API国際政治論壇レビュー(2021年7月)


米中対立が熾烈化するなか、ポストコロナの世界秩序はどう展開していくのか。アメリカは何を考えているのか。中国は、どう動くのか。大きく変化する国際情勢の動向、なかでも刻々と変化する大国のパワーバランスについて、世界の論壇をフォローするAPIの研究員がブリーフィングします(編集長:細谷雄一 研究主幹 兼 慶應義塾大学法学部教授)

本稿は、新潮社Foresight(フォーサイト)にも掲載されています。

https://www.fsight.jp/subcategory/API国際政治論壇レビュー

API国際政治論壇レビュー(20217月)

2021年7月14日

API 研究主幹・慶應義塾大学法学部教授 細谷雄一

1.バイデン・ドクトリンとは何か

今年1月に誕生したアメリカのバイデン新政権は、対外政策の基本方針を民主主義体制と専制主義体制との体制間競争に置いており、この認識において、前政権とは異なる新しい姿勢を示している。それは、しばしば自由主義や民主主義のイデオロギーを攻撃し、権威主義体制下の強い指導者をときおり賞賛するとともに、同じ民主主義を掲げる同盟国に対する厳しい批判を繰り返していたドナルド・トランプ前米大統領の対外認識とは異なるものであった。そして、そのようなバイデン政権の対外認識に基づくとすれば、中国やロシアといった専制主義体制の諸国との競争が長期にわたるものになること、そして価値を共有する自由民主主義体制の同盟国との協力関係がその競争に勝利するための鍵となることは、明らかである。

こうしたバイデン政権の外交戦略の構図を明瞭に、そして説得的に論じたのが、アメリカのグランド・ストラテジーについていくつもの優れた著作を刊行してきた、戦略史研究の若き俊英、ハル・ブランズである。ブランズは『フォーリン・アフェアーズ』に寄せた論文で、そのような外交戦略を「バイデン・ドクトリン」と呼び、民主主義と権威主義の間の体制間競争が長期化していくこと、そしてその中では、価値を共有する同盟国との協力関係や、幅広い国民的支持を取り付けるような外交と国内政治との連携が重要であることを指摘する。他方でブランズは、バイデン・ドクトリンが、権威主義諸国からの挑戦、新型コロナウイルス感染症のグローバルなパンデミックという挑戦、さらには国内での民主主義の後退という挑戦の三つの困難な問題に直面している現実を描写する。(1―①)

このような構図で現代の世界政治を眺める姿勢は、ほかの多くの論者にも共有されている。またその外交ドクトリンに基づいた政策の論理的な帰結として、NATO(北大西洋条約機構)諸国や、EU(欧州連合)諸国といった価値を共有する民主主義諸国の間で、協力関係を再強化することが求められている。それゆえ、元NATO事務総長であり、またEU共通外交・安全保障政策対外代表であったハビエル・ソラナは、ジョー・バイデン米大統領のG7サミットやNATOサミットなどへの参加のための欧州訪問を、「アメリカのカムバック・ツアー」と称して賞賛している(1―②)。バイデン大統領の訪欧を高く評価するのは、仏『ル・モンド』紙も同様であり、それを「アメリカ外交の復権」と呼んで歓迎する(1―③)。

アメリカ国内でもバイデン大統領の欧州訪問を高く評価する論調が目立つ。たとえば『ワシントン・ポスト』紙のコラムニスト、ジェニファー・ルービンはこれを、「アメリカは戻ってきた。そしてこれは人気だ」と論じ(1―④)、また『フォーリン・ポリシー』誌でも米元外交官のダニエル・ベアーは、「中国に対して同盟国と提携を結ぶバイデン氏」の行動を「歴史的転換」と位置づけている(1―⑤)。ブッシュ(子)共和党政権で国家安全保障会議アジア担当上級部長を務めたマイケル・グリーン・ジョージタウン大学教授もまた、民主主義諸国間の連携が不可欠のものであり、それを強化することが賢明な政策だと擁護する(1―⑥)。

