2016年3月28日、日本原子力学会の春の年会において第12回「社会・環境部会業績賞」が発表され、日本再建イニシアティブ(RJIF)の船橋理事長が、その受賞者に選ばれました。「社会・環境部会業績賞」は、原子力の社会的側面あるいは原子力エネルギー技術と社会との接点の分野において顕著な業績のあった個人に授与されるものです。船橋理事長は受賞にあたってコメントを発表しました。
「私たちのシンクタンク、日本再建イニシアティブは、福島原発事故の原因を究明し、そこから教訓を引き出すために2011年10月、民間事故調を発足させました。
7人の委員(北澤宏一委員長、後に黒川清委員は国会事故調の委員長に転出した)、30数名のリサーチャーが調査、検証を精力的に行い、2012年2月末、報告書(『福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)調査・検証報告書』)を刊行しました。(英語版は2014年、英国の老舗出版社RoutledgeからThe Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Disaster: Investigating the Myth and Realityとして出版)
民間事故調発足に当たって、私たちが掲げたモットーは「真実、独立、世界(Truth,Independence,Humanity)でした。
親原発も反原発も立場は一切なし。何よりも検証に徹して、事実を認定し、真実に迫る、唯一、立場というものがあるとすればそれは政治からの、行政からの、企業からの、イデオロギーからの独立という立場でした。
検証に当たって、私たちは、事故そのものにとどまらずむしろ危機の真実を「安全神話」「ムラと空気のガバナンス」「ガラパゴス症候群」「レジリエンス(復元力」といった分析レファレンスを用いて、歴史的、構造的解剖をしました。
私自身は、日本語版報告書を刊行した後、今度は一記者として、当事者と関係者を改めて取材しました。
プログラム・ディレクターとして民間事故調査の検証作業を進める中で、危機の際の人間の条件をヒューマン・ストーリーの形で描きたいと思ったからです。そうして書き上げたのが『カウントダウン・メルトダウン』(文藝春秋、2012年12月)です。
今回、これらの2つの仕事が原子力学会賞に値すると認められたことを光栄に思います。
受賞理由に「「福島原発事故独立検証委員会」をプロデュースし、福島原発事故の実態を社会に分かりやすくかつ詳細に伝え、原子力に関する社会の理解向上に大きく貢献した」とありますが、まさにその点こそ、民間事故調が目指したところでもあります。
大災害のトラウマを抱えた社会が立ち直り、再起する上で、検証-真実-教訓-備えのレジリエンス・サイクルを実践し続けていくことの大切さを私たちはフクシマの悲劇から学びました。
私たちはその作業を、社会と科学の連帯を信じ、科学と技術の社会への適用への結果に科学者としての責任を担う専門家の方々と共同作業をしていくつもりです。
今回の受賞は、憂慮する科学者と技術者のコミュニティーから、私たちの試みと志を力強く後押ししていただいたものと受け止めています。
民間事故調をともに立ち上げ、調査し、議論し、報告書を作成した仲間とともに、この受賞を喜びたいと思います。」
福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の詳細はこちら:
https://apinitiative.org/wp/project/fukushima/