一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(東京都港区 理事長:船橋洋一)は、当財団運営の政策起業家プラットフォームPEPが主宰する第2回「PEPジャーナリズム大賞」2022受賞者およびファイナリストを発表致しました。また、2022年7月15日開催の授賞式において、①検証②課題発見③オピニオンの各部門賞、またその中から大賞、ほか特別賞の受賞者ら計5組を表彰致します。
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<大賞 兼 課題発見部門賞>
中川七海「シリーズ 公害『PFOA』」
<検証部門賞>
毎日新聞「オシント新時代 荒れる情報の海」
※特に、ロシアと中国におけるサプライチェーンの動態を取材した、「隠れ株主「中国」を可視化せよ AI駆使し10次取引先までチェック」(12/31)および「ロシア政府系メディア、ヤフコメ改ざん転載か 専門家『工作の一環』」(1/1)の両記事
<オピニオン部門賞>
大竹文雄「まん延防止等重点措置延長に関する一連の報道」
<特別賞>
柳原三佳「交通事故で息子が寝たきりに――介護を続ける親の苦悩と、『親なき後』への不安」(課題発見部門)
木野龍逸「不思議な裁判官人事」(検証部門)
<ファイナリスト>
江川紹子「東京・墨田区のワクチン接種はなぜ速いのか」(課題発見部門)
井艸恵美 「子どもに『向精神薬』を飲ませた親の深い後悔」 (検証部門)
渡邊裕子「日本に裏切られた気持ち」留学生の入国停止問題は「安全」に名を借りた差別ではないか」(オピニオン部門)
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第2回「PEPジャーナリズム大賞」2022とは
自由で開かれた社会において、市民が公共の事柄に関心を持ち、当事者意識を持ってそれに参画する「政策起業力」。その発揮には、確かな情報を伝え、判断材料を提供し、またアジェンダを形成するジャーナリズムの力が決定的に重要です。インターネット空間の力強いジャーナリズムが、多様にして包容力と活力のある自由主義と民主主義を育てる上で重要な役割を果たし、日本の政策起業力を高めることに繋がる。我々、政策起業家プラットフォームPEPはそう信じ、2021年にこの賞を創設致しました。https://peplatform.org/jaward/2022
(1)選考委員会
林香里 (委員長) 東京大学大学院情報学環教授
治部れんげ ジャーナリスト/東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
竹中治堅 政策研究大学院大学教授
西田亮介 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
山脇岳志 スマートニュース メディア研究所 所長
船橋洋一 アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長
(2)審査後の審査委員長コメント
第2回となる本年の応募作品もたいへんな力作揃いだった。今年は「検証部門」「課題発見部門」「オピニオン部門」の3部門で作品を募り、それぞれの部門の賞を選ぶとともに、その中から一つ、PEPジャーナリズム大賞の趣旨「社会変革の糸口となり、日本の政策起業力を高めるジャーナリズム」にもっともふさわしい作品を「PEPジャーナリズム大賞」として選んだ。また、昨年同様、特徴のある課題提起をするユニークな作品のために「特別賞」も設け、受賞作を選んだ。応募総数は65件で前年と同レベルであった。
「課題発見部門」賞の「シリーズ 公害『PFOA』」は、国際的に規制が進む有機フッ素化合物(PFOA)による高濃度土壌汚染について、中川七海氏が様々な視点から丹念に調査した一連の報道である。PFOAは国際的には強度の有毒性がある危険な化学物質として知られており、映画にもなった。しかし、日本ではほとんど知られておらず、主要メディアも大きく取り上げてこなかった。今回対象となった記事では、専門家の調査結果とともに、PFOAを使用している企業の担当者ならびに地方自治体担当者への取材インタビューをし、さらに情報公開請求などでより詳しい情報を入手しながら、高濃度土壌汚染が放置されている状況について詳述している。環境省、自治体、そして企業の責任を問う姿勢はジャーナリズムの古典的機能である権力監視を着実に実践しており、審査員全員が調査報道として高く評価。今年度の「PEPジャーナリズム大賞」とした。