民主主義勢力の内部でバイデン大統領の対外戦略が高く評価された一方、対立する権威主義体制下の中国メディアではそれを批判する論考が目立った。たとえば、民主主義諸国の結束を誇ったG7サミットの成果を受けて、中国の『環球時報』紙の社説では、「G7共同声明は話題を煽るが、中国人はその手は喰わない」と論じ(1―⑦)、さらに『人民日報』紙の社説では「小さな輪を作り、集団政治を行うことは流れに逆らっている」と論じるなど(1―⑧)、民主主義諸国間における結束の強化を批判している。

ただ、その批判の論調は必ずしも強烈なものではなく、むしろ国際派の王缉思北京大学教授(1―⑨)や朱锋南京大学教授(1―⑩)の中国紙へ寄せた論考からは、アメリカが対中強硬路線を採ることを批判して、米中協力を復活させる意義を想起させるような印象を与えている。

やはり、中国政府も国際的な孤立を懸念して、対中批判の輪が広がることは望んでいない証左といえる。

2.中国と体制間競争をする財源はあるか

今回のG7サミットでは、合意文書としてはじめて台湾の問題が含まれたことが注目された。台湾の安全をめぐる米中対立は、米中二国間関係という枠組みを超えて、日米関係や、クアッド首脳会談、さらにはG7サミットといった枠組みにまで巨大な影響を及ぼしている。カナダのマクドナルド・ローリエ研究所で上席研究員を務める中国問題が専門のマイケル・コールは、G7サミットの合意文書の中で、民主主義体制対権威主義体制という大きな構図の中に台湾問題を位置づけていることを高く評価している(2―①)。だが、そのような「戦線」の拡大に対して、アメリカの国内外の一部では懸念や不安が広がっている。

たとえば、イギリスの左派系の高級紙『ガーディアン』では、コラムニストのラファエル・ベアが、バイデン大統領がG7サミットにおいて「次の冷戦」へ向けて同盟国を募っていることに警戒感を示し、アメリカ政府の対欧州接近を手放しで喜ぶ欧州諸国を批判する(2―②)。この『ガーディアン』紙のコラムは、6月9日の『環球時報』の社説でも紹介されていることは興味深い。同様に、アメリカ民主党左派を代表して大統領選挙の民主党予備選をバイデンと戦ったバーニー・サンダースは、『フォーリン・アフェアーズ』誌への論考の中で、新しい対外政策の潮流を「危険な対中ワシントン・コンセンサス」と激しく批判し、タカ派的な対外姿勢が「新しい冷戦」を始めることを警戒する(2―⑦)。これらの米英両国内の左派系の論者は、新型コロナ禍で逼迫する財源を国内の貧困問題への対処や、医療や社会保障のためによりいっそう割くべきだという姿勢で共通する。

アメリカのリベラル派を代表するコラムニストのファリード・ザカリアも、バイデン政権の対中強硬路線には冷ややかだ(2―⑨)。サンダースほど激烈な批判ではないが、対中強硬路線が強まるバイデン政権の対外政策に対して、経済問題や気候変動問題、国内の分裂への対処をむしろ優先するべきだという論調は、アメリカ民主党内の左派系の支持者層の間で幅広く見られる傾向ではないだろうか。だが、そのような認識は、過去10年間でアメリカ外交ではなく、中国外交がより自信に満ちて、強硬で、強大な軍事力によりいっそう依拠するような、そして「戦狼外交」に代表されるような、国際的な規範を無視する行動に傾斜していることを十分に考慮に入れていないようにも思える。

バイデン政権の対外政策に懸念を示すのは、民主党左派からだけではない。共和党支持者層の安全保障専門家らは、異なる視点からバイデン政権の対外政策を批判する。すなわち、バイデン・ドクトリンとして示されるイデオロギー対立の構図自体はトランプ政権から継承されるものだとしても、バイデン政権ではそのような競争を現実に遂行していく上での十分な財源を確保しておらず、それを実践するのが困難だという批判である。ブッシュ(子)共和党政権で国防総省での勤務の経験があるマイケル・ベックレー・タフツ大学准教授は、急速に軍事技術と装備を開発、配備する中国に対して、アメリカは十分な用意ができていないことを批判する(2―③)。

