プロジェクト概要
政党政治検証プロジェクト第2弾として「検証 日本の中道保守」を2014年10月に立ち上げました。戦後長きに渡り、宏池会などの「保守本流」として知られ、かつて自民党で重きを成していた分厚い「中道保守」を土台とする「戦後保守」が痩せ細り、日本政治のバランスが揺らぎはじめています。保守全体が先鋭化し、観念的になり、幅広い「国民政党」としてあった過去から変わりつつあるのではないでしょうか。2015年11月は自民党結党60周年の節目にあたりますが、1990年代に端を発し、小泉政権で加速、第二次安倍政権で如実になった「中道保守」の空洞化の原因や背景を解明し、今日における「中道保守」再生の条件を考察し、日本の健全な政党政治実現への提言を行うことが本プロジェクトの目的です。
検証方法
国内外の有識者からなるプロジェクト・メンバーが一堂に会し、中道保守の変遷の中で活躍し、影響を与えてきた内閣総理大臣や閣僚経験者を含む政治家・官僚などを対象に、延べ20回に及ぶヒアリング会合を実施しました。 ヒアリングにおいては、政治信条、自らの政治活動の舞台裏、日本政治の未来に対する意見などをお話いただき、広範な話題について質疑応答を行いました。
報告書
戦後、政権を長く担い続け、日本の復興と発展を主導した自民党は、保守政党として幅広い裾野を持ち、さまざまな派閥がせめぎあう多様な「保守」を包摂した政治を行ってきました。その構図の下で中心的役割を果たしたのが「中道保守」と呼ばれる勢力です。しかし近年、その勢力が弱まり、「一強多弱」の構造が党内にまでひろがるなど、保守全体が観念的、先鋭的になってきています。本書ではその理由や経緯、今後の「中道保守」復活の鍵を探ります。
著者:日本再建イニシアティブ
出版社: 角川新書
定価:860円(+税)
初版:2015年11月10日
ISBN: 978-4047315211
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まえがき
序章 戦後政治の「中道保守」 中野晃一
- 戦後保守とは何か
- 「中道保守」としての戦後保守
- 中道保守の特徴
- 戦後の「中道保守政治」は終わったのか
第1章 「戦後保守」の軌跡 村井哲也
- 保守勢力の結集と自民党結成 一九四五~一九五五
- 「中道保守」の形成 一九五五~一九七四
- 黄金期から黄昏の予兆へ 一九七四~一九九三
第2章 衰退する「中道保守」――派閥政治の変容と終焉 中北浩爾
- 自社さ政権と新たな中道保守
- 経世会支配の復活と宏池会の凋落
- 小泉改革と平成研の衰退
- 民主党の台頭と二度の安倍政権
第3章 経済財政政策――高度成長から負の分配へ 内山融
- 「中道保守」の経済政策とは何か
- ミクロ的経済政策――中道保守路線の展開と動揺
- 財政政策――消費税問題を中心に
- 二一世紀の中道保守経済政策とは
第4章 「村山コンセンサス」の形成と課題 ジェニファー・リンド
- ドイツと米国での歴史認識問題
- 「村山コンセンサス」が成立するまで
- 「村山コンセンサス」に対する反撃
- 「村山コンセンサス」の未来
第5章 メディア環境・世論と政治の座標軸 逢坂巌
- 池田勇人のチェンジ・オブ・ペース
- 世論と政治座標軸の変化
- メディア環境の激変と中道保守の今後
第6章 「中道保守」と外交安全保障 宮城大蔵
- 冷戦後の「中道保守」
- 連立時代の外交安保政策
- 「中道保守」の衰退と外交安保
第7章 少子化・女性・家族と「戦後保守」の限界 杉之原真子
- 少子化・女性・家族と戦後保守
- 九〇年代の「戦後保守」の揺らぎと女性政策・少子化対策
- 小泉政権以降の首相のリーダーシップと女性・少子化
- 女性政策に関する自民党の変化
- 求められる「新しい中道保守」
総括 「中道保守」は再生できるか 中野晃一
ヒアリングにご協力頂いた方々
*50音順・敬称略、肩書きはヒアリング時点のもの
*ヒアリング実施期間:2014年11月7日~2015年8月10日
*別途記載のない限り、議員は自由民主党所属
猪口邦子 |
参議院議員・元内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画) |
小野寺五典 |
衆議院議員・元防衛大臣 |
蒲島郁夫 |
熊本県知事 |
河野洋平 |
元衆議院議長・元総裁 |
高村正彦 |
衆議院議員・副総裁 |
古賀誠 |
元運輸大臣・元幹事長 |
白川勝彦 |
元自治大臣 |
世耕弘成 |
参議院議員・内閣官房副長官(政務) |
武井俊輔 |
衆議院議員 |
田中秀征 |
