API国際政治論壇レビュー(2021年6月)


米中対立が熾烈化するなか、ポストコロナの世界秩序はどう展開していくのか。アメリカは何を考えているのか。中国は、どう動くのか。大きく変化する国際情勢の動向、なかでも刻々と変化する大国のパワーバランスについて、世界の論壇をフォローするAPIの研究員がブリーフィングします(編集長:細谷雄一 研究主幹 兼 慶應義塾大学法学部教授)

本稿は、新潮社Foresight(フォーサイト)にも掲載されています。

https://www.fsight.jp/subcategory/API国際政治論壇レビュー

API国際政治論壇レビュー(20216月)

2021年6月15日

API 研究主幹・慶應義塾大学法学部教授 細谷雄一

【概観】

6月11日からイギリスのコーンウォールではじまったG7サミットは、二年ぶりの対面で、先進民主主義諸国の首脳が集まる会合となった。また、ジョー・バイデンの大統領就任後の、はじめての外国訪問の機会でもあった。

議長国のイギリスと、「民主主義サミット」開催を企図してきたアメリカの、両国政府は「新大西洋憲章」を発表し、民主主義諸国が結集し、国際社会を主導する勢力となる意思を表明した。はたして、コロナ禍で中国やロシアという権威主義体制の影響力が拡大する中で、このG7サミットは民主主義勢力のダイナミズムを回復する契機となるであろうか。

この一ヵ月間で最も注目された国際的なイシューは、引き続き台湾問題をめぐる米中対立と、中国による武力侵攻の可能性をめぐるものであった。中国による台湾の武力統一の可能性については、中国専門家の間でも意見が分かれているが、引き続きこの問題が国際的な関心を惹きつけている。日本にとってもこの問題は無関係ではない。そのような日本周辺における軍事衝突の勃発により巨大な影響を被ることを考えると、そのような危機に対しての適切な情勢認識と、必要な戦略の選択が不可欠であろう。

さらには、オーストラリア、インド、ヨーロッパにおける中国に対する不信感と警戒感の拡大が、新しい国際政治のダイナミズムを生み出している。それがはたして長期的にどのような意味を持つことになるのか、依然として不透明である。だが、引き続きそのような動きに注目して、国際関係がよりいっそう複合的かつ不透明になっていることに留意することが重要だ。実際、この一ヵ月で、EUとインドの関係強化や、欧州のインド太平洋関与の拡大に関連した論考も注目された。

イスラエルにおける政権交代もまた、中東の地域情勢の今後を左右する重要な動向として注目する必要がある。米中対立の構造がもたらすグローバルなレベルでの相互不信と相互の牽制の構図と、それらから自律した地域独自の政治力学が複雑に連動しており、そのようななかで国際情勢の動向を複合的かつ多面的に観ることがこれまで以上に重要となっている。そのような視点から、最近の国際論壇の動向を概観したい。

1.台湾をめぐる懸念の拡大

今年の3月9日に、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官は上院軍事委員会において、「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と発言した。それ以降、専門家の間では、台湾問題をめぐりさまざまな論考が浮上している。はたして中台間での軍事的緊張は、近いうちに軍事衝突へと発展して、東アジアで戦火が勃発するのだろうか。軍事的な危機を強調する論考と、むしろそれを否定、ないしはより抑制的に論じる論考と、双方の主張が見られた。

2012年のアメリカ大統領選挙で共和党候補であったミット・ロムニー上院議員は、いまや台頭する中国がアメリカにとっての深刻な実在的脅威となっている現実から目を背けるべきではないと、『ワシントン・ポスト』紙に寄せた論考で主張する(1-①)。ロムニーの論考は、中国の軍事的脅威を強調するものである。購買力平価では中国経済はすでにアメリカのそれを上回っており、いずれ名目GDPでもそうなるであろう。またすでに太平洋地域における戦力では、中国がアメリカを上回っている。後になってから、それに気がつかなかったということでは手遅れだ。ロムニーはそのように、台頭する中国がアメリカにとって、あるいは太平洋の地域秩序にとっての深刻な脅威となっている現実を直視する必要性を説いている。

