一般財団法人日本再建イニシアティブ(船橋洋一理事長)は、この度「人口民間臨調」での議論をベースとして、『人口蒸発「5000万人国家」日本の衝撃』を刊行しました。
このまま、いまの出生率が続けば、100年前にほぼ5000万人だった日本の人口は、今世紀末には同じ5000万人に縮小する。それも、明治時代のように若者が満ち溢れていた国ではなく、高齢化率が40%に達する、老いた5000万人国家である。そうなった場合、日本の社会の活力と国の生命力は衰弱し、嫉妬の政治が横行し、国民は自信を失い、悲観論に囚われ、刹那的になる恐れが強い。私たちが連綿と育んできた文化も伝統も維持できなくなるだろう。決して、そうあってはならない。そうさせてはならない。
本書では、以下を目的に、調査・報告します。
- 人口動態が日本の社会構造の様々な側面に影響を及ぼしていく様子について、首都圏、生活インフラ、財政・経済という切り口から取り上げることで人口問題の深刻さを訴える。
- 人口、国土、政治の観点から、過去政策の失敗の検証をする
- 失敗の検証をもとに、効果的な人口政策を提言する。ここでいう人口政策とは、人口減少過程において回復に向けての「緩和」策とその過程での生活水準を維持、向上させるための「適応」策の双方を含む取組みのことである。
タイトル:
人口蒸発「5000万人国家」日本の衝撃 -人口問題民間臨調 調査・報告書-
著者
一般財団法人 日本再建イニシアティブ
出版元
新潮社
章 | 内容 |
---|---|
はじめに | 私たちが十分に認識してこなかった点は、今後の人口減少のスピードの速さであり、それに伴う「負の連鎖」のスケールの大きさである。人口減少が引き起こす4つの負の連鎖に内在するリスクや、人口問題がもたらす価値観の葛藤から、複雑に絡み合う人口減少問題を紐解く。 |
第1章 首都圏ショック |
人口減少は静かに、しかし確実に首都圏をも蝕んでいる。すでに千葉県銚子市や神奈川県横須賀市など外縁部から衰退は本格化し始めており、都心への通勤圏でもニュータウンを中心に生気を奪われたような街が目立ってきている。 |
第2章 地方の生活インフラの崩壊 |
人口減少は地域の姿をどのように変えていくのか?人々が暮らしていく上で不可欠な生活インフラの維持が人口減少によりどのように難しくなっていくのかを綿密なデータを基に検証する。 |
第3章 人口動態とマクロ経済・財政 |
日本経済が直面する最大の難問は、人口減少が進むなかで、財政再建を図らなければならないことだ。労働生産性を高め、財政・社会保障改革に取り組まなければ、国債暴落という最悪の事態を招いてしまう恐れがある。 |
第4章 人口政策 |
なぜ人口問題は放置されてしまったのか?その背景には、国家が「産めよ殖やせよ」を強要した戦前の軍国主義への反省、戦後の人口過剰と食料不足時代の記憶、さらには、人口の変化に対する国の認識の甘さなど、さまざまな要因があった。 |
第5章 国土(地方・行政)政策 |
東京、大阪、名古屋の三大都市圏へ人口が集中した国土のアンバランスな状況を解消するために1960年代以降、大規模な地方開発政策が進められたものの、思うような成果は得られなかった。そんななか1980年代後半からは東京のみへの一極集中が進んでいる。 |
第6章 人口問題とシルバー民主主義 |
多数派となった高齢者が、若年者、次世代から搾取する--。これがいわゆるシルバー民主主義の問題だ。人口減少局面において民主主義は十全に機能しうるのか?世代間対立を回避するために何が必要なのか考える。 |
第7章 人口増加策と財政 |
人口減少と少子高齢化により、日本の財政・経済は縮小均衡に向かいつつある。このままでは、日本は長期的な停滞に陥ってしまう。それを防ぐ鍵を握るのは、大胆な少子化対策の断行と外国人労働力の活用だ。 |
第8章 人口・国土の最適再配置 ・エリアマネジメント ・危機管理 |
地方都市再生の切り札として注目される「コンパクトシティ」。その成否は人口密度をいかにコントロールするかにかかっている。同時に「広域連携」と「地方自治改革」を推し進め、「人口ダム」となるような中規模都市を増やして、大都市、特に東京への一極集中を解消する必要がある。 |
第9章 地域の人口減少にビジネスで対抗する |
地域で魅力的な雇用を生むビジネスは人を惹きつけ、人口減少のスピードを緩める。地域と密着しながら存続する企業は、人口減少にあえぐ地域経済に活気をもたらす。日本各地での成功例を紹介する。 |
政策提言 | 新たな人口政策と政策を実現する体制の輪郭を示す。 |