当日の録画動画は こちら
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(所在地:東京都港区、理事長:船橋洋一、以下API)は、2021年6月12日(土)午前10時~11時に、第1回「API地経学オンラインサロン」を開催いたします。詳細については、下記をご参照ください。
[本イベントは終了しました]
開催報告
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(所在地:東京都港区、理事長:船橋洋一、以下API)は、2021年6月12日(土)午前10時~11時に第1回目となる地経学オンラインサロンを開催しました。
今回はゲストに池内恵東京大学先端科学技術研究センター教授をお招きし、「中東を地経学で読み解く」と題して、API地経学研究所所長代行・上席研究員である鈴木一人東京大学公共政策大学院教授との対談をお送りいたしました。当日の主な議論を以下にご紹介します。事務局作成のサマリーですので、正確な内容についてはぜひ動画をご視聴ください。
12年ぶりに政権交代となるイスラエル
「中東を地経学で読み解く」と題した第1回地経学オンラインサロン。冒頭、ホストの鈴木氏から「中東で何に一番注目しているか」との質問に対し、池内氏は「イスラエルの政権交代」と回答します。比例代表制の下で小政党が乱立するイスラエルで、過去12年間、社会の分裂や対立を何とかうまく制御しつつ、権謀術数も駆使して政権を維持する一方、アラブの春やイスラム国など難しい地域情勢・秩序の中で、トランプ政権との良好な関係も用いてイスラエルの地位を向上させる巧みな外交を続けてきたネタニヤフ政権が、トランプ政権の終焉とともについに終わることになった。ベネット首相率いる新たな8党連立政権は、安定的に政権運営を行えるのか。どのような外交政策を行うのか。それらを見通すにあたり、池内氏は「新政権の立役者は、首相職を最初にベネット氏に譲ったラピド氏。政党間交渉で能力を発揮したラピド氏の手腕が認められつつある。だが、変化のための変化を売り物にしている積み木細工のような連立政権であり、変化を起こした後どうするかは分からない。ただ、ガザ・パレスチナ政策は、すでに軍事的、治安的、情報技術面でイスラエルの圧倒的な優位性が確立されたので、どの政権になってもほとんど変わらないだろう。」と指摘します。
イスラエルの政権交代は中東をどう変えるか
続いて、議論は、これまでネタニヤフ政権が推し進めてきた強硬な対イラン政策に展開します。ネタニヤフ政権は、トランプ政権とともに、アブラハム合意で湾岸諸国とも関係を改善させイランに対する国際包囲網を作るなど、イランに最大限の圧力をかけてきました。これが新政権になるとどうなるのか。鈴木氏の「アメリカの政権交代やイスラエルのガザへの強硬姿勢を背景に、イスラエルはアラブ諸国との関係が今後難しくなっていくのか。」との質問に対し、池内氏は「アブラハム合意はアクロバティックな展開ではあるものの、アメリカもこれは続けたいというのが超党派の認識。UAEも先行者利益を得ており、目立たないように、小規模で二国間ベースで続くだろう。ただ、サウジに広げていくというグランド・ストラテジーはついえたので、むしろイスラエル・UAE+アジアという三者間の枠組みとして使われていくのではないか」との見方が示されました。
アジア諸国にとってのアブラハム合意の価値。イラン核合意再建の見通し
次いで、議論はアジア諸国にとってのアブラハム合意の価値について移ります。池内氏は、「中国や日本といったアジア諸国にとって重要なのは、パレスチナに同情・共感・人道支援はするものの、どうやって中東産油国とイスラエルの双方と通商貿易関係を広げていけるか。アブラハム合意は、UAEを通じて、イスラエルと産油国に同時に関与しやすくなる有益な枠組みを提供。(当事者も)それを分かっている。」と指摘します。また、イランの核合意については、「イラン側は、内政上重要な体制の移行期に入り、合意を急ぐ理由がなくなっているが、決裂もしたくない。双方ともに、妥協する気はないが、交渉はしていたいという事情から、ずるずる伸ばすのではないか。」との説明がなされました。
その他、質問への回答なども行われました。当日の議論の詳細については、動画をご覧頂ければと思います。
<お問い合せ先>
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)
API地経学研究所
1.日時
2021年6月12日(土)10:00 ‒ 11:00(JST)(9:50開場)
2.開催方式
オンライン視聴(ZOOMウェビナー)
3.主催
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)
4.テーマ
「中東を地経学で読み解く」
5.登壇者
ゲスト:池内 恵 東京大学先端科学技術研究センター教授
ホスト:鈴木 一人 API地経学研究所所長代行・上席研究員 / 東京大学公共政策大学院教授
6.ゲスト(池内恵氏)の略歴
1973年東京生まれ。1996年東京大学文学部イスラム学科卒業、2001年に東京大学大学院総合文化研究科博士課程を単位取得退学し、アジア経済研究所に入所。国際日本文化研究センター助教授・准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授(イスラム政治思想分野)、2018年10月より東京大学先端科学技術研究センター教授(グローバルセキュリティ・宗教分野)。ケンブリッジ大学客員研究員(2010年)、ウッドロー・ウィルソン国際学術センター客員研究員(2009年)、アレクサンドリア大学客員教授(2008年)等を歴任した。専攻はイスラーム政治思想史、中東地域研究。2016年に第12回中曽根康弘賞を受賞。
(おことわり)
API地経学オンラインサロンで表明された内容や意見は、講演者やパネリストの個人的見解であり、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)やAPI地経学研究所等、スピーカーの所属する組織の公式見解を必ずしも示すものではないことをご留意ください。