「検証部門」では、インターネット時代の諸課題に切り込む毎日新聞の連載「オシント新時代 荒れる情報の海」を受賞作とした。「オシント(OSINT)」とは、open-source intelligenceの略語で、一般に公開されアクセス可能な情報を収集、分析しながら課題解決を図る手法で、デジタル情報が氾濫する現代社会においてさまざまな主体が様々な目的で運用している。このシリーズはその現状と行方を多角的に分析している。なかでも、「ロシアと中国におけるサプライチェーンの動態を取材した「隠れ株主「中国」を可視化せよ AI駆使し10次取引先までチェック」(12/31)および「ロシア政府系メディア、ヤフコメ改ざん転載か 専門家『工作の一環』」(1/1)の両記事は、激動する国際社会におけるデジタルテクノロジーがもたらす可能性および弊害の最前線を描いた意欲作だ。
「オピニオン部門」には、オミクロン株の広がりの中、今年2月に政府が宣言した「まん延防止延長」に反対を唱え、その理由を自身のnoteをはじめ、ネット媒体を活用してわかりやすく説明、情報発信を続けた大竹文雄氏に贈る。専門家という立場から冷静に状況を解説し、毅然とした態度でEBPM(証拠に基づく政策形成)の必要性を説く姿勢は、まさに本賞にふさわしいと審査員の意見が一致した。
上記受賞作以外にも、「課題発見部門」と「検証部門」でそれぞれ「特別賞」を1作品ずつ選んだ。柳原三佳氏の「交通事故で息子が寝たきりに――介護を続ける親の苦悩と、『親なき後』への不安」は、交通事故に遭った子どもの介護をする家族の苦悩に光を当て、さらに受け皿となる障害者施設が絶対的に不足しているこという「課題」を明るみに出した。もう一つの作品は、木野龍逸氏による「不思議な裁判官人事」である。裁判官のエリート度合いという評価軸について、アカデミックにみると疑問があるという評価もあったものの、一般にはほとんど知られていない裁判官人事を丁寧に検証しており、執念の取材を評価して特別賞とした。
このほかにも多数の力作・佳作があったことから、賞の選考にも、多くのエネルギーを要した。今回も未だ見えにくい社会の側面に光を当て、検証し、将来の変革の糸口になるような作品の応募を多数いただいたことに感謝したい。そして、今後もこうした作品が多く世に出て、暮らしやすく多様性が尊重される民主主義社会にジャーナリズムが貢献していくことを、審査員一同、心から願っている。
(3)各賞の紹介
①検証②課題発見③オピニオンの3部門に分けて募集しました。
厳正なる選考の結果、部門賞各1組、及び、全部門を通して最も優れた大賞1組、そのほか特別賞2組が決定。また、受賞には至らなかったものの、選考の過程で特に受賞候補として推薦のあった作品をファイナリストとしてノミネート致しました。
◎ 大賞(合計賞金150万円=部門賞30万円+大賞120万円):
3部門を通して最も優れた記事(大賞作への賞金は部門賞金との合計で150万円を授与)
◎ 検証部門(賞金30万円):
現代政治・経済・社会・先端技術等の重要課題に対処する政策決定過程について、検証・調査した報道
◎ 課題発見部門(賞金30万円):
市民・地域の課題や、光の当たりにくい社会課題などを取り上げ、政治や行政、世論にインパクトを与えた(あるいは将来的に与えうる)報道
◎ オピニオン部門(賞金30万円):
時世に流されず確固たる視点で冷静・鋭い視点を提供した論考、論説、コラム
◎ 特別賞(賞金15万円):
各部門に必ずしも当てはまらないものであっても、選考委員会が特に優れていると判断した報道
◎ ファイナリスト(賞金なし):
各部門のファイナリスト候補記事(優秀作品)
(4)対象記事の条件
1. インターネット上に公開された記事であること。
2. 筆者(または筆者のグループ)につき1つの記事(但し、同じテーマの企画・連載は1つと見做す)を対象とします。尚、連載が3つ以上の記事にわたる場合には、代表的な3つの記事のみを対象に審査致します。
3. インターネット上で公開されている/された報道。雑誌・月刊誌も含まれます。但し、放送法の規定による「放送事業者」によるオンライン記事は除きます。また、動画は審査対象から除外します。
4. フリーランス・個人による報道、組織・チームによる報道であるかは問いません。但し、筆者、あるいは筆者のグループは、報道を主な生業としていることが条件となります。オピニオン部門については、研究者による論考など含め広く募集しますのでこの限りではありません。
5. 言語は日本語とします。
6. 自薦、若しくは、報道機関等メディアや個人による他薦を受け付けます。
※過去の受賞作についてはこちらをご覧ください。
https://peplatform.org/jaward/2021/
政策起業家プラットフォームPEPとは
「政策起業家プラットフォーム(Policy Entrepreneur’s Platform:PEP)」は、2019年10月に一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブが立ち上げた日本初の政策起業家コミュニティです。公のための課題意識のもと、専門性・現場知・新しい視点を持って課題の政策アジェンダ化に尽力し、その政策の実装に影響力を与える「政策起業家」を支援し、公共政策のプロセスへの国民一人一人の参画を促し、より政策本位の政治熟議を生み出すことを目指しています。
https://peplatform.org/