同様の懸念は、共和党政権の国防政策を立案していた元高官ばかりではなくて、より幅広く共有されるものである。たとえば、シドニー大学米国研究センター長のアシュリー・タウシェンドは、現在のバイデン政権の国防予算が、あくまでも2030年代に中国と競争するための長期的な視野からの研究開発費に多くの予算が割かれている一方で、現在の中国の脅威に対する抑止力の構築へ向けてはあまりにも不十分であることを批判する(2―⑤)。

実際に、アメリカ議会でも共和党側から批判が繰り返されるようになっており、バイデン政権がどの程度真剣に、中国周辺の海域や空域での抑止力強化への予算を割く意思があるのかが問われている。アメリカのシンクタンクの研究員であるクリストファー・ドーティーは、それゆえ、台湾有事の際に最も重要な役割が求められる米海軍は、対中抑止を構築するために十分な予算が割かれておらず、いずれ戦略的破産に向かうだろうと警鐘を鳴らしている(2―⑥)。これからバイデン政権は、そのような批判や懸念に応えていかなければならない。

3.アメリカと同盟国との責任分担

バイデン政権に権威主義体制との体制間競争で勝利するための十分な財源が備わっていないとすれば、その論理的な帰結として、同盟国に対してよりいっそうの防衛努力と責任分担を求めることが想定される。はたして同盟国にその覚悟があるのだろうか。ブルッキングス研究所のトマス・ライトは、体制間競争に勝利できるか否かは、アメリカの同盟国がどの程度共同歩調をとるか、そしてアメリカ国内でそのような外交路線がどの程度幅広い支持を獲得できるかにかかっていると論じる(3―①)。

インド太平洋におけるアメリカの最も重要な同盟国、日本はどうか。日本は、体制間競争において民主主義国家としての価値を擁護して、対中抑止力を構築する上で十分な貢献をすることができるだろうか。トランプ政権で国防副次官補代理を務めたエルブリッジ・コルビー、そしてダートマス大学准教授で日本外交が専門のジェニファー・リンドは、『NIKKEI Asia』において、「日本は平和主義を放棄して、集団防衛を擁護すべきだ」と主張する(3―②)。日本が従来の平和主義の巣の中に引きこもり、中国に対抗するための抑止力構築とこれまで以上の防衛努力へと前進しないのであれば、アメリカ国内では「なぜ自分たちが日本人以上に気を配ってリスクを負わなければならないのか」と疑問を抱く人が増えるだろう。また同時に、中国はよりいっそう冒険主義的で、強硬な行動を選択することになり、地域における安定は崩壊するだろう。それは結局、日本の安全や利益を崩壊させることになるはずだ。

日本だけではない。ベルリンの壁崩壊とドイツ統一から30年ほどが経過して、中国やロシアのような権威主義体制が影響力を拡大する中で、ドイツはこれまでのようにアメリカに安全保障を担ってもらおうと甘え続けることはできない。自由民主主義が世界中に広がるという、ドイツの楽観的な見通しは修正されるべきだと、『フィナンシャル・タイムズ』紙のチーフ・ポリティカル・コメンテーターのフィリップ・スティーブンスは説いている(3―③)。はたして日本やドイツは、そのような危機意識をもってよりいっそう防衛費を増大させることができるだろうか。バイデン・ドクトリンに基づく民主主義体制と専制主義体制との体制間競争の行方は、それによって大きく左右されるであろう。

もちろん、アメリカの同盟国として日本やドイツのみが重要な役割を担うというわけではない。EUや、ASEAN(東南アジア諸国連合)、そしてインドもまた、今後より一層重要な役割を担っていくのであろう。インドとの関係強化に動いたEUは、さらにASEANとの関係も強化することを求めている。コロナ下でも活発な外交活動を行うEUのジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は、タイの『バンコク・ポスト』紙において、EUとASEANが「当然のパートナー」であるとして、よりいっそうの関係強化を提唱する記事を寄稿している(3―④)。

また、これまでインドは冷戦下でも冷戦後の米中対立の構図の中でも、いずれかの側に組み込まれることに警戒感を抱いてきたが、シンガポール国立大学南アジア研究所所長のラジャ・モハンは従来の方針を修正して、G7を通じて西側諸国との関係を強化する必要を説いている(3―⑤)。