それでは、実際に米中間での戦争が現在勃発した場合には、どちらが勝利を収めることになるのだろうか。『2034年』と題する共著でのSF小説のなかで、将来の米中間の軍事衝突のシナリオを描いているジェイムズ・スタヴリディス米海軍提督は、『Nikkei Asia』に寄せた論考では実際にそのような戦争が起こった場合にどちらが勝利を収めるかを、冷徹に分析している(1-②)。元軍人として、イデオロギーや価値判断を排して冷静に軍事バランスを認識して、実際に戦争が勃発した際のシミュレーションをすることは重要だ。もちろんのこと、実際の戦争は多くの不透明性に覆われるであろうが、世界中に兵力を分散させる米軍とは異なり、中国人民解放軍は自国周辺に兵力を集中させており、南シナ海での軍事衝突では中国側が多くの点で有利であることに警鐘を鳴らす。

そのような偶発的な米中間の軍事衝突を懸念しているのは、アメリカのみではない。中国人民解放軍海軍少将である杨毅もまた、アメリカの軍事的挑発により不測の事態が軍事衝突に発展する懸念を示しており、そのような軍事的エスカレーションを統御する必要を説いている(1-③)。米中双方の指導的な地位にある海軍軍人が、同時期にこのような軍事衝突の可能性を懸念しているのは興味深い。双方ともに、その文面からは、危機を回避して戦争の勃発を防ごうとする冷静で理性的な見解がうかがえる。

この一ヵ月で、国際情勢に関連した論考としてもっとも注目されたものが、スタンフォード大学で中国政治を研究するオリアナ・スカイラー・マストロが『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄せた、「台湾の誘惑」と題する論文である(1-④)。この論文の中でマストロは、中国政府が従来の平和的統一路線を修正して、軍事侵攻をする可能性が著しく高まった論理を説明している。すなわち、「中国の指導者たちはかつて、この島を奪取するための軍事作戦は幻想であるとみなしていたが、現在では彼らはそれを現実的な可能性として考慮している」。それゆえ、マストロによれば、「中国による台湾侵攻はすぐには起こらないかもしれないが、過去三十年ほどの間で初めて一世紀にもおよぶ内戦に終止符を打つために、中国が近い将来に軍事力を行使する可能性を真剣に考慮するべき時が来た」という。

このようなマストロの議論に対して、アメリカの代表的な中国専門家のボニー・グレイザーは、そのようなシナリオはあまり現実的ではないとツイッター上で批判した。かつて共著論文も書いているこの二人の中国専門家の間での論争が、アメリカの論壇で注目された。グレイザーは、マストロとは異なり、中国は従来通り、グレーゾーン領域における非軍事的な手段の行使にとどまるであろうと認識する。

グレイザーは米上院軍事委員会での参考人陳述を行い、そのような自らの見解を吐露することとなった。すなわち、「中国の戦略は、これからの十年ほどで、経済的、軍事的、技術的な総合的なパワーを確立することであり、それによって自らの目標を達成することができるであろう」(1-⑤)。そして、「経済的威嚇を、中国の利益を損なうような諸国を懲罰するために、中国政府はこれからよりいっそう多用することになるであろう」。このように、中国政府は、直接的な台湾への軍事侵攻ではなくて、そのような目的を実現するために、むしろグレーゾーン戦術や、経済的威嚇などを用いることになると、グレイザーは想定する。

2.中国の脅威に正しく対応すること

中国が台湾を武力統一する可能性は、はたして高まっているのだろうか。あるいは、グレイザーが説明するように、中国はこれまで通りに非軍事的な手段を主に用いて目的達成を試みるのか。どちらを想定するかによって、日米両国に必要な戦略は異なるであろう。相手の行動を正確に評価して分析することは、いつの時代においても重要ではあるが難しいことである。

中台関係におけるそのような不透明性を前提にしながらも、日米両国は正しい対応を選択することが求められている。安倍晋三政権の対外戦略を立案する立場にあった兼原信克元国家安全保障局次長は、『Nippon.com』に寄せた原稿の中で、「北東アジアで米国が頼れるのは、実は同盟国の日本だけである」と論じる。その上で、「日米同盟が中心となって北東アジアに台湾有事阻止のための万全の抑止力を組み上げなければならない」と主張する(2-①)。なぜ、日本がそのような抑止力強化へと動く必要があるのか。それは、「米軍来援前に短期間で台湾を落とせると中国軍が過信すれば、台湾有事は勃発し得る」からだ。それゆえ「日本の責任は重いが、それは台湾防衛のためだけではない」。なによりもそれは、「先島を始めとする日本の防衛のためでもある」のだ。

