牧原研究室客員研究員、フェリス女学院大学非常勤講師。2021年12月にAPI客員研究員兼CPTPPプロジェクト・スタッフディレクター就任。


Marina Dickson
プロジェクトオフィサー
ディクソン 藤田 茉里奈 (でぃくそん ふじた まりな)
APIリサーチ・アシスタント

米国ベイツ大学政治学部卒、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院(SAIS)修了。ベイツ大学卒業後、米国のコンサルティング会社でシニアコンサルタントとして勤務した後、ジョンズ・ホプキンス大学ライシャワー東アジア研究所にて政策研究員として日米関係、アジア地域協力の研究活動に従事。SAIS修了後、韓米経済研究所(Korea Economic Institute of America)でインターンとして、日韓関係、米韓関係、韓国政治を研究。2021年10月よりAPI勤務。


Ishikawa Yusuke
プロジェクトオフィサー
石川 雄介 (いしかわ ゆうすけ)
API DXオフィサー兼リサーチ・アシスタント

明治大学政治経済学部政治学科卒業(学科主席、副総代)、英国サセックス大学大学院汚職とガバナンス専攻修士課程修了(優等修士号)、ハンガリー中央ヨーロッパ大学大学院政治学研究科修士課程修了。高等学校教諭一種免許状(地理歴史、公民)、中学校教諭一種免許状(社会)とTESOL修了証も保持。透明性、汚職分析、反汚職政策を専門とし、政策過程論、比較政治学、政治学方法論、社会科教育学にも関心を持つ。研究成果として、“Bank Transparency in Hungary” (Transparency International Hungary)、“Process of Development and Effects of Political Simulation Games”(PanSIG Journal)を執筆するとともに、学術誌『アジア・アフリカ地域研究』において書評の執筆も行った。Transparency International Hungaryでのリサーチインターン等を経て、APIに勤務。