元経済企画庁長官(新党さきがけ) |
額賀福志郎 |
衆議院議員・元財務大臣 |
野田聖子 |
衆議院議員・元総務会長 |
野中広務 |
元内閣官房長官・元幹事長 |
林芳正 |
参議院議員・農林水産大臣 |
平沼赳夫 |
衆議院議員・次世代の党党首 |
福田康夫 |
第91代内閣総理大臣・元総裁 |
古川貞二郎 |
元内閣官房副長官(事務) |
村山富市 |
第81代内閣総理大臣・社会民主党名誉党首 |
森田一 |
元運輸大臣 |
山崎史郎 |
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部地方創生総括官 |
執筆者チーム(肩書きはプロジェクト開始時)
国内外の有力政治経済研究者が、検証する領域を分担して執筆。また、報告書の統一性を保つため、大手新聞の元論説主幹が編集を担当しました。
本プロジェクト総括(座長) 担当:序章 戦後政治の「中道保守」、総括「中道保守」は再生できるか
中野 晃一(なかの こういち)
上智大学国際教養学部 教授
東京大学文学部哲学科および英国オックスフォード大学哲学・政治コース卒業、米国プリンストン大学で博士号(政治学)を取得。専門は比較政治学、日本政治、政治思想。 著書に『ヤスクニとむきあう』(共編著)、『グローバルな規範/ローカルな政治』(共編著)、「『政権交代』とは何だったのか、どう失敗したのか―民主党とリベラリズムの来し方と行く末」『世界』(2012年9月号)、『戦後日本の国家保守主義—内務・自治官僚の軌跡』、『右傾化する日本政治』など。
担当:「戦後保守」の軌跡
村井 哲也(むらい てつや)
明治大学法学部 非常勤講師
神戸大学法学部卒、東京都立大学大学院博士課程を経て博士号取得(政治学)。専門は、戦前から戦後における日本政治史。特に首相のリーダーシップや政官関係を交えた意思決定システムの変遷について研究している。著書に、『戦後政治体制の起源 吉田茂の「官邸主導」』(藤原書店、2008年)、(共著)『日本政治史の新地平』「戦後政治と保守合同の相克」(吉田書店、2013年)がある。
担当:衰退する中道保守
中北 浩爾(なかきた こうじ)
一橋大学大学院社会学研究科 教授
東京大学法学部卒業後、同大学大学院法学政治学研究科博士課程中途退学。博士(法学)。大阪市立大学法学部助教授、立教大学法学部教授などを経て現職。専門は、政治学および日本現代史、特に日本政治史・現代日本政治論。 主な著書に、『一九五五年体制の成立』(東京大学出版会、2002年)、『日本労働政治の国際関係史』(岩波書店、2008年)、『現代日本の政党デモクラシー』(岩波新書、2012年)、『自民党政治の変容』 (NHKブックス、2014年)など。
担当:経済財政政策
内山 融(うちやま ゆう)
東京大学大学院総合文化研究科 教授
東京大学法学部卒業後、通産省入省。東京大学大学院法学政治学研究科助手、東京都立大学法学部助教授、マサチューセッツ工科大学客員研究員などを経て現職。博士(法学)。専門は、現代日本政治、比較政治。 主な著書に『現代日本の国家と市場 ―石油危機以降の市場の脱〈公的領域〉化』(東京大学出版会、1998年)、『小泉政権―「パトスの首相」は何を変えたのか』(中公新書、2007年)、共編著に『専門性の政治学―デモクラシーとの相克と和解』(ミネルヴァ書房、2012年)。
担当:「村山コンセンサス」の形成と課題
Jennifer Lind(ジェニファー・リンド)
米ダートマス・カレッジ 准教授
ハーバード大学ライシャワー日本研究所フェロー
専門は東アジアの国際安全保障。カリフォルニア大学バークレー校卒業後、カリフォルニア大学サンディエゴ校大学院グローバルポリシー・ストラテジー研究科で修士(MPIA)、マサチューセッツ工科大学にて政治学博士。研究は、日本の安全保障の未来、民主化の安全保障への影響、朝鮮半島の安定などの主要問題を含む東アジアの国際関係論。戦争の記憶や国際和平に関する処女作は「Sorry States: Apologies in international politics 」(Cornell University Press, 2008年)。また学術誌「International Security」 や「International studies Quarterly」で発表を行う。「Foreign Affairs」「The Wall Street journal」「The New York Times」等、世界の著名新聞・雑誌にも幅広く寄稿し、日本や各国のメディアでも多く掲載されている。近著では、諸国家が大国になる上で障壁となる経済的・軍事的問題について取り組む。
