【開催報告】2025日韓未来ビジョン対話 ―トランプ2.0時代の日韓関係―日韓協力の新しい地平―


2025年5月16日、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)は、韓国・国民大学校日本学研究所との共催により、国際文化会館にて「2025日韓未来ビジョン対話」を開催しました。本対話には、日韓両国から約30名の専門家・実務者が参加し、政治、安全保障、経済、二国間関係の将来像について多角的な議論が行われました。

第1セッション:「継続と進化」から見る日韓・日米韓関係

冒頭では、両国を取り巻く国内外の政治環境が整理され、キャンプ・デービッド合意の意義が再確認されました。日韓関係の「継続性」については、韓国の政権交代が予想される中でも、与野党を問わず日韓関係の重要性に対する共通認識が存在するとの分析が共有され、一定の楽観的見通しが示されました。

一方、「進化」に向けた課題として、革新系政権誕生時における関係維持のためには、日本側のより積極的な関与が不可欠であるとの指摘もなされました。日米韓三国関係については、バイデン政権下で進展した多層的な枠組み(ラティスワーク)の将来について意見が交わされ、今後の米政権がインド太平洋地域における関与をどのように定義づけるかが、日韓双方にとって戦略的判断の分水嶺になるとの認識が示されました。

北朝鮮による軍事的脅威の質的変化も指摘され、新たな日韓防衛協力の枠組みを模索する必要性が議論の中で浮き彫りとなりました。

第2セッション:日韓経済協力の可能性と課題

本セッションでは、経済安全保障とサプライチェーン強靱化を主軸に、日韓経済協力の具体的可能性が議論されました。登壇者からは、半導体分野における協業やLNG協力、造船分野での連携など、具体的な政策提案が提示されました。

また、経済安全保障の観点では、従来注目されてきた中国に加え、米国自身が新たな不確実性要因となる可能性が論点として浮上しました。韓国のCPTPP加盟の展望、トランプ政権復帰時の通商政策の方向性を見据えた日韓連携の在り方についても検討され、バイラテラル交渉を好むトランプ政権下での対応において、相互に学び合う協力の必要性が指摘されました。

日本側からは、関係強化のためには、より積極的な協力の枠組みやビジョンを日本から提示することが重要であるとの意見が示されました。

第3セッション:国交正常化60周年と日韓関係の将来

国交正常化60周年という節目にあたる本年を契機として、過去の成果と将来の課題について包括的な議論が行われました。発表では、過去30年間における対等なパートナーシップの進展や、韓国における世代別の対日認識の違いが紹介されました。

ディスカッションでは、今後の日韓関係をどう「進化」させていくべきかをめぐり、6月には関係深化を意図した政治イベントが予定されている一方、8月には歴史認識にまつわるリスクが再燃する可能性がある点が共有されました。そのため、政治的関係の冷却が他分野に波及しないような「遮断装置」の必要性が強調されました。

中期的協力分野としては、人的交流、防衛協力、エネルギー協力が挙げられ、具体案としてアラスカLNG向け砕氷船の共同建造が紹介されました。また、長期的な課題として、韓国国内における世代・性別間の対日感情の乖離が焦点となり、とくに次世代のリーダー層(40~50代)に向けた認識改善の必要性が指摘されました。

最後に、今後の関係の礎となる新たな概念や象徴的言葉の創出が必要であるとの提案もなされ、対話は締めくくられました。