2024年11月04日、国際文化会館とチェ・ジョンヒョン学術院(Chey Institute for Advanced Studies)の共催により、「日韓経済協力」をテーマとしたカンファレンスが開催されました。国際文化会館の近藤正晃ジェームス理事長とチェ・ジョンヒョン学術院のキム・ユソク理事長の挨拶により幕を開けた本カンファレンスは、日韓両国が直面する共通の課題と、今後の協力の可能性について活発な議論が行われました。
基調講演では、元駐日大使のユン・ドクミン大使が登壇し、日韓関係の歴史と現状についての問題提起が行われました。1965年の日韓国交正常化から始まった両国の関係は、数々の試練を経ながらも発展を遂げ、今日の緊密なパートナーシップへと成長しました。ユン大使は、民主主義と市場経済を基盤とする両国の関係が今後も継続して深化することを期待すると述べました。
第1セッション:スタートアップエコシステムをめぐる日韓関係
最初のセッションでは、日本と韓国のスタートアップエコシステムについて議論が行われました。日韓両国は少子化や食料自給率の低下などの共通の社会課題を抱え、これに対するスタートアップの役割が注目されました。JETROの前川直行ソウル所長やBespin Globalの李ハンジュ代表などの登壇者は、両国のスタートアップが協力することで、グローバル市場における競争力を高められると提案しました。また、AIやロボティクスの分野での連携の可能性も示され、両国が規制緩和を進めることで、さらなるイノベーションが期待されています。
パネルディスカッション:日韓のスタートアップ連携の未来
第1セッションに続くパネルディスカッションでは、韓国がスタートアップの資金調達やユニコーン企業数でリードしている一方、日本は素材・加工・生産技術で強みを持つといった日韓の特徴が紹介されました。AIやロボティクス分野における日韓の協力の可能性についても議論が交わされ、両国が規制を見直し、スタートアップが連携できる環境を整えることが重要だとの意見が出されました。政策シンクタンクが課題を定義し、スタートアップがその課題に取り組むという新しい協力モデルは、両国にとって理想的な方向性と言えるでしょう。
第2セッション:経済安全保障と日韓協力
次に行われた「経済安全保障と日韓協力」に関するセッションでは、グローバルなサプライチェーンの脆弱性やエネルギー資源の安定供給といった安全保障に関連するテーマが取り上げられました。韓国大統領室のキム・ヒョンウォク経済安保担当秘書官は、新興技術や重要資源の確保の必要性について指摘し、日韓の協力が国家安全保障の一環として重要であると強調しました。
地経学研究所の鈴木一人所長は、グローバル経済が地理的に分割され、政治と経済が融合する時代が到来していると指摘しました。鈴木所長は、日本の経済安全保障戦略の中心的概念である「戦略的自律性」(経済的威圧に対して強靭な経済であること)と「戦略的不可欠性」(自国の技術や生産が他国にとって不可欠であること)を通じて、経済の強靭性を確保することが重要な戦略目標であると述べました。
パネルディスカッション:エネルギー安全保障とサプライチェーンの課題
第2セッションのパネルディスカッションでは、エネルギー安全保障の観点から、日韓がLNG市場で共同購入の仕組みを構築する可能性についても議論されました。また、両国が生命線とする航路の安全確保における協力の必要性が指摘されました。脱炭素化を進めるための産業転換についても意見が交わされ、コスト負担とその解決方法についての課題が共有され、特に、水素やアンモニアといった脱炭素燃料に関する日韓の協力が、2050年ネットゼロ目標達成に向けて重要であるとの認識が示されました。
日韓関係の未来に向けて
今回のカンファレンスを通じて、日韓両国が共有する戦略、価値観、文化に基づいた協力が、今後も強化されていくことが期待されます。日韓関係はアジア地域の安定に貢献する新たな段階へと進展しており、両国がリーダーシップを発揮する存在として、共に秩序構築に貢献することが期待されています。国際文化会館とチェ・ジョンヒョン学術院は、今後も引き続き、日韓の相互理解と協力を促進するための活動を展開してまいります。