アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)は、2025年1月24日、ダートマス大学教授であり国際政治経済分野の第一人者であるスティーブン・G・ブルックス氏を迎え、「Command of Commerce: America’s Enduring Economic Power Advantage Over China」をテーマに非公開のラウンドテーブルを開催しました。
本会合では、米国が依然として有する経済的優位性と、それをいかに地政学的リスクへの対応に活用できるかを中心に議論が行われました。特に、ブルックス教授の共著書『Command of Commerce』(Oxford University Press刊・2025年)を基盤に、米中間の経済的非対称性、デカップリング政策の効果、同盟国との経済連携の在り方などが取り上げられました。
米国による経済安全保障のシミュレーション研究の意義が紹介され、軍事領域と異なり未発達であった経済領域での新たな分析手法として注目されました。議論は、米中経済の非対称性をはじめ、戦時の影響試算、デカップリングの戦略的課題、そして日本・韓国・台湾の供給網上の重要性に及びました。
特に、同盟国との連携による抑止力の強化や、有事における経済的レバレッジの活用可能性について多くの示唆が得られました。質疑応答では、日本への影響見積りや「経済同盟」の必要性、WTO体制の限界、レアアース問題への対応など、現実的かつ戦略的な視点からの議論が展開されました。
本ラウンドテーブルは、国際秩序の再編が進む中で、経済力を戦略資源とする視点から日本と同盟国がとるべき政策対応を再考する機会となりました。