4.民主主義諸国によるワクチン外交

民主主義体制が、権威主義体制との競争においてより影響力を拡大し、優位性を確立するためには、防衛費を増加させて軍事バランスを有利にすることのみが求められているわけではない。むしろ、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するために、民主主義諸国が国際社会でどのような貢献をするかということもまた、重要な意義を有している。

『フィナンシャル・タイムズ』紙アソシエイト・エディターのエドワード・ルースは、中国とロシアが、有効性が劣りながらも大量のワクチンを途上国に提供しているなかで、民主主義諸国も少なくともそれと同等な規模で支援をしなければ、いずれ国際社会で影響力を大幅に失うことになるであろうと警鐘を鳴らす(4―①)。著名な国際政治学者であるジョセフ・ナイ・ハーバード大学名誉教授もまた、アメリカが国際社会に大規模にワクチンを提供することは、それ自体がアメリカの国益になると説いている(4―②)。ポピュリストやナショナリストが、アメリカのワクチンを海外に供与することに強い反発を示しているが、ナイは視野の狭い議論を批判する。

G7議長国となったイギリスのボリス・ジョンソン首相は、『NIKKEI Asia』への寄稿で、G7がワクチン10億回分を供給する重要性を述べている。同首相は「パンデミックを克服する」ことを共通の使命に掲げ、中国やロシアのような権威主義諸国ではなく民主主義諸国が「可能な限り速やかに可能な限り多くの安全なワクチンの供給」を行なうことの重要性を強調した(4―③)。実際に、コーンウォールG7サミットの首脳コミュニケには、そのような方針が盛り込まれた。同コミュニケは、民主主義諸国が結束して「可能な限り多くの人々に、可能な限り速やかに可能な限り多くの安全なワクチンを供給することで、世界中で予防接種を行うための強化された国際的な取り組みを即時に開始し、これを推進することで、パンデミックを終息させ、将来に備える」と謳っている。

5.香港で報道の自由が消えた日

イギリスのコーンウォールでのG7サミットが民主主義諸国の強い決意を示す機会となった一方で、地球の裏側の香港では民主主義の希望が潰えて、報道の自由の灯りが消えるような失望が広がっていた。

かつて中国政府は、1984年の英中共同声明にて、1997年の香港の中国返還後に、一国二制度がその後50年間維持されることを約束した。「50年間」ということであれば、本来は「2047年」まで、香港では中国本土とは異なる法制度や政治制度が維持されなければならなかった。しかしながら、昨年6月30日から施行された香港国家安全維持法によって、民主化などの抗議活動や、共産党政権を批判するような報道の自由が大幅に制限されることになった。そしてその一つの帰結として、香港で民主派支持を鮮明に掲げるほぼ唯一の日刊紙であった蘋果日報(アップル・デイリー)が廃刊に追い込まれた。同紙は6月24日、一面に「香港人が雨の中でつらい別れ」という見出しを掲げた最後の紙面を発行した。

今ではデータが削除されてアクセスできなくなっているが、6月22日の『蘋果日報』紙では、香港民主党の元党首で元立法会議員の劉慧卿(Emily Lau)が、最後の寄稿をしている。同氏はそこで、蘋果日報への警察の捜査と幹部の逮捕、国安法施行により人々が萎縮してしまい、すでに報道と表現の自由が狭まっていることを静かに批判している。また、これらの権利を守るために香港人は権利を行使して、これからも威厳を持って生活するべきだと唱えている(5―①)。

6月17日の朝、数百名の警察官が蘋果日報の発行元である壱伝媒(ネクスト・デジタル)の建物へと突入し、5時間にわたる捜索の末、数多くのパソコンや、サーバー、ハードディスクを押収した。また関連会社を含めた1800万香港ドル(約2億6000万円)の資産が凍結された。6月19日には張剣虹(Cheung Kim-hung)CEOと羅偉光(Ryan Law)という2人の編集長の初公判が、西九龍の裁判所で始まった。彼らと黎智英(Jimmy Lai)は、外国に向けて香港と中国本土に制裁をかけ、敵対的な行動をとるよう呼び掛けた罪に問われている。しかしその罪状は、事実に基づかない。張剣虹と羅偉光の保釈の要求は、首席判事により国家の安全に対する脅威だとして却下され、次回の公判は8月13日に開かれる。今回の事件はメディアの幹部が国安法に抵触したとして逮捕された最初のケースであり、他の報道機関は国安法に一掃されないか怯えている。

