一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(所在地:東京都港区、理事長:船橋洋一、以下API)は、2022年6月13日(月)に、創立10周年記念式典「Dialogues for our Future Initiative~世界との対話・次世代との対話が未来へのイニシアティブを創る」を開催しました。
APIは、改組前の組織である一般財団法人日本再建イニシアティブ(RJIF)が「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」を発表した2012年2月28日を創立記念日と定めています。今回の創立10周年記念式典は、当初2022年2月28日を予定していたのですが、新型コロナ感染症まん延防止等重点措置の発令を受け、開催を延期しておりました。
同式典では、第一部で2つのテーマに関する特別フォーラムを開催した上で、第二部にて交流パーティを開催しました。
第一部の特別フォーラムでは、イノベーションと地経学にフォーカスした2つのセッションを開催しました。
(1)イノベーション:「AI社会における個人と公共」
1つ目のイノベーションのセッションでは、小説家の平野啓一郎氏、東京大学の松尾豊教授、向山淳API主任研究員が、「AI社会における個人と公共」について議論を行いました。
(2)地経学:「ウクライナ戦争と日本/地政学・地経学・国際秩序」
2つ目の地経学のセッションでは、APIの船橋洋一理事長および鈴木一人地経学研究所所長代行(東京大学公共政策大学院教授)、吉岡桂子朝日新聞編集委員(中国・国際経済担当)が、「ウクライナ戦争と日本/地政学・地経学・国際秩序」について、意見を交わせました。
第二部の交流パーティでは、主催者である船橋洋一API理事長からの挨拶の後、来賓として岸田文雄内閣総理大臣、ラーム・エマニュエル第31代駐日米国大使から祝辞を頂きました。その後、新浪剛史API理事(サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)の挨拶の後、APIのこれまでの10年間の物語について執筆された藤吉雅春Forbes Japan編集長より「APIのこれまでの10年間」についてお話し頂きました。最後に、APIの専務理事であり、2022年7月1日にAPIが合併する公益財団法人国際文化会館の理事長である近藤正晃ジェームス氏より、合併後の展望も含めた挨拶を行いました。
船橋洋一理事長挨拶
みなさまお一人お一人に壇上に上がって、ご挨拶をいただきたいところでございますが、後程、私からぜひ、お声がけさせていただきたいと思います。
今日は、この後、岸田文雄総理とラーム・エマニュエルアメリカ駐日大使のお言葉を頂戴することにしております。お二人には感謝の言葉もございません。
APIはこの10年間に35冊の報告書、刊行物を出版してきました。6月13日の本日、出版の著作もございます。これです。船橋洋一『国民安全保障国家論 世界は自ら助くる者を助く』。文藝春秋が出してくれました。お帰りの際、お持ち帰りいただければと存じます。
この10年、福島原発事故とコロナ危機、そしてウクライナ戦争が日本に突き付けた課題と日本の戦略と統治のあり方について記した本です。APIでの10年の研究・検証を踏まえた私のいわば卒論のようなものです。
私が一番最初に本を出版したのは1978年6月、ちょうど44年前になります。『経済安全保障論――地球経済時代のパワー・エコノミックス』というタイトルの本ですが、東洋経済新報社が出してくれました。その本を手にした時あまりに嬉しくて思わず本に頬ずりしてしまいました。それ以来、新しく本を出すたびに頬ずりしてあげることにしています。今日、生まれたばかりの子ですから、みなさまの前で頬ずりしてあげることにします。ほんとに可愛い。産毛が愛おしい。(笑)
最初に、APIのプログラムに参画してくださったすべての方々にお礼を申し上げたいと思います。報告書の筆者の中には、締切が間に合わず、それも二度、三度と間に合わず、もう二度とあの人と一緒にやるのはヤだと思ったこともありましたが、後で反省しました。みんな忙しい中、時間をやりくりして手伝ってくれている、感謝あるのみではないか、市民社会とは人々が互いにやりくりする社会のことなのだから、と。これもこの10年で学んだことの一つです。
私たちのシンクタンクは、<民間、独立、グローバル>の精神を大切にして活動を行ってきましたが、それができたのはひとえに支援者の方々が財政面でしっかりと支えて下さったおかげです。パートナー企業、財団、それから個人で寄付をしてくださった方々に厚く感謝申し上げたいと思います。
そして、APIの評議員と理事のみなさまに心からのお礼を申し上げたいと思います。年に一度、軽井沢で合宿をし、財団の活動のパフォーマンス、ガバナンス、人事、ファイナンス、将来ビジョンについて多くの助言をいただきました。お一人お一人に感謝したいのですが、評議員の江原伸好さんへの謝意を特にお伝えしたいと思います。今回の国際文化会館との合併に当たってAPI側を代表し、見事にまとめ上げてくださいました。有難かったです。
