当日の録画動画は こちら
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(所在地:東京都港区、理事長:船橋洋一、以下API)は、2021年9月11日(土)午前10時~11時に、第4回「API地経学オンラインサロン」を開催いたします。詳細については、下記 をご参照ください。
[本イベントは終了しました]
開催報告
APIは、2021年9月11日(土)午前10時~11時に第4回目となる地経学オンラインサロンを開催しました。
今回はゲストに岩瀬昇エネルギーアナリストをお招きし、「日本のエネルギー戦略の地経学」と題して、API地経学研究所所長代行・上席研究員である鈴木一人東京大学公共政策大学院教授との対談をお送りいたしました。当日の主な議論を以下にご紹介します。事務局作成のサマリーですので、正確な内容についてはぜひ動画をご視聴ください。
(本サマリー及び動画の内容はイベント実施時点での情報に基づいています)
部分最適となったエネルギー基本計画
第4回目の地経学オンラインサロンはエネルギーの専門家である岩瀬氏をゲストにお迎えし、当時パブリックコメント募集の段階にあった第6次エネルギー基本計画を基に、日本を含めた各国のエネルギー政策を議論しました。岩瀬氏は経済産業省の審議会の1つである石油天然ガスエネルギー小委員会に参加し、政府にエネルギー政策を提言してきた立場から、エネルギー基本計画が全体最適を達成できておらず、各分野の部分最適を寄せ集めたものになっているとの問題意識を示しました。岩瀬氏はその例として、エネルギー基本計画のように長期のエネルギー構成を考える文書は、本来一次エネルギー全般を対象にすべきものであるにもかかわらず、日本のエネルギー基本計画は電気エネルギーのみに着目し、電源構成しか議論していないと指摘しました。これに対し、鈴木氏はAPIが行ってきた福島原発事故や新型コロナ対応に関する検証を引き合いに出しつつ、各部署が部分最適を追求する結果、全体最適が達成されないのは日本の行政の共通課題であるとの認識を示しました。
日本の「環境エネルギー」政策には2つの根本課題がある
続けて岩瀬氏は、2050年にカーボンニュートラルを目指す上で、環境政策とエネルギー政策とを一体として考える「環境エネルギー」政策の必要性を指摘しました。その上で、日本の環境エネルギー政策は部分最適が追求されて全体最適になっておらず、また国民とのコミュニケーションも欠如しているという、2つの根本課題を示しました。部分最適については、先に指摘したエネルギー基本計画のみならず、グリーン成長戦略も各省庁の文書の寄せ集めになっているとの指摘を行いました。加えて、国民とのコミュニケーションについては、日本はエネルギー安全保障が脆弱な国であり、今まで国民が享受してきたの安定的なエネルギー供給はは当たり前ではなく、官民の努力の結果であるということ、及び2050年カーボンニュートラルは国民ひとりひとりが我が事として行動しなければ達成できないことの2つを伝えていく必要があるとの見解を示しました。
欧州はルール作りがうまいが、資源賦存量・技術に優れる米中に分がある
話題は世界のエネルギー情勢にも及び、脱炭素のリーダーシップを発揮する欧州や、脱炭素に向けて豊富な底力を持つ米中についても解説されました。岩瀬氏からは、現在の世界は単純に炭素を減らすだけでなく、同時にエネルギー生産も増やすことが求められており、欧州はその中で自らに有利なルールを作っているとの見方が示されました。一方で、欧州が如何にルール作りに長けていても、中長期的に見れば欧州よりも資源賦存量・技術に優れる米中に軍配が上がるとの見解が示されました。岩瀬氏はその根拠として、米中にはCCS(二酸化炭素回収・貯留)用地に適している枯渇したガス田・油田や、比較的低コストで済む着床式の洋上風力発電に適している大陸棚があり、これらを活用する技術もあることを挙げました。
当日は上記のほか、菅義偉政権によって設定された、2030年までの温室効果ガス46%削減目標・当該目標から見た日本の現状・世界のエネルギー産業の構造転換・米国のエナジーインディペンデンスと米=中東関係・ドイツのカーボンニュートラルとノルドストリーム2・サハリン1、2構想と日本などについても議論がなされました。
<お問い合せ先>
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)
API地経学研究所
1.日時
2021年9月11日(土)10:00 ‒ 11:00(JST)(9:50開場)
2.開催方式
オンライン視聴(ZOOMウェビナー)
3.主催
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)
4.テーマ
「日本のエネルギー戦略の地経学」
5.登壇者
ゲスト:岩瀬 昇 エネルギーアナリスト
ホスト:鈴木 一人 API地経学研究所所長代行・上席研究員 / 東京大学公共政策大学院教授
6.ゲスト(岩瀬昇氏)の略歴
1948年10月、埼玉県生まれ。エネルギーアナリスト。浦和高校、東京大学法学部卒業。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、10年常務執行役員、12年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、2度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。14年6月に三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けており、「岩瀬昇のエネルギーブログ」で情報発信中。著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門』(2014年9月、文春新書) 、『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (2016年1月、同)、『原油暴落の謎を解く』(2016年6月、同)、最新刊に『超エネルギー地政学 アメリカ・ロシア・中東編』(2018年9月、エネルギーフォーラム)がある。
(おことわり)
API地経学オンラインサロンで表明された内容や意見は、講演者やパネリストの個人的見解であり、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)やAPI地経学研究所等、スピーカーの所属する組織の公式見解を必ずしも示すものではないことをご留意ください。