アジア各国の起業家、投資家、大手財閥の経営者など、40代から50代を中心とした現役世代のリーダー32人が韓国・ソウルに集まり、各国の抱える課題や希望についての議論などを通じてアジアに通底する共通の価値観を探るとともに、今後取り組んでいくプロジェクトについて議論しました。
概要
ALFは、前年に日本で開催された第1回年次総会に続き、2024年10月5日~7日の3日間にわたって韓国のソウルで2回目となる年次総会を開催しました。ALFは、日本と諸外国の交流目的に設立された非営利の民間団体である国際文化会館(IHJ)によって運営されています。IHJの理事でもある佐藤輝英と小林りんが発起人となり、将来世代に希望の持てるアジアを受け継いでいくためには現役世代のリーダーによる対話の場やコミュニティが必要だという問題意識から2023年に立ち上げられました。
前回から参加したメンバーに加え、今回も新たなFellowをメンバーとして招き、総勢32人が一堂に会してアジア各国の課題や、課題を克服していくための話し合いを行いました。アジア共通の価値観についての議論に加え、ALFのコミュニティからイノベーションを生み国境を越えたコラボレーションを実現するための具体的なプロジェクトについての議論も始まりました。
ALFのコンセプト
21世紀がアジアの時代になっていく中で、アジア地域の経済貢献とアジア固有の価値観が世界社会にポジティブな影響を与えることができるというのがALFの問題意識です。アジア固有の価値観とは、社会の結束を促し進歩を推進するための謙虚さ、調和、年長者への敬意、地域社会への貢献、教育の重視といったアジアを通底する価値観です。これらの価値観は、個人主義的な価値観とは一線を画すもので、グローバル社会に共感を持って貢献することができるという信念を持っています。
またアジアの影響力が強まるにつれ、その固有の価値観や伝統に根ざしたリーダーシップの育成がますます重要となります。ALFの作り上げるコミュニティを通じて地域の複雑な問題への対処や世界的な課題に貢献できるリーダーを育成できると考えています。
参加メンバー
ALFでは、実際に行動や変化を起こすことができる現役世代のリーダーが率直に課題を共有・議論し、解決策を提示することができる対話の場をつくることを重要視しています。こうした場で対話を行う参加者(Fellow)の人選は、7人の創設メンバーが中心になって行われました。その際には、現時点で意思決定権を持ち実績と行動力を兼ね備えたリーダーのポジションにあり、かつ”I”ではなく”We”で考えることのできるマインドセットを持った人という2点を厳格な要件として定めています。
今回の年次総会には、前回に引き続き参加いただいた方々に加え、新たに趣旨に賛同いただいた方々9名の、合わせて32名が12の国と地域(中国、インド、インドネシア、日本、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾、タイ、アメリカ)から参加いただきました。
参加者は、以下の通り(名アルファベット順)。
– Adriel Chan: Chair, Hang Lung Properties
– Arif P. Rachmat: Co-Founder & Executive Chairman, TAP Group
– Ashish Dhawan: Founder & CEO, The Convergence Foundation
– Banjo Yamauchi: Family representative, Yamauchi-No.10 Family Office
– Bianca Ho: Co-founder & COO, Clare.AI & WATI
– Cynthia Wu: Chairman, Shin Kong Life Foundation
– Dele Liu: Managing Director, Vesture Vesting Holdings
– Dina Shin: Head of Asia – Business Development; Asia Investments, WestCap
– Elora Hardy: Founder & Creative Director, IBUKU
– Grace Chen: Founder & Director, Graceful Media
– Jerry Ng: Founder & Chairman, Bank Jago
– Jin Hong Huh: Senior Vice President, GS Engineering & Construction, GS Group
– Kent Ho: Founder & General Partner, S28 Capital
– Nix Nolledo: Director, Eden Holdings
– Ong Yee Min (Amelia): CEO, OSK Ventures International Berhad