劉慧卿は、今回の蘋果日報幹部の逮捕がいわば「警報」の役割を果たすだろうと書いている。というのも、警察が押収した資料により、そこに所属するジャーナリストと関わった市民の身元が明かされるかもしれないからだ。この報道の自由に対する攻撃が、人々の背筋を凍らせたことは間違いない。攻撃によってジャーナリストが自己検閲に向かうのみならず、情報源の市民も身元を明かされる恐怖を味わった。今後、ジャーナリストに事実を話すことは、香港人にとってはあまりにも危険なことになってしまった。報道の自由、表現の自由、思想良心の自由の侵害に対する懸念が深まっている。そしてこの記事は、厳格な国安法施行以降、香港は原形をとどめないほど変わってしまったと多くの人々が嘆く現状を伝えている。

このような批判が沸騰した後に、北京の『環球時報』ではそれを否定して、政府の決定を擁護する社説を掲載している。そこでは、『蘋果日報』をトランプのTwitterなどと同列に並べた上で、憲政への抵抗を煽動するようなメディアは国益と安全に反すると主張し、西側による今回の一件への非難を逆に批判している。その上で、「いずれ収まるところに収まるのである。(原文は、青山遮不住,毕竟东流去)」という表現で、眼前の変化があまり大きな意味を持たないことを強調する。また、「報道の自由」とは、「国の利益と公共の安全と一致しているべきである」と論じている(5―②)。これは明らかに、民主主義諸国における一般的な理解とは大きく異なるものであろう。

こうした中国政府の動きは、いまや国際情勢の中での台風の目となっている台湾のメディアや世論で大きな反発を生み出している。香港における『蘋果日報』の発行停止処分の報道を受けて、『自由時報』の6月24日の社説は台湾自らの危機的状況と重ね合わせている(5―③)。すなわち、今まで中国による対台圧力は、西側世界にとっては遠隔地の危機だと認識され、経済貿易上の利益を犠牲にしてでも台湾を支援する選択がされてこなかった。しかし、かつてイギリスの植民地であった香港では、2つの普通選挙(行政長官と立法会)の機会が失われ、また北京から治安維持法の洗礼を受けた。これらは中国の国際的なルールに対する態度を、西側世界が認識するのに十分な機会だったであろう。オーストラリアの国土面積はアラスカを除いたアメリカと大差なく、オーストラリアを過小評価することはできない。台湾の人口はオーストラリアと大差ない。だとすれば台湾を過小評価することはできないはずだーー。

台湾で育まれた民主主義を、台湾の人々は簡単に放棄することはできないであろう。そして、香港で報道の自由が失われる様子を注視する台湾にとって、北京政府との関係はよりいっそう困難なものとなるであろう。その意味でも、『蘋果日報』紙の刊行停止の処分は、巨大な余波を残すことになった。