<pはたして、日本はそのような重い責任を果たすことができるか。その覚悟が問われるであろう。ランド研究所の日本の安全保障政策の専門家であるジェフリー・ホーナン研究員も、同様の指摘をする。すなわち、実際に台湾有事が勃発すれば、「日本は中立ではいられない」のであり、そのためにどのような軍事的措置が必要となるのかを、事前に十分に検討、そして準備をしなければならないであろう(2-②)。< p=””>他方で、中国が台湾に対する武力侵攻を行うであろうと想定する必然性はない。米国家情報会議議長を務めたグレゴリー・トレバートンは、中国の高齢化や、指導者層の交替などを考慮して、現在の中国の政策が未来永続に続くわけではないのであるから、むしろ中国の脅威を固定的に考慮するべきではないと指摘する(2-③)。中国に対抗することのみを考えて政策を構想するのではなく、アメリカにとっての国益が何なのかを冷静に考慮した上で、政策を検討するべきであろう。

中国の朱鋒南京大学教授もまた、「中国に絶対に負けないというロジックは危険である」と題する、アメリカの政策を批判する論考を『環球時報』紙に寄せている(2-④)。中国を代表する国際派の国際政治学者で、アメリカにも友人が多い朱は、パンデミックや気候変動での米中協調が今後よりいっそう重要となり、またサプライ・チェーンを完全に米中間で分断することも不可能だと論じる。にもかかわらず、アメリカ政府が中国に対抗することのみを想定して政策を立案することに対して、このような冷静な批判も数多く見られた。

同様の認識として、ランド研究所のラファエル・コーエンは、アメリカの防衛戦略文書の中から、「競争」という用語を削除する必要を論じている(2-⑤)。すなわち、トランプ政権下の2018年の「国家防衛戦略」(NDS)の国防省文書においては、「大国間競争」という言葉が用いられており、それがその後の米中関係およびアメリカの対中戦略を規定する認識として浸透した。しかしながら、対中関係においては「競争」がすべての領域を覆っているわけではなく、依然として協力すべき政策領域は少なくない。他方、「競争」という中間的な状況が必ずしも永続するとは限らず、米中間での戦争へとそれが発展する可能性も同時に考慮せねばならない。それゆえコーエンが論じるように、それ自体が目的化するようなかたちで「競争」という曖昧な言葉が米中関係全体を規定することは、必ずしも台頭する中国に対する適切な対応とはいえないともいえる。

3.結束を強化する民主主義諸国

議長国であるイギリスのコーンウォールで6月11日からはじまったG7サミットは、コロナ禍で中国やロシアのような権威主義体制の大国が影響力を拡大するなかで、民主主義諸国が再び主導権を回復するための重要な機会と位置づけられた。それを主導したのが、議長国であるイギリスのボリス・ジョンソン首相と、これまで「民主主義サミット」の開催を重要な外交目標のひとつと位置づけてきたジョー・バイデン大統領の二人である。この二人が、第二次世界大戦中のチャーチル首相とルーズヴェルト大統領の二人によって署名された大西洋憲章を想起して、6月10日に「新大西洋憲章」を発表した背景には、そのような意図が見られた。これについての論考は、これからいくつか見られるようになるであろう。

バイデン大統領はイギリスに向けて飛び立つ少し前の6月6日に、『ワシントン・ポスト』紙において、「私の欧州訪問は、アメリカが世界中の民主主義諸国を結集させるためである」と題する論考を掲載した(3-①)。すなわち、「この訪問は、アメリカが同盟諸国やパートナー諸国への再生された関与を実現させるためのものであり、また諸課題に対応し、新しい時代の脅威を抑止するための民主主義諸国の威力を示すためのものである。」その一つの成果は、G7としての、資金および現物供与としての10億回分相当のワクチンの支援を国際社会にむけて行う意思を表明したことにも示されている。

この間、オーストラリアをはじめとする民主主義諸国に対して、事実上の経済制裁やさまざまな軍事的圧力をかけることで、中国は自らの意向に従わせようとしてきた。そのような威圧的な対外姿勢は、蔡英文政権の台湾や、一部の欧州諸国にも向けられ、大きな反発を生んでいる。鎖の脆弱な結び目をめがけて、中国政府は強力な圧力をかけることで、自らの意向を強制させようとする姿勢を繰り返すようになってきた。