担当:メディア環境・世論と政治の座標軸
逢坂 巖(おおさか いわお)
立教大学法学部 兼任講師
東京大学法学部卒。同大学院法学政治学研究科修了後、同博士課程中退。同大学助手を経て現職。専門は、現代日本政治、政治コミュニケーション。 著書に『日本政治とメディア』(中公新書、2014年)『政治学』(東京大学出版会、2012年、共著)『テレビ政治』(朝日選書、2006年、共著)など。
担当:「中道保守」と外交安全保障
宮城 大蔵(みやぎ たいぞう)
上智大学総合グローバル学部 教授
一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。立教大学法学部卒業後、NHKで記者を勤めたのち、一橋大学大学院に入学。北海道大学大学院法学研究科専任講師、政策研究大学院大学助教授などを経て現職。専門は日本外交史。
著書は、『バンドン会議と日本のアジア復帰―アメリカとアジアの狭間で』(草思社, 2001年)、『戦後アジア秩序の模索と日本―「海のアジア」の戦後史 1957-1966
』(創文社, 2004年)、『「海洋国家」日本の戦後史』(筑摩書房, 2008年)。
担当:少子化・女性・家族と「戦後保守」の限界
杉之原 真子(すぎのはら まさこ)
フェリス女学院大学国際交流学部 准教授
東京大学教養学部卒、同大学総合文化研究科修士課程終了後、米国コロンビア大学で博士号(政治学)を取得。専門は国際関係論、比較政治経済。学術論文に、”Flocking Together? The Breakdown and Revival of Political Clientelism in Italy and Japan,” Italy and Japan: How Similar Are They? Edited by Beretta, F. Rugge, and A.l Berkofsky(Springer, 2014, 共著)、 「専門家の国際的ネットワークと日米金融交渉」内山融・伊藤武・岡山裕編著『専門性の政治学−デモクラシーの相克と和解』ミネルヴァ書房, 247-273頁, 2012年、“The Politics of Economic Nationalism in Japan: Backlash against Inward Foreign Direct Investment?,” Asian Survey, Vol.48, No.5(2008), pp.839-859等。
エディター
大軒 由敬(おおのき よしのり)
元朝日新聞社 論説主幹
一橋大学社会学部卒。1974年、朝日新聞社入社。経済部員、AERA副編集長、東京経済部次長、asahi.com編集長、be編集長、論説副主幹を経て、2010年から2012年まで朝日新聞論説主幹を務める。
プログラムディレクター
船橋 洋一(ふなばし よういち)
日本再建イニシアティブ 理事長
東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。米ハーバード大学ニーメンフェロー、朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長を経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。ハーバード大学ニーメンフェロー(1975-76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶応大学法学博士号取得(1992年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005-06年)。2011年9月から日本再建イニシアティブ財団理事長。近著は、『カウントダウン・メルトダウン』(2013年、文藝春秋、大宅壮一賞)、『原発敗戦 危機のリーダーシップとは』(2014年、文藝春秋)等。
スタッフディレクター
俵 健太郎(たわら けんたろう)
日本再建イニシアティブ 主任研究員
東京大学工学部卒。ケンブリッジ大学不動産経済学部修士課程修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、大和証券SMBCにてコーポレート・ファイナンス、デッド・リストラクチャリング、企業再生アドバイザー業務を担当。その後、介護施設運営会社、病院再生支援事業、ラグジュアリーブランド企業等の経営に従事して、日本再建イニシアティブに参画(~2015年9月)。