【主な論文・記事】
1.バイデン・ドクトリンとは何か

Hal Brands, “The Emerging Biden Doctrine: Democracy, Autocracy, and the Defin-ing Clash of Our Time(バイデン・ドクトリンの登場:民主主義と権威主義、そして現代の決定的な衝突)”, Foreign Affairs, June 29, 2021, https://www.foreignaffairs.com/articles/united-states/2021-06-29/emerging-biden-doctrine
Javier Solana, “America’s Comeback Tour (アメリカのカムバック・ツアー) ”, Project Syndicate, June 21, 2021, https://www.project-syndicate.org/commentary/biden-europe-tour-g7-nato-russia-by-javier-solana-2021-06
Editorial, “G7, sommet de l’OTAN, réunion avec l’UE… le retour de la diplomatie américaine (G7、NATOサミット、EUとの会合… アメリカ外交の復権)”, Le Monde, June 16, 2021, https://www.lemonde.fr/idees/article/2021/06/16/g7-sommet-de-l-otan-reunion-avec-l-ue-le-retour-de-la-diplomatie-americaine_6084361_3232.html
Jennifer Rubin, “America is back. And it’s popular. (米国は戻ってきた。そしてこれは人気だ)”, June 13, 2021, The Washington Post, https://www.washingtonpost.com/opinions/2021/06/13/america-is-back-popular/
Daniel Baer, “In Historic Shift, Biden Aligns Allies on China (歴史的転換。中国に対して同盟国と提携を結ぶバイデン氏)”, Foreign Policy, June 22, 2021, https://foreignpolicy.com/2021/06/22/biden-europe-summit-nato-g-7-eu-allies-alliances-trans-atlantic-china/
Michael J Green, “An alliance of democracies is essential (民主主義国の同盟は不可欠のものである)”, The Interpreter, June 16, 2021, https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/alliance-democracies-essential
「G7公报造势,中国人不吃这一套 (G7共同声明は話題を煽るが、中国人はその手は喰わない)」『环球网』、2021年6月14日、 https://opinion.huanqiu.com/article/43WkqZDgxvF
「搞“小圈子”和“集团政治”是逆流而动 (小さな輪を作り、集団政治を行うことは流れに逆らっている)」『人民网』、2021年6月17日、 http://world.people.com.cn/n1/2021/0617/c1002-32132250.html
王缉思 (Wang Jisi)「莫让反华阴谋成“新华盛顿共识“ (反中国の陰謀を新ワシントン・コンセンサスにしてはならない)」『环球网』、2021年6月23日、 https://opinion.huanqiu.com/article/43eCZZwy5Lt
朱锋 (Zhu Feng)「美国对华政策是如何倒退的 (アメリカの対中政策はどのように後退したのか)」『环球网』、2021年6月22日、 https://opinion.huanqiu.com/article/43dN69RC8Dz

2.中国と体制間競争をする財源はあるか

J. Michael Cole, “The G7 Places Taiwan in its Proper Context- within the Demo-cratic Camp (G7は台湾を民主主義陣営の中で適切な文脈に位置づけた)”, The Mac-donald-Laurier Institute, June 16, 2021 https://www.macdonaldlaurier.ca/g7-places-taiwan/
Rafael Behr, “Joe Biden’s mission at the G7 summit: to recruit allies for the next cold war (ジョー・バイデンのG7サミットでのミッションは、次の冷戦に備えて同盟国を募ることだ)”, The Guardian, June 8, 2021, https://www.theguardian.com/commentisfree/2021/jun/08/joe-biden-allies-g7-cold-war-summit-china-washington
Michael Beckley, “America Is Not Ready for a War With China: How to Get the Pen-tagon to Focus on the Real Threats (アメリカは中国と戦争する準備ができていない:国防省に真の脅威に目を向けさせる方法)”, Foreign Affairs, June 10, 2021, https://www.foreignaffairs.com/articles/united-states/2021-06-10/america-not-ready-war-china
Rachel Myrick, “America Is Back—but for How Long?: Political Polarization and the End of U.S. Credibility (アメリカは戻ってきたが、いつまで続くのか?:政治的分極化とアメリカの信憑性の終焉)”, Foreign Affairs, June 14, 2021, https://www.foreignaffairs.com/articles/world/2021-06-14/america-back-how-long
Ashley Townshend, “Biden’s Defense Budget Will Worry America’s Indo-Pacific Allies (バイデンの国防予算はインド太平洋地域の同盟国を不安にさせる)”, Defense One, June 22, 2021, https://www.defenseone.com/ideas/2021/06/bidens-defense-budget-will-worry-americas-indo-pacific-allies/174870/
Christopher Dougherty, “Gradually and then Suddenly: Explaining the Navy’s Strategic Bankruptcy (徐々に、そして突然に:米海軍の戦略的破産を説明する)”, War on the Rocks, June 30, 2021, https://warontherocks.com/2021/06/gradually-and-then-suddenly-explaining-the-navys-strategic-bankruptcy/
Bernie Sanders, “Washington’s Dangerous New Consensus on China: Don’t Start Another Cold War (危険な対中ワシントン・コンセンサス:新たな冷戦を始めるな)”, Foreign Affairs, June 17, 2021, https://www.foreignaffairs.com/articles/china/2021-06-17/washingtons-dangerous-new-consensus-china
Mike Pompeo, Lewis Libby, “China’s covid wrongdoing warrants punishment by a Biden- led coalition (新型コロナウイルスをめぐる中国の犯罪行為は、バイデン主導の連合による制裁を必要とする)”, The Washington Post, June 7, 2021, https://www.washingtonpost.com/opinions/2021/06/07/pompeo-libby-china-covid-biden/
Fareed Zakaria, “Under Biden, American diplomacy is back. But America isn’t (バイデン氏のもとで米国外交は戻ってきたが、「米国」は戻っていない)”, The Washing-ton Post, June 18, 2021, https://www.washingtonpost.com/opinions/2021/06/17/biden-american-diplomacy-vs-american-reality/

