船橋洋一理事長は、公益財団法人・新聞通信調査会が主催する3月30日の講演会において、「地政学・ポピュリズム・メディア」をテーマに講演し、その要約が同調査会が発行する「メディア展望」5月号に掲載されました。
船橋理事長はこの講演でまず、第2次大戦後の国際社会の基盤となりその発展を導いてきた国際的な秩序やルールについて、力の強い国、大国が、自分にとって都合がいいように作り変えようとする時代に入っている、として強い危惧を表明しました。
そうした大国の第1に中国をあげ、ここ10年で中国が意識も行動も大国化し、覇権国として国際的なルールに挑戦するようになってきたようすを、多角的に描きました。そのように力を強めていく中国を「戦略的な競争相手」と位置づけるようになった米国もまた、トランプ政権のもとで、自らつくり育ててきた戦後国際秩序を無視し、アメリカ・ファーストで行動するようになってきました。
そのトランプ氏はポピュリズムをあおって大統領に当選し、基盤となったのは「黒人差別」の感情をもつ層だったが、それだけでなく、それぞれのコミュニティーで約束事を守り生真面目に生活してきた人たちの不満がポピュリズムの源泉になっている、と船橋理事長は分析しました。
そして、ビッグデータや映像・音声の編集技術を悪用して、インターネットでフェイクニュースを拡散させ、ポピュリズムをあおる。真実のニュースとフェイクとを区別できない時代に入りつつあるとして、メディア、そして民主主義が危機に直面していると訴えました。
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