福島原発事故に見る日米同盟連携の教訓

プロジェクト概要

2011年3月に発生した東日本大震災と福島原発事故において、日米両国は、戦後初めてともいえる大規模な共同連携を行いました。

当時、未曾有の大震災に対処するため、菅直人首相は約10万名の自衛官を動員し、米国のオバマ大統領は、最大時に約1万6千人、艦艇約15隻、航空機140機を派遣しました。これは有事に匹敵する規模です。

福島原発事故は、対応を誤れば国体に関わる深刻な災害であり、その対応は日米間の共同連携という視点でかつてないほど大きな教訓と示唆を与えました。日米両政府が、危機対応のさなかに、如何にして連携を深めていったかを検証することは、今後の日米同盟に基づく共同連携を一層強化することにつながるでしょう。

執筆者であり、当財団のシニアフェローである磯部 晃一は、東日本大震災の際に防衛省統合幕僚監部の防衛計画部長の職にあり、在日米軍と連携しながら、災害救助・復旧と福島原発事故への対処に奔走しました。

本プロジェクトでは、その経験に加え、日米両政府の関係者らへのインタビュー等に基づき、日米両国がいかに共同連携して危機に立ち向かったかを、詳細に明らかにしています。その上で、この「トモダチ作戦」遂行の過程で浮かび上がった教訓と課題から、我が国のあるべき安全保障・危機管理体制と同盟メカニズムの姿を提言しています。

*2019年11月、本書が第5回日本防衛学会猪木正道賞特別賞を受賞しました。

出版物

『トモダチ作戦の最前線 ── 福島原発事故に見る日米同盟連携の教訓』

著者:磯部晃一
出版社:彩流社
定価:2,800円(+税)
初版:2019年8月16日
ISBN: 978-4-7791-2603-1 C0031

彩流社

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はじめに
第一章 福島第一原子力発電所事故と自衛隊の対応
第二章 日米両政府の共同連携
第三章 自衛隊と米軍の共同連携
第四章 震災以降の取り組み
第五章 教訓と今後の提言
補 章 2011年、岐路に立っていた日本
おわりに

プロジェクトメンバー

磯部 晃一(いそべ こういち)

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ シニアフェロー

2015年8月、陸上自衛隊東部方面総監(陸将)を最後に退官。現在、川崎重工業(株)ストラテジック・アドバイザー。1980年3月、防衛大学校(国際関係論専攻)卒業。ヘリ・パイロット。1989年8月、外務省北米局安全保障課出向、湾岸危機時に対米支援に従事。中央即応集団副司令官等を経て、東日本大震災時には統幕防衛計画部長としてトモダチ作戦日米調整に従事。その後、第7師団長、統合幕僚副長を歴任。1996年米海兵隊大学で軍事学修士を、2003年米国防大学で国家資源戦略修士を取得。2017年7月から2019年6月までハーバード大学アジアセンター上席研究員。