それに対して、チャールズ・エデル元米海軍大学校教授は、対中貿易が全体の40%を占めるオーストラリアがそのような中国の懲罰的措置にさらされている厳しい現状に注目して、民主主義諸国が結束してそのよう中国の圧力に対抗する必要を指摘する(3-②)。そのような中国によるオーストラリアに対しての経済制裁や貿易規制措置は、むしろ中国経済にとっても大きなリスクとなり経済成長への阻害要因となっている。とはいえ、そのような中国の行動に対抗するためには民主主義諸国による「共同戦線」の確立が不可欠となっており、オーストラリアを置き去りにしないことが戦略的にも重要となっている。

中国は、そのようなかたちでアメリカの影響力が拡大することを懸念している。たとえば復旦大学米国研究センターの张家栋は、「アメリカによる中間国家に圧力をかける戦略は長続きしないだろう」と題する『環球時報』に寄せた批判的な論考の中で、アメリカが米中対立の構造における「中間国家」への影響力を拡大しようとしつつあることへの懸念を示している(3-③)。そして、そのような動きとは一線を画して、中国との良好な関係を維持しようと試みるニュージーランド政府の対応を、この論考の中で高く評価している。アメリカによるワクチンの供与やサプライ・チェーンの再編について詳細に論じられており、そのことは中国国内でもアメリカの動きに注目して、そのような動向が中国経済や中国の国際的地位に負の影響を及ぼす可能性を警戒している証左かも知れない。

4.欧州のインド太平洋戦略

「はたして欧州は無力なのか?」

これは、ハーバード大学教授の著名な国際政治学者、スティーブン・ウォルトが投げかけた問いである(4-①)。これに対して、ウォルトは、冷戦初期の時代とは異なり現在のロシアはヨーロッパにとってのそれほど大きな脅威とはいえず、過度にヨーロッパがアメリカに依存するような冷戦時代の米欧関係の構造は不必要であり、また不適切であると主張する。いわば、マクロン仏大統領が掲げる「戦略的自律」を歓迎する主張であり、またバイデン大統領が再び欧州関与を強めようとする動きに対する牽制でもある。

以前からウォルトは、「オフショア・バランシング」と称する、アメリカの過剰な対外関与には批判的な姿勢を示しており、そのようなウォルトの立場は、アメリカの中東関与や台湾関与に関する彼の論考においても同様に示されている。はたして、バイデン政権が進めるような米欧関係の強化と、アメリカの欧州関与の拡大の路線が望ましいのか。あるいはウォルトが論じるような、地域の自律性を促し、アメリカはそこから一定の距離をとることが適切なのか。今後もアメリカ国内では、このような論争が続くことであろう。注目していきたい。

ウォルトがそのような主張を行う一方で、EUは独自の外交を展開して、とりわけ最近はインドへの接近が顕著となっている。これは、EUがインド太平洋戦略を構築して、この地域への関与を拡大しようとしていることへのインドの関心が強まっていることの証左であり、また経済的にも人口拡大が約束されているインドに対してEUが関係強化を欲していることの帰結ともいえる。インド太平洋の重要性が増す中で、EUと中国の関係の冷却化が続いていけば、このようなEUとインドとの関係の強化はしばらく続いていくであろう。そのような傾向は、ジョゼップ・ボレルEU外交安全保障上級代表による『Nikkei Asia』でのインタビューや(4-②)、インドのモディ首相による共著論文(4-③)において示されている。

他方で、EUおよび欧州諸国のインド太平洋関与がどの程度永続的で、どの程度強固なものであるかについては、疑問も上がっている。『フィナンシャル・タイムズ』紙の中国特派員記者のケイトリン・ヒルは、欧州諸国でそれぞれ思惑が異なることもあり、どの程度その影響力が実質的であるのか、また中国のこの地域での影響力拡大にどの程度米欧が結束を示して協力を深化できるのかについて、否定的な見解を示している(4-④)。象徴的な意味で欧州諸国が軍艦をインド太平洋に派遣したとしても、それらの諸国にとっての中国市場の重要性と、中国との経済関係の重要性は必ずしも減少しておらず、過度に欧州諸国の影響力を高く見積もることには慎重であるべきだという見解は、傾聴に値する。

