第5回API地経学オンラインサロンを開催(10月9日)~「米軍撤退後のアフガニスタン」


当日の録画動画は こちら

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(所在地:東京都港区、理事長:船橋洋一、以下API)は、2021年10月9日(土)午前10時~11時に、第5回「API地経学オンラインサロン」を開催いたします。詳細については、下記 をご参照ください。
[本イベントは終了しました]
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開催報告

APIは、2021年10月9日(土)午前10時~11時に第5回目となる地経学オンラインサロンを開催しました。

今回はゲストに公益財団法人中東調査会研究員の青木健太氏をお招きし、「米軍撤退後のアフガニスタン」と題して、API地経学研究所所長代行・上席研究員である鈴木一人東京大学公共政策大学院教授との対談をお送りいたしました。当日の主な議論を以下にご紹介します。事務局作成のサマリーですので、正確な内容についてはぜひ動画をご視聴ください。

(本サマリー及び動画の内容はイベント実施時点での情報に基づいています)


10月のAPI地経学オンラインサロンでは、公益財団法人中東調査会研究員の青木健太氏をゲストに迎え、米軍の撤退とカブール陥落から2ヶ月を経ても混乱が続くアフガニスタン情勢について、議論が交わされました。

タリバンから見ると「カブール解放」
冒頭で青木氏は、現在のアフガニスタン情勢を正確に理解するためには、目の前の事象だけではなく、「1990年代の内戦の延長」という視点で捉えることの重要性を指摘しました。タリバンからすると、「暗黒だった1990年代の内戦の中で、世直し運動を行い、治安を回復し、国土の大半を支配していた自分たちが、(9.11後の米英による武力攻撃後の)2001年12月のボン合意では一方的に排除された。不当な軍事介入の後、傀儡である違法な体制が母国を占領し、汚職まみれの統治をおこない、深刻な政治不信を招いた。今回、20年に亘る武装抵抗活動の結果、ようやくカブールを解放した。」というもの。国民の7割が住む保守的な農村部では、「アメリカが来て誤爆・夜襲攻撃が行われた。腐敗したイスラム共和国よりもタリバンを支持する。」という層も一定程度いた。アフガニスタン情勢を理解するためには、どちらかに肩入れするのではなく、タリバンも含めた多面的な視点を理解しないと見誤る、との指摘がなされました。

武装抵抗活動から統治・テロ対策へと天地がひっくり返るタリバンの役割
続いて話題は、タリバンの統治について移りました。20年間の武装抵抗活動の末にようやく取り戻した政権だが、様々な民族・勢力から成る包摂的な国づくりは行えておらず、政権のメンバーはほとんどすべてタリバン構成員が独占している。とはいえ、青木氏は「ある意味妥協しつつ、統治をおこなっている。病気でパキスタンに行かなければいけない人々に配慮し、旧政権の名前を使いパスポートを再発行し始めた。女子学生の登校が再開という報道もある。バランスを取って見ていく必要がある。」と解説します。他方で、「タリバンは、統治主体としての意識もあるけど、統治の経験がほとんどない。今まで殉教者作戦という洗脳教育をやっていたのが、8月15日を境に国民のために働くという天地がひっくり返る状況となった。これからは、テロを仕掛けるのではなく、テロを仕掛けてくるイスラム国への対策が必要になった。タリバン構成員の意識の変容には時間も必要だろう。」と説明します。

中国は地政学的観点とテロ対策の観点からアフガニスタンの重要性を認識
その後、ホストの鈴木氏より、中国がアフガニスタンに干渉する可能性について、質問が投げかけられました。青木氏は、アフガニスタンがユーラシア大陸の真ん中に位置し、歴史的に常に大国・王朝のはざまで緩衝地帯を形成してきたとし、中国もアフガニスタンの戦略的重要性を理解していると指摘します。加えて、中国は、アフガニスタンに潜伏して天安門広場に自動車で突入するといったテロ行為を起こしてきたウイグル武装勢力ETIM(東トルキスタンイスラム運動)の動きが領土分断につながりかねないと警戒していると説明しました。鈴木氏からは、「すぐにではないものの天然資源やその経由地としての重要性にも関心があるとは思われ、アフガニスタンの安定が、中国にとってはプラス要因。中国が肩入れするほど西側は承認しにくくなる。」との指摘がなされました。

当日はこの他に、人道危機の可能性と人道支援の必要性、少数民族問題、アガカーン財団などNGOの活動、イランとの類似性、といった点についても議論がなされました。

当日の模様は以下よりご覧になれます。

<お問い合せ先>
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)
API地経学研究所

第5回API地経学オンラインサロン

1.日時
2021年10月9日(土)10:00 ‒ 11:00(JST)(9:50開場)

2.開催方式
オンライン視聴(ZOOMウェビナー)

3.主催
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)

4.テーマ
「米軍撤退後のアフガニスタン」

5.登壇者
ゲスト:青木 健太 公益財団法人中東調査会研究員

ホスト:鈴木 一人 API地経学研究所所長代行・上席研究員 / 東京大学公共政策大学院教授

6.ゲスト(青木健太氏)の略歴
公益財団法人中東調査会研究員。2001年上智大学卒業、2005年英国ブラッドフォード大学大学院平和学修士課程修了(平和学修士)。専門は現代アフガニスタン・イラン政治。アフガニスタン政府省庁アドバイザー、在アフガニスタン日本国大使館二等書記官、外務省国際情報統括官組織専門分析員、お茶の水女子大学講師等を経て現職。著書に『ハイブリッドな国家建設:自由主義と現地重視の狭間で』(ナカニシヤ出版、2019年、共著)、「ターリバーンの政治・軍事認識と実像――イスラーム統治の実現に向けた諸課題」(『中東研究』第538号、2020年)等。

(おことわり)
API地経学オンラインサロンで表明された内容や意見は、講演者やパネリストの個人的見解であり、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)やAPI地経学研究所等、スピーカーの所属する組織の公式見解を必ずしも示すものではないことをご留意ください。