地経学研究所(経済安全保障)
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特集:中国の経済安全保障を考える(2023年2-3月)
習近平政権による動態ゼロ・コロナ政策の維持と急速なその撤廃、あるいは台湾周辺での大規模軍事演習の断続的な継続は、日本社会の対中認識に大きな変化をもたらした。日中関係では従来、様々な政治的摩擦が発生しながらも、政経分離の共通認識と「グローバル化」の下で効率追求型の経済活動が継続し、サプライチェーンの一体化が進む構造にあった。しかし中国リスクへの懸念が高まった結果、経済的相互依存そのものが急速に変質しようとしている。
こうした中で十分な検討が進んでいないのが、中国による経済安全保障政策の検討である。日本では経済安全保障とは重要な物資・中間財における特定の国に対する――特に中国に対する――過度な依存を是正し、サプライチェーンの強靭化を図ることだとの防衛的な認識が共有されるようになった。これに対し米国の経済安全保障については、先行する特集プロジェクトにより、日本とは異なる認識を有することが示された。これに対応して中国においても、日本型の経済安全保障論とは異なり、米国による対中切り離しの議論の一端として理解されている。こうした日中間の認識ギャップを踏まえて本特集では、1)日本と中国の経済安全保障の議論にはどのような相違がみられるのか、2)「経済安全保障」という言葉を用いない中国で、実際にはどのような法的・制度的施策が実施されているのか、3)中国をとりまく経済安全保障の現状をどのように評価するか、を論じていく。
こうした中で十分な検討が進んでいないのが、中国による経済安全保障政策の検討である。日本では経済安全保障とは重要な物資・中間財における特定の国に対する――特に中国に対する――過度な依存を是正し、サプライチェーンの強靭化を図ることだとの防衛的な認識が共有されるようになった。これに対し米国の経済安全保障については、先行する特集プロジェクトにより、日本とは異なる認識を有することが示された。これに対応して中国においても、日本型の経済安全保障論とは異なり、米国による対中切り離しの議論の一端として理解されている。こうした日中間の認識ギャップを踏まえて本特集では、1)日本と中国の経済安全保障の議論にはどのような相違がみられるのか、2)「経済安全保障」という言葉を用いない中国で、実際にはどのような法的・制度的施策が実施されているのか、3)中国をとりまく経済安全保障の現状をどのように評価するか、を論じていく。
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2023年3月6日
中国・習政権が袋小路に入りつつあるという懸念
柯隆
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2023年2月27日
米国の対中半導体輸出規制強化がもたらした衝撃
徳地 立人
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2023年2月20日
中国の「自国産業保護」、日本が向き合う5大課題
町田 穂高
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2023年2月13日
中国の「経済安全保障」何をどう備えているのか
江藤 名保子
特集:アメリカの経済安全保障(2023年1-2月)
ロシアのウクライナ侵攻は、当初、2014年のような「ハイブリッド戦」になるものと考えられていた。2014年のクリミア半島の占拠においては、極めて巧妙に武力行使を最低限にしつつ、電力、通信、放送などを支配し、情報戦、心理戦、そして住民投票のような形で法律戦を展開して占領の事実を積み上げていったが、今回のウクライナ侵攻においては、そうした巧妙さは見られず、火力の優勢をテコにした力ずくの侵攻を行っているという印象が強い。他方、ウクライナはゼレンスキー大統領の各国議会での訴えや、メディアを使った国際世論への訴え、さらには西側諸国からの兵器の支援やインテリジェンスの支援により、火力で劣勢ながらもロシア軍と拮抗した戦いを展開している。そこには、衛星からの画像情報やドローンの活用、さらには民間企業であるSpaceXのStarlinkによる通信の確保などもあり、ロシア軍よりも巧妙に新しい技術を駆使して戦っているという印象がある。こうした中で、今回の地経学ブリーフィングの企画として、ロシアのウクライナ侵攻から見られる軍事活動において、新しい技術がどのように使われたのか、「ハイブリッド戦」は戦場における決定的な役割を果たさないのか、戦争は火力の差で決定するものなのか、といったテーマに関して、それぞれの立場から論じる。
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2023年2月6日
経済安全保障100社アンケート:企業対応の現在地と課題
鈴木 均
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2023年1月30日
アメリカと中国「医薬品・バイオ」巡る攻防の本質
相良 祥之
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2023年1月23日
米中の半導体戦争が過去の日米競争と次元違う訳
ポール ネドー
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2023年1月16日
アメリカの経済安全保障政策に見える2つの課題
山田 哲司
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2023年1月9日
アメリカと中国「半導体めぐる強烈な対立」の重み
鈴木 一人
特集:ロシアのウクライナ侵攻に見られる「新しい戦争」(2022年8-9月)
10月7日の対中半導体輸出規制の強化に見られる、アメリカの経済安全保障政策は、日本における経済安全保障の概念と同じ方向を向いているようで、異なるところも多い。日本でも半導体は国家戦略としてTSMCの工場誘致や産業総合研究所との連携による研究開発、さらには新たな半導体企業としてRapidusを立ち上げるなど、様々な施策が矢継ぎ早に実施されているが、アメリカの半導体戦略はそれとは異なるものである。同じく、インフレ抑制法(IRA)における電気自動車の推進や蓄電池の戦略に関しても、中国に投資している企業に対して補助金を与えないといった措置をとっており、対中強硬策という性格が強く出ている。このようなアメリカにおける経済安全保障の概念をきちんと理解することは、経済版2+2やCoRe Partnership、IPEFなどを通じてアメリカとの連携を深めるためには不可欠である。本企画では、そうしたアメリカの経済安全保障の概念を明らかにし、将来の日米連携を進める上で留意しておかなければならないことをハイライトすることで、より適切な経済安全保障戦略を構築するために資する議論を展開したい。
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2022年9月19日
ロシアへの経済制裁は一体どの程度効いているか
鈴木 一人
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2022年9月12日
ウクライナ戦争が古典的な戦いになった3つの訳
小泉 悠
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2022年9月5日
ロシア・ウクライナ戦争が世界に刻みつけた教訓
佐藤 丙午
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2022年8月29日
「戦場と民間の接近」ウクライナ侵攻が示した側面
齊藤 孝祐
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研究者(肩書は執筆当時のもの)