5.中東和平をめぐる新しい動き

米中対立に関する報道が溢れる中でも、国際社会で新しい動きが見られている。そのなかでも重要なものの一つが、イスラエルで12年間におよぶリクードによる統治が終焉を迎え、その党首であったベンヤミン・ネタニヤフが首相の座から降りたことである。

そのようななかで、中東和平をめぐる動きにも、新たな潮流が見られるようになった。『エコノミスト』誌は社説で、「二つの国家か、それとも一つの国家か」と題して、オスロ合意に基づく二国家解決案の限界と、新たに浮上する「一国家案」の実効性について論じている(5-①)。バイデン大統領も日本の外務省も、基本的には二国家解決案を支持している。しかしながらこの方式はいまや、大きな行き詰まりを迎えている。このことは、仏『ル・モンド』紙でも取り上げられ、これまでの「パラダイムが変化」している現状に注目する(5-②)。バイデン政権の成立とイスラエルの政権交代が、はたしてこれまでの中東和平の方式どのような新しい動きをもたらすのか、注目せねばならない。

他方で、仏『ル・フィガロ』紙において、76人の政治家やジャーナリスト、研究者、弁護士などが連名で共同の寄稿を掲載していることにも注目したい。そこには、マニュエル・ヴァルス元仏首相や、フィリップ・ヴァル元『シャルリー・エブド』編集長らも名前を加えており、イスラム過激派のハマスの攻撃を批判して、イスラエルの立場を支持するものである(5-③)。これまで、フランスにおいてはイスラエルに批判的で、パレスチナやアラブ諸国に共感を示すリベラルな見解が主流であったが、このように明確にイスラエルの立場を擁護する連名の記事が掲載されるのもまた、新しい動きともいえる。イスラム主義の暴力を擁護してきたことが、中東和平の障害になってきた現実を直視して、それを非難することが求められていることを主張する。

バイデン政権の成立は、必然的に、インド太平洋地域、中東、ヨーロッパなどの地域において新しい国際政治のダイナミズムをもたらすであろう。そこには、地域独自の政治力学と、他の地域や主要な大国の外交との連動と、双方の動きが見られる。引き続き、そのような複雑で、複合的で、不透明な国際情勢の動向をフォローしていきたい。

【主な論文・記事】
1.台湾をめぐる懸念の拡大

Mitt Romney, “We can’t look away from China’s existential threat(我々は中国の実存的脅威から目を背けることはできない)”, The Washington Post, May 13, 2021, https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/mitt-romney-china-threat/2021/05/12/9651dcf2-b271-11eb-9059-d8176b9e3798_story.html
James Stavridis, “If the US went to war with China, who would win?(もしも米中が戦争になったら,誰が勝つのか?)”, NIKKEI ASIA, May, 30, 2021, https://asia.nikkei.com/Opinion/If-the-US-went-to-war-with-China-who-would-win
杨毅(Yang Yi)「谨防“意外事故“引发中美战略危机(不慮の事故を引き金とする米中戦略危機を警戒するべき)」『环球网』、2021年5月25日、https://opinion.huanqiu.com/article/43G8Tu7jqB5
Oriana Skylar Mastro, “The Taiwan Temptation: Why Beijing Might Resort to Force(台湾を侵略する誘因:なぜ中国は武力に訴える可能性があるのか)”, Foreign Affairs, July/August 2021, https://www.foreignaffairs.com/print/node/1127523
Bonnie Glaser, “Statement before the Senate Armed Services Committee Hearing on ‘The United States’ Strategic Competition with China’ A Testimony by Bonnie S. Glaser”, June 8, 2021, United States Senate Committee on Armed Services, https://www.armed-services.senate.gov/imo/media/doc/SASC%20testimony,%20June%208,%202021.pdf