3.アメリカと同盟国との責任分担

Thomas Wright, “Joe Biden Worries That China Might Wi (中国の勝利を恐れるジョー・バイデン)”, The Atlantic, June 9, 2021, https://www.theatlantic.com/international/archive/2021/06/joe-biden-foreign-policy/619130/
Elbridge Colby, Jennifer Lind, “Japan must disavow pacifism and embrace collective defense (日本は平和主義を放棄し、集団防衛を擁護すべきだ ”, NIKKEI Asia, June 18, 2021, https://asia.nikkei.com/Opinion/Japan-must-disavow-pacifism-and-embrace-collective-defense
Philip Stephens, “After Merkel, Germany must admit the return of history (メルケル以後、ドイツは「歴史の終わり」がもはや通用しないということを認めなければならない)”, Financial Times, June 24, 2021, https://www.ft.com/content/2f53ebd5-92ea-41bc-b758-d1fb1fb0b08a
Josep Borrell, “EU, ASEAN are ‘Natural Partners’ (EU、ASEANは「当然のパートナー」)”, Bangkok Post, June 17, 2021, https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2133671/eu-asean-are-natural-partners
C. Raja Mohan, “For India, G-7 is an opportunity to expand ties with West (インドにとって、G7は西側との結びつきを拡張する機会である)”, The Indian Express, June 18, 2021, https://indianexpress.com/article/opinion/columns/g-7-virtual-meet-united-kingdom-india-and-the-west-relations-7348541/

4.民主主義諸国によるワクチン外交

Edward Luce,“West risks retreating into Covid limbo (西側はCovid-19の虚無に陥る危険性がある)”, Financial Times, June 24, 2021, https://www.ft.com/content/2421d3f4-4a9f-4ec4-a4df-d89738c5e00a
Joseph S. Nye Jr, “Vaccinating the world against Covid-19 is in America’s national interest (コロナに対するワクチンを世界に接種することはアメリカの国益にかなう)”, The Strategist, June 3, 2021, https://www.aspistrategist.org.au/vaccinating-the-world-against-covid-19-is-in-americas-national-interest/
Boris Jonson, “G-7 nations should donate 1bn vaccine doses to developing coun-tries (G7はワクチン10億回分を途上国に寄付すべきだ)”, NIKKEI Asia, June 11, 2021, https://asia.nikkei.com/Opinion/G-7-nations-should-donate-1bn-vaccine-doses-to-developing-countries

5.香港で報道の自由が消えた日き

Emily Lau, “In spite of traumatic developments, Hong Kong people must continue to live in a dignified way (トラウマのような出来事が起こっても、香港人は威厳を持って生きるべきだ)”, Apple Daily, June 22, 2021, (Accessed in June 22nd).
「倒闭的是苹果日报,不是香港新闻自由 (倒されたのは蘋果日報であり、香港の報道の自由ではない)」『环球网』、2021年6月24日、 https://opinion.huanqiu.com/article/43fXqLY5oD6
「社論 香港戒嚴狀態 (社説 戒厳状態の香港)」、『自由時報』、2021年6月24日、 https://talk.ltn.com.tw/article/paper/1456521

最新の論考や研究活動について配信しています