新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2025年は、国際秩序を支えてきた前提そのものが大きく揺らぐ一年となりました。かつて国際公共財の提供主体とみなされてきた大国が、必ずしもその役割を自明のものとして担わなくなり、国際社会は「誰が秩序を支え、誰が責任を引き受けるのか」という根源的な問いに直面しています。安全保障、経済、技術、環境、文化といった分野において公共性の担い手が分散し、国家間の協調が一層困難になる中で、国際社会は新たな均衡点を模索する局面に入ったと言えるでしょう。
こうした構造変化の中で、地政学、地経学、技術革新、文化と公共性といった複数の課題が同時に進行し、従来の枠組みでは捉えきれない現実が広がっています。だからこそ、短期的な利害や即時的な解決策にとどまらず、異なる立場や価値観を持つ主体が対話を重ね、知を蓄積していくための知的基盤の重要性が、これまで以上に高まっています。
このような環境のもと、国際文化会館プログラム部門は、「国際関係・地域研究・地政学」「社会システム・ガバナンス・イノベーション」「文明論・哲学」「アート・デザイン」という四つの知的領域を柱に、政策研究、国際対話、人材育成を一体として進めてきました。単発の議論やイベントにとどまるのではなく、継続的な知的ネットワークを形成し、異なる立場や価値観を持つ参加者が時間をかけて議論を深められる場を提供することを重視してきました。
2025年は、こうした構想が具体的な活動として着実に形を成し始めた一年でもありました。国際会議や政策対話の継続的な開催、研究と発信の強化、次世代を担う研究者・実務家の育成を通じて、プログラム部門は政策シンクタンクとしての基盤を一段と強化することができたと考えています。同時に、外部環境の急激な変化に直面する中で、特定の国や制度に過度に依存しない、より強靱で開かれた知的基盤の重要性を、組織として改めて認識する一年でもありました。
2026年、国際文化会館プログラム部門は、これまでに培ってきた知的基盤とネットワークを土台に、さらに一歩踏み込んだ取り組みを進めてまいります。日米をはじめとする国際的な知的交流の新たな枠組みづくりに加え、人工知能(AI)と軍事・地政学、社会システムを横断する新たな研究プロジェクトを始動させる予定です。技術革新が安全保障や統治、社会のあり方に与える影響を、理論と実務の双方から検討し、政策的含意を提示することを目指します。
また、プログラム部門の活動と思想をより明確に発信するため、情報発信基盤の整備にも取り組みます。四つの知的領域がどのように相乗し、公共知の創出というミッションに向かって動いているのかを、より分かりやすく共有していく考えです。
不確実性が常態化する時代において、短期的な成果や即時的な答えを求める誘惑は強まっています。しかし、そのような時代だからこそ、時間をかけて信頼を築き、対話を積み重ね、知を蓄積していく営みが不可欠です。国際文化会館プログラム部門は今後も、自由で開かれた知的空間を支え、社会にとって意味のある対話と政策的知見を提供し続けてまいります。
国際文化会館常務理事
APIプレジデント 神保謙

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