– Ren Hua Ho: CEO, Thai Wah Public Company
– Soohyun Bae: CSO, Makeus
– Sunjay Kapur: Chairman, Sona Comstar
– William Tanuwijaya: Co-Founder & Former Co-Chairman, GoTo
– Win Win Tint: Group CEO, City Holdings
– Xiaojing Christina Zhu
– James Kondo: Chairman, International House of Japan
– Ken Jimbo: API President & Managing Director, International House of Japan
– Sangyeob (Max) Han: CEO & Managing Director, Sopoong Ventures
– Soryoung Park: CEO & Founder, Publy
Founding Member:
– Jennifer Zhu Scott: Founding Partner, IN. Capital
– Joon Sung Park: Co-CIO, Legend Capital
– Lin Kobayashi: Co-Founder & Chair of the Board, UWC ISAK Japan
– Nikhil Sawhney: Vice Chairman & Managing Director, Triveni Turbine
– Ryu Suliawan: Vice President of Digital, AYANA Hospitality
– Taejun Shin: Founder & CEO, Gojo & Company
– Teruhide Sato: Founder & CEO, BEENEXT Capital
第2回年次総会の議論
韓国・ソウルで開催された2回目となる年次総会では、昨年の年次総会、そして以降に行った定例ミーティングやそれぞれの国の課題を議論するオンラインダイアローグなどで培った信頼関係をさらに深め、具体的な行動に向けて動き出すことが目標となりました。
2024年10月5日(1日目)
ソウル北部の少し肌寒い山岳地の宿泊施設で迎えた初日は、ALFの共通テーマとなっている「How can we become good ancestors?」という問いかけに向き合うことから始まりました。韓国の著名な仏教僧の一人であるマガ僧侶(Monk Maga)にも参加いただき、自分たちがここにいる意味、一度きりの人生をどう生きるかなどを共に考える機会となりました。
その後は、アジアの共通の価値観を見出すことを目的に、各国のFellowがそれぞれの国の価値観を反映した本や詩を持ち寄り議論する「Common Reading」のセッションが行われました。日本の「生きがい」という理念や韓国の若者の苦悩を描いた小説についての議論を通じて、アジアで共通する価値観を浮彫のすることができました。続いて行われた「新聞に掲載されていない情報を皆で共有し、議論したい」という意見から導入されたRound-Robinのセッション。この中では、台湾、フィリピン、インドネシア、日本、韓国、シンガポール、マレーシア、中国、ミャンマーなどそれぞれの国が抱える課題、そして未来への希望について、それぞれの国の出身者による見方がシェアされました。
2024年10月6日(2日目)
二日目には、ALFメンバーが今、情熱を持って取り組んでいるプロジェクトを紹介する「Passion Projects」についての発表が行われました。環境問題、社会課題を解決する若者の支援、次世代リーダーの育成など様々なテーマについて紹介され、ALFが社会にポジティブなインパクトを与えるためにできることについて考える機会となりました。
2024年10月7日(3日目)
最終日には、韓国の大手企業や政治学者を招いて、韓国が抱える少子化問題などの課題や日本や中国との関係、そして海外においても躍進する映画産業やK-Popカルチャーなど多岐にわたる議論が行われました。年次総会の締めくくりとしては、創設メンバーのJoon Sung Parkが主催するリーダーシップ・プログラムに参加している韓国の次世代リーダーや政財界のリーダー、スタートアップの起業家たちとの懇談会が開催されました。
また今回の年次総会は、上記の議論のほかにも韓国のTea meditation(お茶会)が開催されたり、李氏朝鮮時代の木製の家具が展示された家具博物館を見学したりするなど韓国文化に触れつつ、参加者同士のきずなを深めることができました。
社会課題の解決やリーダーの育成についての具体的な議論を始めるとともに、外部との交流の機会を増やすことで着実にALFのポジティブな影響力を広げることを実感できた3日間となりました。