2.中国の脅威に正しく対応すること

Kanehara Nobukatsu, “Deterring a War in the Taiwan Strait: A Bigger Security Role for Japan is Key(台湾有事阻止のために日米で万全の抑止力を:防衛力増強など新たな政策が必要)”, Nippon.com, Jun 2, 2021, https://www.nippon.com/en/in-depth/a07402/
Jeffrey W. Hornung, “What the United States Wants From Japan in Taiwan(台湾問題でアメリカが日本に望むこと)”, Foreign Policy, May 10, 2021, https://foreignpolicy.com/2021/05/10/what-the-united-states-wants-from-japan-in-taiwan/
Gregory F. Treverton, “Think again about China(中国についてもう一度考えよう)”, The Hill, May 30, 2021, https://thehill.com/opinion/international/556117-think-again-about-china
朱锋(Zhu Feng)「“绝不能输给中国“是一种危险逻辑(中国に絶対に負けないというロジックは危険である)」『环球网』、2021年5月27日、https://opinion.huanqiu.com/article/43Hm7DIOW1l
Raphael S. Cohen, “It’s time to drop ‘competition’ from US defense strategy(そろそろ国防戦略から「競争」を削除するべきだ)”, The Hill, May 17, 2021, https://thehill.com/opinion/national-security/553787-its-time-to-drop-competition-from-us-defense-strategy

3.結束を強化する民主主義諸国

Joe Biden, “My trip to Europe is about America rallying the world’s democracies”, The Washington Post, June 6, 2021, https://www.washingtonpost.com/opinions/2021/06/05/joe-biden-europe-trip-agenda/
Charles Edel, “Winning Over Down Under(ダウンアンダーを制するには)”, American Purpose, May 3, 2021, https://www.americanpurpose.com/articles/winning-over-down-under/
张家栋(Zhang Jiadong)「美国重压“中间国家“策略难持久(アメリカによる中間国家に圧力をかける戦略は長続きしないだろう)」『环球网』、2021年5月31日、https://opinion.huanqiu.com/article/43LEHCC1dX9

4.欧州のインド太平洋戦略

Stephen M. Walt, “Exactly How Helpless Is Europe? (はたして欧州はどれだけ無力なのか?)”, Foreign Policy, May 21, 2021, https://foreignpolicy.com/2021/05/21/exactly-how-helpless-is-europe/
Yasuo Takeuchi, “Transcript: EU foreign policy chief Josep Borrell comments on Indo-Pacific strategy(ジョゼップ・ボレルEU外交安全保障上級代表、インド太平洋戦略についてコメント)”, Nikkei Asia, 7 May, 2021, https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/Transcript-EU-foreign-policy-chief-Josep-Borrell-comments-on-Indo-Pacific-strategy?n_cid=DSBNNAR
Narendra Modi・António Costa, “Trade and beyond: a new impetus to the EU-India Partnership(貿易とその先へ):EUとインドのパートナーシップへの新たな推進力)”, Politico, 7 May, 2021, https://www.politico.eu/article/trade-eu-india-partnership-narendra-modi-antonio-costa/
Kathrin Hille, “European show of support for US in Indopacific will remain limited(欧州のインド太平洋における米国への支援表明は限定的なものになるだろう)”, Financial Times, 19 May, 2021, https://www.ft.com/content/fac21cf6-076d-4c6e-8596-f8c203011a48

5.中東和平をめぐる新しい動き

Leaders, “Two states or one? (二つの国か、それとも一つの国か)”, The Economist, May 27, 2021, https://www.economist.com/leaders/2021/05/27/two-states-or-one
Edirotial, “Israël-Palestine : changer de paradigme (イスラエル・パレスチナ:パラダイムの変化)”, Le Monde, May 22, 2021, https://www.lemonde.fr/idees/article/2021/05/22/israel-palestine-changer-de-paradigme_6081134_3232.html
Manuel Valls & Philippe Val et al, “Ceux qui menacent Israël nous menacent aussi (イスラエルを脅迫するものは、我々を脅迫していることと同様である)”, Le Figaro, May 18, 2021, https://www.lefigaro.fr/vox/monde/ceux-qui-menacent-israel-nous-menacent-aussi-20210518

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</pはたして、日本はそのような重い責任を果たすことができるか。その覚悟が問われるであろう。ランド研究所の日本の安全保障政策の専門家であるジェフリー・ホーナン研究員も、同様の指摘をする。すなわち、実際に台湾有事が勃発すれば、「日本は中立ではいられない」のであり、そのためにどのような軍事的措置が必要となるのかを、事前に十分に検討、そして準備をしなければならないであろう(2-②)。<>