第12回API地経学オンラインサロンを開催~「新しい宇宙開発時代の地経学」


当日の録画動画は こちら

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(所在地:東京都港区、理事長:船橋洋一、以下API)は、2022年5月14日(土)午前10時~11時に、第12回「API地経学オンラインサロン」を開催いたします。詳細については、下記をご参照ください。
[本イベントは終了しました]
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開催報告

APIは、2022年5月14日(土)に、第12回目となる地経学オンラインサロンを開催しました。

今回はゲストに石田真康A.T.カーニーディレクター/一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 CEOをお招きし、「新しい宇宙開発時代の地経学」と題して、API地経学研究所所長代行・上席研究員である鈴木一人東京大学公共政策大学院教授との対談をお送りいたしました。当日の主な議論を以下にご紹介します。事務局作成のサマリーですので、正確な内容についてはぜひ動画をご視聴ください。

(本サマリー及び動画の内容はイベント実施時点での情報に基づいています)


なぜ今、衛星通信インターネットなのか
冒頭、ロシアによるウクライナ侵略の際に、イーロン・マスク氏率いるアメリカの民間企業SpaceX社の衛星インターネットサービスStarlinkがウクライナ側に提供され大きな話題になったことを受け、これまで政府中心であった宇宙開発に今なぜ民間企業が参入しているのか、それが有事に役割を果たすというのは将来どういう意味を持つのか、との質問が投げかけられました。

石田氏は、「衛星通信自体は70年代からあるがニッチな領域であった」とした上で、最近になって衛星通信によるインターネットサービスが注目を浴びている理由として、通信業界のマクロトレンドと業界の人間ドラマを挙げました。具体的には、マクロトレンドとしては「Beyond 5Gで使われる周波数では地上基地局の投資効率が大きく悪化すること」と「今なお世界の人口の半分にはインターネットが届いていない」こと(ゆえに宇宙からインターネットサービスを提供する衛星通信が注目を浴びるようになった)。加えて、OneWeb社を創業したグレッグ・ワイラー氏とSpaceX社のイーロン・マスク氏の二人の人間ドラマがあったことを指摘しました。

鈴木氏からの「多数の衛星打上げなどで巨額の費用がかかる衛星通信インターネットはそもそもビジネスとして成立するのか」との問いに対して、石田氏は「業界にも色々な見方があるものの、(アフリカや南米より)欧米豪など比較的所得が高い国の中のネットインフラが未だ脆弱な地域を対象にすることでビジネスモデルが成り立つ可能性があると思う」との見解を述べました。鈴木氏は、ロシアによるウクライナ侵略やトンガの海底火山噴火時といった有事に提供されることで、強力な宣伝になっていることに加え、通常は一番時間がかかる政府の許認可も迅速化されており、それが市場を作るパワーになっているのだろう、と補足しました。

宇宙ビジネスの時代―「官から民へ」
続いて、ロケット打上げなど、多額の資金を要し、かつては国家でなければできないと思われてきた宇宙開発分野において、民間企業の存在感が増している背景に議論が移りました。石田氏は、「ロケットエンジンの原理原則は50年前と変わっていない」とした上で、「米国では、NASA等が培った技術が民間移転されてきた」と指摘します。「米国は、スペースシャトルの退役後、宇宙輸送システムを他国に頼っていた。自国で何とかしたいと思ったが、資金面の制約から民間の力を借りる必要があり、技術の民間への移転が行われた。また、宇宙では、民間が使って良いものと良くないものがあるが、徐々に政府もその規制を緩めていった。民間の側でも、アメリカはアントレプレナーの国で、トム・ミューラー氏とイーロン・マスク氏の強烈な才能と情熱があった。政策とスタートアップの連携があった。」

宇宙開発のグローバル化と、求められる新たなルールメイキング
最後に、民間企業のみならず途上国が宇宙に関与し始めている「宇宙開発のグローバル化」のimplicationについて議論が及びました。石田氏は「2012年以後国の宇宙機関を作った国が25あるなど、世界中で宇宙機関の設立ラッシュが起きている。ステークホルダーの増加により利害調整が難しくなっている」と指摘しました。「空の世界と同様に、宇宙の世界でも、宇宙という公共空間をどう使うのかについてのspace traffic managementという交通整理が必要になりつつある。国際的には法的拘束力のないガイドラインなどが中心であるが、今後より拘束力をもつ枠組みがつくられていく可能性がある」との見解が表明されました。

そのほか、「衛星インターネットサービスは海底ケーブルにとって代わるのか」「日本で起業家精神が育つためには?」「宇宙ビジネスは、モノからサービスへとシフトしつつあり、企業と国家との関係が変化しつつある?」といった点に関する質疑応答が行われました。

当日の模様は以下よりご覧になれます。

<お問い合せ先>
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)
API地経学研究所

API地経学オンラインサロン

1.日時
2022年5月14日(土)10:00 ‒ 11:00(JST)(9:50開場)

2.開催方式
オンライン視聴(ZOOMウェビナー)

3.主催
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)

4.テーマ
「新しい宇宙開発時代の地経学」

5.登壇者
ゲスト:石田真康 A.T.カーニーディレクター/一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事 兼 CEO

ホスト:鈴木一人 API地経学研究所所長代行・上席研究員 / 東京大学公共政策大学院教授

6.ゲスト(石田真康氏)の略歴
一般社団法人SPACETIDEの共同創業者 兼 代表理事 兼 CEOとして、「宇宙ビジネスの新たな潮流をつくる」ことをミッションに、年次カンファレンス「SPACETIDE」を主催。また、経営コンサルティングファームKearneyのGlobal Space Groupのリーダーとして国内外の政府機関や企業に対して経営コンサルティングを実施。内閣府 宇宙政策委員会 基本政策部会をはじめとする各種政府委員会を通じて日本政府の宇宙政策立案・実行を支援。日経産業新聞および日経デジタルにて「WAVE」を2018年より連載中。また著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。東京大学工学部卒。

(おことわり)
API地経学オンラインサロンで表明された内容や意見は、講演者やパネリストの個人的見解であり、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)やAPI地経学研究所等、スピーカーの所属する組織の公式見解を必ずしも示すものではないことをご留意ください。