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一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの相良祥之主任研究員の論考 「ロシアのウクライナ侵略はどのように終わるのか:交渉による和平合意か、プーチンの侵略の継続か」(上・下) が、2022年3月16日付のForesight(フォーサイト)に掲載されました。
記事のポイントは以下のとおりです。全文はフォーサイト会員のみお読みいただけます。
(上)紛争当事者の立場と利害関心、プーチン大統領の意図という最大のドライバー
https://www.fsight.jp/articles/-/48718
・情勢が不透明であればこそ、起こりうるシナリオを楽観的なものから悲観的なものまで、できるだけ幅広く想定する。それがなければ進行中の危機に対処できない。
・米国を中心にG7と欧州など西側諸国は、政治的・外交的にはウクライナ支援で結束し、経済的には強力な経済制裁を発動しもはや当事者。軍事的には直接の当事者となることを避けている。
・紛争を理解する際には、その激化と沈静化を左右する「ドライバー」(主たる変数)を把握することが不可欠。ロシアのウクライナ侵略において最大のドライバーは、プーチン大統領の意図。プーチン大統領が米国やNATOをはじめとする西側への不満と、偏狭なナショナリズムに突き動かされ、ウクライナ侵略をかたく決心していたことである。この決意がどこかで揺らぐのか、あるいは一心不乱にウクライナ侵略を完遂させるまで突き進むのか。このプーチン大統領の意図こそが、一番の不確実性をはらむとともに、侵略の終わり方を左右する最大のドライバーである。
(下)楽観シナリオ:交渉による和平合意、和平交渉における争点、中長期的に重要なロシアと西側諸国との多国間交渉、悲観シナリオ:プーチンの侵略の継続
https://www.fsight.jp/articles/-/48719
・プーチンが経済制裁の痛みや中長期的な展望の暗さを合理的に判断し、どこかのタイミングで侵略を中止し、和平交渉が進展するのが楽観シナリオ。
・ロシアとウクライナが交渉により和平合意をめざす場合、協議の争点は停戦、ロシア軍撤退、ドンバスとクリミアなどロシア実効支配地域の「国家」承認など多岐にわたる。ロシアは軍事侵攻をつづけており単なる「停戦協議」には関心がない。
・経済制裁とは、相手国の方針の転換をはかるため、経済的な痛みを与える政策。対ロシア制裁は、その対象の広範さと迅速さにおいて過去に類を見ない強烈なもの。ウクライナの抵抗が長引き、さらにロシア経済が悪化すれば、プーチン政権の正統性が根幹から揺らぐ可能性もある。
・和平交渉が進展するには紛争の機が熟す(ripe)ことが必要。紛争当事者が、相互に痛みが耐えがたい膠着状態(mutually hurting stalemate)にあることが、戦闘継続とエスカレーションの連鎖から和平交渉へと進む条件となる。ゼレンスキー大統領とプーチン大統領の両方が、あまりに戦争を続けることの痛みが大きく、もう続けられないと判断すれば、妥協点を探る作業に進むことになる。そこではじめて交渉による和平合意への道が開く。
・人道回廊とは和平合意どころか、停戦にすら手が届かない、きわめてハードルの低い合意事項。シリアやイエメンのような絶望的な内戦で、せめてこれだけは設定してくれ、というものでしかない。攻勢を強めていたロシアにとって切れる一番簡単なカードのひとつ。
・現時点では仲介や和平調停も期待ができない。攻勢をかけてきたロシアにとって、いま仲介者をいれて交渉するメリットがない。
・中長期的に考えて仲介より重要な点は、どこかのタイミングでロシアと西側諸国との多国間交渉が必要になること。この戦争はロシアとウクライナの二国間交渉だけでは終わらない。アメリカや欧州、そして日本など西側諸国が強力な経済制裁をかけており、もはや実質的な当事者になっているため。
・悲観的なシナリオはプーチンの侵略の継続。ロシア経済が崩壊しようがオリガルヒが離反しようがためらうことなく、目標完遂に向け一心不乱に突き進む。5つのパターンが考えられる(※各シナリオの詳細は本文をご覧ください)。
- 泥沼化
- NATO軍事介入によるエスカレーション
- 東西分裂
- ゼレンスキー政権の降伏
- プーチン大統領の失脚あるいは死去
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