アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)は、2025年6月10日、東京・国際文化会館にて、米国財務省よりオリバー・メルトン財務アタッシェ(駐北京)、ダニエル・グリーンランド財務アタッシェ(駐東京)、前田晃氏(在京米国大使館財務アタッシェ室 日本担当エコノミスト)を迎え、「米中経済関係と地経学的競争」をテーマにAPIラウンドテーブルを開催しました。
本ラウンドテーブルはチャタムハウス・ルールのもとで実施され、日米の研究者・政策専門家が、米中関係、日本の経済安全保障政策、そしてグローバルなサプライチェーンにおける対応戦略について率直な意見交換を行いました。
冒頭では、APIの活動概要が紹介されるとともに、ゲストからは現在注力している技術・輸出管理・中国の産業過剰などのテーマについて共有がありました。ディスカッションではまず、日本の政策対応の進化に焦点があてられ、2010年の尖閣諸島を巡る希少資源輸出規制を契機に、サプライチェーン強靭化と過度な依存回避に関する国家戦略の展開が紹介されました。経済安全保障推進法や企業へのガイダンスのあり方も議論され、欧州との比較も交えて日本の制度的な強みと課題が浮き彫りとなりました。
後半では、中国の希少資源輸出規制、産業過剰問題、そして地政学的競争下での技術移転のリスクといった、米中間の政策と構造的課題が論点となり、米国側からは中国の補助金体制と市場支配戦略への懸念、ならびに日本の国内生産強化に対する評価も表明されました。
さらに、情報収集における制度的差異、WTOをめぐる多国間体制の課題、新産業分野における中国の過剰供給リスク、そして日米欧韓の連携の必要性についても議論が展開され、特に新興企業における技術流出リスクへの対処や、政策対応の柔軟性と戦略性が問われました。
本ラウンドテーブルは、変化の激しい国際経済の中で日本と米国が直面する共通課題と補完関係を改めて認識する貴重な機会となり、今後の政策協調のあり方を考える上で多くの示唆を得る場となりました。