振り返りますと、この10年は、私にとって第二の青春でした。というより青春そのものでした。朝から晩まで、このシンクタンクを育てることだけを考えてきました。青春とは一つのことに夢中になれる心の持ちようだといまにして思います。そんな<アオハル>状態の私に伴走してくれた財団のスタッフ、職員、インターンのみなさんにも感謝あるのみです。ありがとうございました。
最後になりましたが、APIの共同創設者の近藤ジェームスさんと新浪剛史さんのお二人にはこのシンクタンクを一緒に立ち上げてくださったこと、そしてその後10年にわたって育ててきてくださったことに心からのお礼を申し下げたいと思います。苦しいとき、困ったときに、新浪さんのあの親分肌のcan do spirits–新浪さんの場合、animal spiritsといったがいいかもしれませんがーーにどれほど助けられたことか。新浪さん、本当にありがとうございました。
それから、近藤ジェームスさん。この10年間、APIの専務理事として誠心誠意、仕事をしてくださいました。国際文化会館の理事長になられてからもAPIの専務理事を勤め上げてくださったことに心から感謝いたします。2011年の夏、民間事故調のプロジェクトの方を先に立ち上げてしまい、それに必要な資金集めや組織づくりをするため、近藤さんと二人で駆け回りました。あの年の夏はとりわけ暑くて、二人とも汗だくで走り回ったことを思い出します。ワーキングチームの会議用に、塩崎彰久さんが勤める長島・大野・常松法律事務所が会議室を貸してくれました。事務局オフィス用に、ユニクロの柳井さんがミッドタウンの30階の部屋を使っていいよ、と貸してくださいました。その近藤さんが、国際文化会館とAPIの合併を実現し、合併後の新組織のリーダーシップを担うことになりました。私にとってもっとも嬉しく、またもっとも誇りに思うところであります。近藤さんに合併後のAPIのことはすべて託しました。統合後の国際文化会館を世界の知の拠点とし、グローバル・シンクタンクにする大事業が始まるのです。私もグローバル・カウンシルのチェアマンとしてお手伝いいたします。
改めまして、みなさま、本日は、お運びいただき、本当にありがとうございました。
岸田文雄内閣総理大臣ご挨拶
船橋洋一理事長、そしてご出席の皆様方、本日、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ創立10周年を迎えられ、こうして盛大に記念式典が開催されますこと、心よりお慶び申し上げます。
アジア・パシフィック・イニシアティブという、国内政策に影響力を持ち、世界から高く評価される独立系シンクタンクの誕生のきっかけは、2011年の福島第一原発事故でありました。APIの前身である日本再建イニシアティブが主宰されたいわゆる「民間事故調」は未曽有の国家的関心事をあらゆる利害関係から自由な立場で検証し、昨年発表された最終報告書からも明らかなように、虚心坦懐に学ぼうとする姿勢と能力を日本にもたらされました。またデジタル時代のグローバルなルール形成をリードする世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターの設立や、コロナ民間臨調として新型コロナ対策について厳しくも建設的な提言を頂くなど、時代の要請に応え、政府のパートナーでもありました。
船橋洋一さんは日本の誇る知性であり、卓越したジャーナリスト、そして真の国際人であります。米国をはじめ海外に多くの知己を持ち、世界的な知識人との交流を通じ、グローバル世論の形成と、その中における日本のプレゼンス向上に多大なる貢献をしてこられました。エスタブリッシュメントでありながら、常にフレッシュなマインドで新たな挑戦を続けられ、API理事の顔ぶれを見てもわかる通り、幅広い世代と付き合い、後進の育成にも情熱を傾けてこられました。
来月から国際文化会館と合併されるとのことですが、戦後米国との深いパイプを活かして国際文化会館の設立に尽力された初代理事長の松本重治氏も一流の知識人であり、またジャーナリストであったことは、偶然の一致ではないように思います。松本重治さんの思いが70年の時を経て船橋洋一さんの情熱と合流し、日本にゆるぎない知的基盤をもたらして頂いたことに、深い感謝の念を評させていただきます。
本日は政財界から文化人、また文壇人にいたるまで、年代性別もばらばらな多様な方々がお集まりになっておられます。このあたたかく、知的で、前向きなコミュニティこそが、船橋さんとここにご臨席の皆様が築いてこられたレガシーであります。日本が健全な民主主義国家としてアジア・太平洋の平和と繁栄を支える国際秩序の一翼を担い、成熟国家としての役割を果たすために、APIのようなグローバルに通用する真のシンクタンクの存在は不可欠です。重責を受け継がれる近藤正晃ジェームスさんほか、関係者の皆さまにエールを送るとともに、今後ますますのご発展を心からご祈念申し上げます。本日は誠におめでとうございました。
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